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2023-01-18

【相撲編集部が選ぶ初場所11日目の一番】貴景勝敗れる。優勝争いは2敗2人、3敗2人の図式に

貴景勝は琴ノ若に押し倒されて2敗目。懸命の土俵が続くが、残り4番を勝ち切ることができるか

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琴の若(押し倒し)貴景勝

1敗で優勝争いの先頭を走り、横綱へ向けても一番一番星を重ねてきた貴景勝が、琴ノ若に押し倒され、2敗目を喫した。
 
このカードは、最近1年間の対戦成績では、貴景勝の4勝1敗。この埼玉栄高の後輩には燃えるものがあるようで、よく張り手を繰り出している印象があるが、貴景勝としては、とにかく組ませず、イナシで崩して押し込みたい。琴ノ若は、差しにいく、あてがいながらつかまえに行く、突き返していく、など選択肢はいろいろあるが、昨年5月場所で勝ったときは、押し合いから相手が引いてくるところを押し出したもの。いずれにしても相手の攻めに耐えて圧力をかけ続け、引かせる場面を作りたいところだ。
 
立ち合い、貴景勝はこの日は頭から行くのではなく、下から押し上げに行くような立ち合いだった。やや威力を欠き、琴ノ若が先手。その後、貴景勝は突きながら押し返すが、最初に下がっているので攻め切れない。右からイナシてさらに引き、左から小さく張ってまた引きながら右に回ろうとしたが、琴ノ若についてこられてそのまま押し出された。

「圧力がすごいので、そこに対して自分が負けずにいけるか。我慢して相撲が取れるのかどうかというところをしっかり、向かっていけるようにやりました」と琴ノ若。

貴景勝は圧力勝ちすることができず、痛い黒星。7日目以降、いくつも激闘を制して星を重ねてきたが、実は後半戦に立ち合いの威力を生かして勝てたのは9日目の佐田の海戦だけで、内容的にはしのいで勝つ展開が多くなっていただけに、その不安が的中した形となった。
 
この日、幕内前半に行われた2敗対決では、「組んじゃったんですけど、落ち着いて取れました。集中して取れていると思います」という阿武咲が、「右が入って勝ち急いじゃった」という琴勝峰を掬い投げで倒し、優勝争いは2敗に貴景勝と阿武咲、3敗に、この日勝ち越しを決めた玉鷲と、琴勝峰という図式になった。
 
この中で相対的に誰が有利か、といえば、やはり今日敗れたとは言え、現時点で星1つリードしており、番付最上位の貴景勝ということになるが、さて、このあとどこまで星を重ねていけるか。残り対戦が予想される相手は、明日の霧馬山以外は、負傷していたり、さして今場所調子がいいとは言えないが、そうは言っても実力のある三役陣なので、全部勝つのは楽な話ではない。もちろん場合によっては割を崩して阿武咲との直接対決もありうる。
 
もう一人の2敗の阿武咲は、ここまでいい内容で勝ってきているが、明日玉鷲という関門があり、さらに場合によっては貴景勝と当てられる可能性もあるので、勝ち抜いていくにはまだまだハードルがいくつも。この日3敗に後退した琴勝峰は、番付的にもまだ平幕の中で飛び抜けて力がある、というところまでは達していない気もするので、あと何番積み上げていけるか、といったところか。
 
そして不気味な存在になってきたのが玉鷲だ。ここに来ての相撲内容もいいうえに、これまで2度の優勝経験があり、精神的には4人の中でも圧倒的に条件がいい。すでに貴景勝戦が終わっているので自力優勝はなく、まだ琴ノ若や若元春と当たる可能性を残してはいるが、もし明日の阿武咲戦に勝つようなら、貴景勝にプレッシャーを与えるに十分な存在となるだろう。
 
再び、混迷の香りが漂ってきた今場所。優勝ラインが下がったことで、優勝争いとともに、もし貴景勝が優勝した場合でも「それは横審で言っていた”好成績で優勝”に該当するの?」というあたりがどうなのかも気になるところで、いやはや、果たしてどうなるのか、結末が気になってしょうがなくなってきた。

文=藤本泰祐

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