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2019-07-12

【海外ボクシング】ウィークエンド・プレビュー 亀田和毅が正規王座へ、LA近郊で統一戦

村田諒大(帝拳)、拳四朗(BMB)が金曜日、大阪でダブル世界戦を行うが、海外で世界戦が開催されるのはアメリカ・カリフォルニア州カーソンただひとつ。そのカードに登場するのも日本手。WBC世界スーパーバンタム級暫定チャンピオンの亀田和毅(協栄)が正規チャンピオンに挑むのだ。その標的、レイ・バルガス(メキシコ)はブランク明け2戦目。最近の評価はやや下り坂だが、亀田にとって厳しい対戦相手であることに違いはない。

写真上=亀田和毅
写真=BOXING MAGAZINE

7月13日/ディグニティヘルス・スポーツパーク(アメリカ・カリフォルニア州カーソン)

◆亀田は大胆に戦ってバルガスのペースを崩したい

★WBC世界スーパーバンタム級王座統一戦
レイ・バルガス(メキシコ)対亀田和毅(協栄)

バルガス:28歳/33戦33勝(22KO)
亀田:28歳/38戦36勝(20KO)2敗
※日本時間14日午前10時よりDAZNでストリーミング中継

レイ・バルガス
写真=Getty Images

 身長はバルガスが172センチ、亀田が171センチとほぼ同じ。足を使ってしっかりと距離を作り、機を見てのステップインから上下にパンチを散らす。戦いの手法もほぼ同じだ。とくにバルガスはバックステップを軸にして、決して無理をしない。亀田もステップなら負けていないが、遠い間合いでの探り合いから、きわどいポイント計算を積み上げる展開になったら、厳しい12ラウンドになってしまうだろう。

 亀田としては、より大胆に戦いたい。バルガスはメキシカンらしく、ときに迫力あるボディブローも打ってくるが、実際にはそれほどパワーがあるほうではない。ペースをかき乱せば、思わぬ形で崩れる可能性は十分にある。

◆デラ・ホーヤのいとこが暫定世界王座狙う

ディエゴ・デラ・ホーヤ
写真=Getty Images

 この試合をプロモートするゴールデンボーイ・プロモーションズのトップ、オスカー・デラ・ホーヤのいとこにあたるディエゴ・デラ・ホーヤ(メキシコ/24歳/21勝10KO1NC)が、WBA世界フェザー級暫定王座決定戦12回戦に出場する。相手はロニー・リオス(アメリカ/29歳/30勝14KO3敗)。

 ディエゴにはオスカーの華やかさはないが、頭脳的な戦法が光る。よく動き、素早く飛び込んで連打をまとめていく。スタミナもあり、勝負どころでのがんばりはファンを惹きつけもする。リオスもかつては期待される存在だったが、世界のトップに比べるとややスケール感が足らないか。

 フェザー級10回戦では不敗のジョエット・ゴンサレス(アメリカ/25歳/22戦22勝13KO)がマヌエル・アビラ(アメリカ/27歳/23勝8KO1敗1分)。ここ8戦で7つのKO・TKO勝ちをマークしているゴンサレスだが、それでも課題は決め手。中堅レベルの相手をきれいに倒せば、もっとランクが上の戦いも見えてくる。

まだまだあるぞ!注目カード

◆イギリス期待のヘビー級がダブルメイン

 13日、イギリス・ロンドンのO2アリーナからイギリス・BTスポルト、ESPN+でストリーミング中継されるカードには、イギリスのヘビー級ホープふたりがそろい踏み。リオ五輪スーパーヘビー級銀メダリストのジョー・ジョイス(33歳/9戦9勝9KO)とダニエル・デュボア(21歳/11戦11勝10KO)だ。ともに現段階では最大級のテストマッチに臨むことになる。

ジョー・ジョイス(左)とブライアント・ジェニングス
写真=Getty Images

 ジョイスはブライアント・ジェニングス(アメリカ/34歳/24勝14KO3敗)との10回戦。ジェニングスは2015年にはウラジミール・クリチコ(ウクライナ)に挑んだこともある強豪だ。今年1月にオスカル・リバス(コロンビア)に最終回TKO負けで大きく後退したが、まだまだ危険な存在。ラウンドが進めば一本調子になってしまう傾向もあるジョイスにとしては、かなり厳しい戦いなると予想する。逆にどこまでもゴツゴツと打ち込むパンチの威力が証明されれば、早い段階で世界のトップで戦う機運も盛り上がる。

ダニエル・デュボア
写真=Getty Images

 多くのファンや関係者がポスト・アンソニー・ジョシュアの筆頭と評価するデュボアは不敗の若手、ネイサン・ゴーマン(イギリス/23歳/16戦16勝11KO)と。ともにフランク・ウォーレン傘下の選手で、昨年末、ジョシュアがインフルエンザに罹って急きょ、出場を取りやめたときには、ゴーマンが代役を買って出た。そのふたりが半年後には直接対決。厳しい世界である。勝負としては196センチ、110キロの体から歯切れのいい攻めを見せるデュボアの圧倒的な優位は動かない。

 ウォーレンが仕切るこの夜のO2アリーナには、ミドル級の実力者リアム・ウィリアムス(イギリス/27歳/20勝15KO2敗1分)もラインアップされる。カリム・アシュール(フランス/32歳/27勝4KO5敗3分)とWBCインター王座をかけて12回戦を行う。21連勝を続けていたマーク・ヘフロンを一方的なTKOで破るなど、充実度を増しているウィリアムスだけに、中盤以降に勝負がもつれることはあるまい。

 不敗のアーチー・シャープ(イギリス/24歳/15戦15勝8KO=スーパーフェザー級)とサニー・エドワーズ(イギリス/23歳/11戦11勝4KO=スーパーフライ級)は国際タイトルで腕試し。175センチの長身から切れ味鋭いパンチを打ち込むシャープは、WBOヨーロッパ王座をジョーダン・マッコリー(イギリス/28歳/18勝4KO5敗1分)と、切れ目のないコンビネーション・アタックが魅力のエドワーズは、IBFインターナショナル・タイトルマッチでイラム・ガヤルド(メキシコ/12勝4KO2敗2分)とそれぞれ戦う。

ハムザー・シーラス
写真=Getty Images

 さらにアンダーカードにもホープがずらりと居並ぶ。とりわけ8回戦に出てくるハムザー・シーラス(イギリス/20歳/8戦8勝4KO)は注目したい。身長185センチのスーパーウェルター級で、長い左ジャブ、タイムリーな右ストレートが自慢の選手だ。パキスタンにルーツを持つボクシング一家の出身で、アイドルは当然、アミル・カーン。8歳でボクシングを始め、10歳からアマチュアで実戦を重ねた。3度のナショナル選手権で決勝に進出するなど少年ボクシングのエース格だったが、18歳の誕生日にウォーレンと契約し、プロランクに参入した。攻防に歯切れの良さを増し、線の細さが解消されれば、上位に進出してくるかもしれない。

◆カーンがサウジアラビアのリングに立つ

アミル・カーン
写真=Getty Images

 人気と知名度なら今でもトップクラスのアミル・カーン(イギリス/32歳/33勝20KO5敗)は12日、サウジアラビアのジッダのリングに立つ。敬虔なイスラム教徒であるカーンはイスラム圏で試合をすることを熱望していたとされ、夢をかなえた形だ。

 ただ、テレンス・クロフォード(アメリカ)に最後はローブローによるダメージでの棄権だったが、いいところなくストップ負けしたのは4月のこと。こんな短期間で戻ってきても大丈夫なものなのか。

 対戦者もいささか疑問。ビリー・ディブ(オーストラリア/33歳/45勝26KO5敗2NC)は昨年、一度引退する前までは3階級も下のスーパーフェザー級の選手だった。ディブもレバノン出身のイスラム教徒だけに、ジッダの戦いは望むところなのかもしれないが、ちょっと無理のあるマッチメイクにも思ええてしまう。両者の思い出づくりだとしたら少し寂しい。

 WBCシルバーのフェザー級王座決定戦はデーブ・ペニャロサ(フィリピン/28歳/15戦15勝11KO)とレラト・ドラミニ(南アフリカ/12勝6KO1敗)の対戦。フィリピンでは有名なボクシング・ファミリー出身のデーブはとびとびの試合間隔だったが、ここにきて活動のピッチを上げている。ドラミニはデビュー戦で敗れた後、12連勝と好調だ。

 マイナー団体の中では広い活動域を誇るIBOのバンタム級王座決定戦は、プリンス・パテル(イギリス/19勝14KO1分)とミチェル・バンケス(ベネズエラ/29歳/18勝13KO1敗)とで。ともに戦績はともかく、これまで正しく力を評価できる相手との対戦はない。

◆フランスの救世主がやっと帰ってくる

トニー・ヨカ
写真=Getty Images

 長らくスランプの続いたフランス・ボクシング界は、リオ五輪スーパーヘビー級金メダリスト、トニー・ヨカ(27歳/5戦5勝4KO)のプロ転向とともに、ブーム復活の予感にあふれた。リチャード・シェーファー率いるアメリカのリングスターがフランスのビジネスチームとタイアップして、華々しくスタートを切ったもの。ところが、ヨカに薬物使用疑惑。検査に応じなかったため、1年間のサスペンドとなった。その間、主役のいないリングスター・フランスは灯が消えたようだった。

 そして、ようやくヨカが帰ってくる。プロモーターはコートダジュールの古都アンディバを復活の地に選び、カムバック船を組んだ。その相手はアレクサンデル・ディミトレンコ(ドイツ/37歳/41勝26KO5敗)。身長はヨカと同じ201センチの巨漢だ。空白明けとしてはきつい相手選びとはいえ、主役はそれなりの仕事をしなくてはいけないから仕方ない。それにディミトレンコは連敗中だ。ヨカにプロらしい迫力がまだ見えていないが、ここはしっかりと倒したい。

エリー・コンキ(左)
写真=Getty Images

 前座はアマチュア出身の顔ぶれが並ぶ。リオ五輪銅メダルのスーパーウェルター級で、6月にアメリカ・デビューを果たしたばかりのスレイマン・シッソコ(28歳/9戦9勝6KO)、国際大会で長く活躍したスーパーミドル級のミシェル・タヴァレス(30歳/5戦5勝3KO)、また、プロ5戦でフランス・バンタム級チャンピオンになったエリー・コンキ(27歳/6戦6勝1KO)は、このタイトルの2度目の防衛戦を行う。

◆スティーブンソンが初めて地元でファイト

シャクール・スティーブンソン
写真=Getty Images

 フェザー級世界ランキングを急上昇中のシャクール・スティーブンソン(アメリカ/22歳/11戦11勝6KO)は13日、生まれ育ったアメリカ・ニュージャージー州ニューアークのプルデンシャル・センターで、プロになって初めての地元ファイトに臨む。相手はアルベルト・ゲバラ(メキシコ/28歳/27勝12KO4敗)。世界に2度挑み、来日経験もあるベテラン技巧派だ。

 スティーブンソンは当初、強打のフランシスコ・マンサニジャ(ベネズエラ)と対戦する予定だったが、マンサニージャが出場不能になって、前座試合に組まれていたゲバラに白羽の矢が立った。

 前戦では勝利ばかりに走る戦法をとり、ややアピール不足だったスティーブンソンだが、プロらしい逞しさの片りんを地元ファンにも披露してほしいものだ。

◆元WBO王者フラナガンが再起戦

テリー・フラナガン
写真=Getty Images

 WBO世界ライト級チャンピオンとして5度も防衛したテリー・フラナガン(イギリス/30歳/33勝13KO2敗)が9ヵ月ぶりにカムバック戦を行う。12日、イギリス・リバプールの8回戦でジョナス・セグ(タンザニア/28歳/19勝6KO8敗2分)と戦う。

 サウスポーの実務派として安定した力を発揮していたフラナガンだが、スーパーライト級に転向して以来、モーリス・フッカー、レジス・プログレイス(ともにアメリカ)と連敗。今度は再びライト級にウェイトを下げての戦いになる。

 ミドル級、スーパーミドル級でずっと世界ランクを守ってきたマーティン・マレー(イギリス/36歳/37勝17KO5敗1分)も昨年12月にアッサン・エンダム(フランス)に敗れて以来の試合を行う。10回戦でキム・ポールセン(デンマーク/32歳/28勝7KO5敗)と。常に全力投球の戦いを見せ、人柄もいいマレーは人気者だ。このところポールセンは負けが先行しており、2年ぶりのKO勝ちも狙いたいところだ。

 唯一のタイトルマッチはIBFヨーロッパ・フェザー級王座決定戦。ジェームス・ディケンス(イギリス/28歳/26勝11KO3敗)とナサニエル・メイ(オーストラリア/23歳/21勝12KO1敗)の顔合わせ。

 有望株と言われていた2016年、ディケンスは勇躍、ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)に挑んだが、アゴを割られて2回で棄権負け。最近は4連続KOで調子を取り戻している。一方のメイは昨年からベースをイギリスに移した。このところ17連勝だ。地味ながら、このカードはなかなかおもしろい。

 イベントはMTKグローバルの主催で、ESPN+でアメリカにストリーミング中継される。

◆ヘビー級の新鋭がテレビファイト

 Showtimeの『ShoBox』はなかなかの人気だ。若い有望株を積極的に取り上げ、次世代を築く人材を次々にお紹介していく。12日、アメリカ・ワシントン州タコマから放映されるカードの中心はヘビー級の2試合だ。

 プロ転向後、18連勝13KOのジャーメイン・フランクリン(アメリカ/25歳/18戦18勝13KO)は188センチ、110キロと今どきのヘビー級では小柄だが、評判はいい。4月に続き、Showtimeへの登場となる。対戦するのはジェリー・フォレスト(アメリカ/31歳/25勝19KO2敗)。ローカルファイトの前座中心ながら18連勝と好調だ。世界のトップ15定着を狙いたいフランクリンは、格の違いを見せた。

 スウェーデン期待のヘビー級、オットー・ワリン(28歳/20勝13KO1NC)も4月に続いてShowtimeのリングに立つ。身長197センチのサウスポーは前の試合でアメリカデビューを果たしたが、バッティングのカットによって初回ノーコンテスト。今度は実力を存分に発揮したい。10回戦を戦うのはクルーザー級で世界上位を守ってきたベテランのBJ・フローレス(アメリカ/40歳/34勝21KO4敗1分)。サイズは違うが、油断はならない。

◆ミネソタで今年3度目のPBC興行

 古くは名ボクサーの産地だったアメリカ・ミネソタ州ミネアポリスだが、プロでは長く低迷していたもの。ところが、PBC(プレミア・ボクシング・チャンピオン)とFOXスポーツとのタッグが13日、今年3度目のイベントを開催する。すでに8月31日にミネソタ出身のカレブ・トルアックス(アメリカ)の試合が決まっているが、今回は地元選手は不在、目もくらむスター選手の登場もない。それでも、なかなか見どころのあるカードがラインアップされている。

ロバート・ヘレニウス

写真=Getty Images

 ヘビー級10回戦がふたつ。フィンランドのスター、ロバート・ヘレニウス(35歳/28勝17KO2敗)とジェラルド・ワシントン(アメリカ/37歳/19勝12KO3敗1分)のベテラン対決は、文字通りの生き残り戦。身長2メートルのヘレニウスもひところほどの勢いがないし、ここ4戦で3度のKO負けだ。アメリカ初登場のヘレニウスがどこまで本領を発揮するか。

チャールズ・マーティン
写真=Getty Images

 もうひとつは元IBFチャンピオンのチャールズ・マーティン(アメリカ/33歳/26勝23KO2敗1分)のパンチングパワーは飛び抜けているが、技術面ではB級以下。ダニエル・マルツ(アメリカ/28歳/18勝15KO6敗1分)はランクが落ちるといっても身長202センチの巨漢だ。豪打炸裂で、キャリアを再び軌道に乗せられるか。

 ウェルター級の英才ジャマル・ジェームス(アメリカ/30歳/25勝12KO1敗)はいつのまにか三十路の坂を上り始めた。手際のいいボクシングが持ち味ながら、少しは大胆な攻めがほしいもの。対するアントニオ・デマルコ(メキシコ/33歳/33勝24KO7敗1分)は以前のシャープさは失われたものの、ツボにはまればいまだに危険だ。

 アンダーカードではオリンピック選手がふたり。リオデジャネイロで日本の成松大介(自衛隊体育学校)に完勝しているライト級のカルロス・バルデロス(アメリカ/23歳/8戦8勝7KO)、スーパーライト級のゲリー・アントワンヌ・ラッセル(アメリカ/23歳/9戦9勝9KO)は、とにかく経験が必要だ。

 さらにヘビー級のフランク・サンチェス・ファウレ(キューバ/26歳/11勝9KO1NC)のスピードとセンスは素晴らしい。これまではローカルファイトばかりだったが、うまくラインがつながれば、上位への期待も高まる。

文◎宮崎正博

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