12日、東京・後楽園ホールで行われたセミファイナル、スーパーライト級10回戦は、日本同級7位の平岡アンディ(22歳=大橋)が、IBF世界同級12位の近藤明広(34歳=一力)を積極的なアウトボクシングで攻略。97対93、98対93、98対92の3-0判定勝利を収めた。
上写真=近藤に左ストレートを突き刺す平岡
両肩を抱えられなければ歩けない。バッティングによってカットした左目上下の傷も痛々しい。
「それほどダメージが深刻だったのか……」と、医務室へ向かう平岡を見送ったが、実はそうではなかった。
「10日くらい前に、ランニング中に右足がつってしまって」。肉離れ……。治療を受けて、なんとか歩けるまでに回復したが、「初回にジャブを踏み込んで打ったときに、またグキッとやってしまって」。
だが、決して顔には出さない。そんな状態だとは、傍からはまったくわからない。
「たとえ足が1本になっても、試合はやらなきゃいけない」。父・ジャスティス・コジョ・トレーナーは、心を鬼にして突き放した。息子も、痛めたのは自らの責任とばかりに、右ジャブをインサイドへ突き、サイドステップを繰り返しながら左ストレート、アッパーカットで、“格上”近藤を常に先手で攻めた。
平岡の左ストレートをかわし、右を合わせたい近藤だったが、どうしてもリターンが遅れてしまう。だから、勝負への執念から相打ちも辞さずの構えとなり、時折平岡をたじろがせてもみせた。6ラウンドは近藤にとってのベストラウンド。右カウンターで平岡の腰を一瞬落とさせたが、ひと回り下の若者は、決して怯まなかった。
続く7ラウンドが、平岡のたくましさをさらに感じさせるものだった。左から右フックをカウンター。左アッパーをショート、ロングと決めて、近藤にダメージを与えた。
2月のIBF挑戦者決定戦で、アピヌン・コーンソーン(タイ)の右アッパー一撃でキャンバスに沈んだ近藤は、この日も同じアッパーに悩まされた。恐怖心が芽生えてもおかしくなかった。けれど、そこはベテランの意地。そして、ときを同じくして大阪でリベンジマッチに挑んでいる、大学時代の同級生で仲の良い村田諒太(帝拳)への想い──。
最後の最後まで、近藤の気持ちも萎えなかった。右を狙い続け、攻め続けた。しかし、平岡の闘争心もまったく消えず、右フック、アッパーで近藤に鼻血を流させた。
「左アッパーの攻撃が途切れたところで反撃をしようと思ったが、切れなかった。(平岡の)パンチは強かった。想定内の動きだったけれど、崩せなかった」。痛すぎる連敗を喫した近藤は語った。
傷跡を処置した顔、右足首のテーピングが痛々しい平岡だが、手にしたものは大きい
写真_本間 暁
踏ん張りが利かず、放つブローも威力が半減だったはずの平岡だが、この試合を乗り越えて、またひとつ大きな自信を得たはずだ。同じ階級で同門の日本同級チャンピオン井上浩樹との“マッチレース”も楽しみだ。
平岡は14戦14勝(9KO)。近藤は41戦31勝(19KO)9敗1分。
文_本間 暁
写真_菊田義久
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