7日(日本時間8日)、ニューヨークのバークレイズセンターでIBF世界スーパーバンタム級の暫定王座を獲得した岩佐亮佑(セレス)が9日、成田空港で帰国会見。左ストレートの一撃で11回、鮮やかに倒したマーロン・タパレス(フィリピン)戦を振り返り、次の照準をIBF正規王者ダニエル・ローマン(アメリカ)に絞ったことを明らかにした。
写真上=2本目となるIBFのチャンピオンベルトを土産に帰ってきた
小林昭司会長とともに、晴れやかな笑顔で到着ロビーに現れた岩佐。メディア用に設けられた空港内の別室に移動し、記者団に喜びを語った。
「凄いステージで結果を残せた。ラストチャンスの覚悟で臨み、崖っぷちで勝てて、心の底から嬉しかった」
試合は作戦どおりだったことを強調した。
「相手はパンチもあり、初回は警戒していこうと。堅かったが、終始落ち着いてやれたし、会長の声も聞こえた。ポイントも冷静に考えながら進め、最後は倒して勝つことができた。いい内容だったと思う」
タパレスについては「パンチは思ったほどではなかったが、上体が柔らかくて当てにくく、クリーンヒットの感触がなかなかつかめなかった」。ここで岩佐の脳裏に浮かんだのは、過去に喫した世界戦の2度の敗戦だったという。
「行き過ぎて失敗したのが(リー)ハスキンス戦、行けなくて失敗したのが(TJ)ドヘニー戦。タパレス戦は、その中間の試合ができた」
タパレスがカウンターを狙っているのは分かっていたので「怖くていけなかった」部分もありつつ、「この距離なら間違いない」と自分の距離をキープ。ラウンドを重ねるにつれ「相手が疲れてきたのが分かったのに対し、自分の体力は余っていた」。攻めても大丈夫と判断した終盤戦からは、小林会長のゴーサインも受け、プレスを強めていく。そして飛び出した、11回の左ストレート。
「狙ったパンチではなく、流れの中で打った」というこの左は、タパレス戦で唯一、感触があったパンチだったと明かす。
「ガッツリ当たった。久しぶりに一発で綺麗に倒せた」
ただ「KOに関しては運みたいなものもある。KOだから凄いとは思わない」と岩佐。それ以上に嬉しかったのは、小林会長も「羨ましかった」というほどの大舞台で「堂々と戦い、勝てたことは、ボクシング人生で一番の自信になった」と胸を張った。
「最初にロサンゼルスで勝ったのがまぐれじゃなかったこと、サウスポーが苦手じゃないこと、いろんなことを証明できた。それもニューヨークで」
トレーニングで足腰を鍛えた成果を初めて試合で出せたことも自信になり、「一皮むけた感じ」という。
鮮烈なKOシーンがアメリカのファンにも強い印象を与えたことは間違いなく、世界へ向けて、岩佐の視界は大きく拡がった。今後を問われると「ダニエル・ローマン一本。統一戦しか見えていない」と即答した。
「僕がもう1回チャンピオンを目指したときに、チャンピオンだったのがローマン。僕の階級のチャンピオンだから。理由はただそれだけ。暫定は、とりあえずのチャンピオンという感覚もある」
1月に行われるローマンの防衛戦も、フロリダまで観戦に行く予定という。30歳の誕生日(12月26日)を前に、プロ30戦目で果たした王座返り咲き。「自分でも計り知れないくらい、強くなりたい」と自信を込めて言う岩佐のこれからに注目していきたい。
取材◉藤木邦昭
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