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2023-01-28

【NFL】イーグルスのハーツ vs 49ersのパーディー QBのリマッチ(再戦)に注目!

ブロック・パーディーvsジェイレン・ハーツ。3年前は壮絶な「撃ち合い」を展開した=photo by Getty Images

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 いよいよ大詰めとなったアメリカンフットボールの世界最高峰、米のNFL。NFC,AFCの両カンファレンスチャンピオンシップを前に、アメフト系ポッドキャストを運営する「アメフト沼」さん(Twitter: @football_swamp )から、今回のチャンピオンシップにまつわるホットでディープな話題を寄稿していただいた。(写真はすべてGetty Images)


 3年前に壮絶なシュートアウト

 NFLは、現地時間1月29日(日)にスーパーボウル出場を賭けてAFC、NFCのチャンピオンシップがある。

 NFCチャンピオンシップ=日本時間1月30日(月)午前5時30分キックオフ=は、2年連続進出のサンフランシスコ・49ersと、2017年シーズン以来、6シーズンぶりの進出となったフィラデルフィア・イーグルスが対戦する。見どころの一つが、QB同士による因縁の対決、リマッチ(再戦)となる。

 シーズンが押し迫った12月に、QBジミー・ガロポロの負傷を受けてスターターに昇格し、以来快進撃を続けている49ersのMr.イレレバント、ブロック・パーディー。堅実なパス・鋭いランでチームをNFCの第1シードに導いたジェイレン・ハーツ。

 プロ入り3季目のハーツが24歳、今年がルーキー・シーズンのパーディが23歳ということで、この試合はNFLのカンファレンス・チャンピオンシップ史上、25歳以下のQB同士が対戦する初めての試合であるのと同時に、両QBの合計年齢47歳というのは過去最少ということでフレッシュな対決だ。

 NFLでは初顔合わせの、この両QBの間には、過去に因縁が存在している、それは3年前のカレッジフットボール、現地2019年11月9日(土)夜に行われた試合にまで遡る。

 この時点で、全米9位にランクされていたBIG12所属のオクラホマ大が、ホームに迎えたのが同地区ライバル校の一つ、アイオワ州立大だった。

 カンファレンス優勝、さらに全米王者を決めるCFP(カレッジフットボールプレーオフ)への出場を目指していたオクラホマ大にとって負けられないこの一戦、オクラホマ大のQBがハーツ、アイオワ州立大のQBがパーディーだった。

アイオワ州立大のQBブロック・パーディーはディフェンスと激闘しながらパスオクラホマ大のQBジェイレン・ハーツはパスで3TD、ランで2TDと活躍した=2019年のオクラホマ大vsアイオワ州立大戦で、photo by Getty Images

 QBハーツからWRシー・ディー・ラム(現カウボーイズ)へのパス、さらにハーツの持ち味であるランを絡めた攻撃で順調に得点を重ね、35対14で前半を折り返し、第3Q終了時点でも、42対21とTD3本差をつけてリードする展開だった。

 しかし、パーディーの見せ場はここからだった。第4Q最初のプレーで、アイオワ州立大がパスでTDを奪うと、その後、ラムによるファンブルや、試合終盤、残り時間4分を切ったところでハーツが投げた不用意なインターセプト等、オクラホマ大はミスが重なり、勝敗の行方は一転してわからなくなった。

 そして、試合残り時間24秒で、この日5本目となるTDパスをパーディーが決め、42対41の1点差とオクラホマ大に肉薄。ここでアイオワ州立大は延長戦を視野に入れたキックではなく、3ヤード地点から2ポイントコンバージョンを選択。一気に決着させることを狙ったが、残念ながらパーディーのパスは相手選手にインターセプトされ、42対41で涙を飲む結果となった。

 両QBの成績は、ハーツがパス273ヤード3TD1インターセプト、ラン68ヤード2TD。パーディーがパス282ヤード5TD、ラン55ヤード1TDだった。

 もしこんな試合が、NFCのチャンピオンシップでも展開されたら、と思うと、今からワクワクしてくる。

アイオワ州立大のQBブロック・パーディーはパス5TD、ラン1TDと活躍した。=2019年のオクラホマ大vsアイオワ州立大戦で、photo by Getty Images


 パーディーは、今春ドラフトで一番最後の全体262番目に指名され、Mr.イレレバント(無意味な)の呼び名を枕詞につけられて紹介される。だが、決して無名の存在ではなく、強豪校のオクラホマ大相手に真っ向勝負して、紙一重のところまで迫る実力を持っていた。

 一方のハーツは、ベンガルズのQBジョー・バロウが全体1位指名された2020年ドラフトで、2巡53位で入団した。当時イーグルスは、まだカーソン・ウェンツがエースQBで、パス能力に課題があるハーツの指名は疑問視された。ハーツはオクラホマ大学を経てNFL入りしたが、オクラホマ大は1シーズンのみ。それまでの3シーズンは、アラバマ大学で先発QBを務めていたのは有名だ。

同じ日にはバロウvsタゴヴァイロアも
 
 因みに、このオクラホマ大とアイオワ州立大の試合が行われた同じ日の午後にはジョー・バロウを擁し全米2位にランクされていたLSUと、トゥア・タゴヴァイロアを擁し全米3位にランクされていたアラバマ大の同地区対決という、全米中が注目する一戦があり、この試合も46対41という激戦。LSUが勝利して全米王者へ向けて大きく前進した試合だった。

 今回の両チャンピオンシップに出場するベンガルズのバロウやWRジャマー・チェイス、チーフスのRBクライド・エドワードヒレアーやイーグルスのWRデヴォンタ・スミスをはじめ現在NFLの各チームに所属するスター選手が相次いで活躍する壮絶な試合だった。
2年連続でチャンピオンシップ進出のベンガルズQBバロウー=photo by Getty Images
 AFCチャンピオンシップについても、語っておきたい。2年連続でカンサスシティ・チーフスとシンシナティ・ベンガルズが対戦となった。チーフスは、2018年シーズンからパトリック・マホームズが先発QBの座を掴んで以来、5年連続でこの舞台に辿りついているものの、彼らが現在最も苦手にしているのが今回対戦するベンガルズだ。

 3年前のドラフトでベンガルズに1巡全体1位指名されたバロウがエースとなってから昨シーズンのAFCチャンピオンシップ、今シーズン第13週目の対戦を含めてこれまで3連敗中だ。いずれの試合もFG1本の3点差、僅差で試合を落としている。これまでマホームズのチーフスに3連勝したQBはバロウだけ。前回のジャガーズ戦で右足首を負傷したマホームズの怪我の回復状況も気になる。ホームフィールドアドバンテージはチーフスにあるが、勝敗はまったく見通せない。

4人のQBに共通するポイズ (poise)
5年連続でチャンピオンシップ進出のベンガルズQBバロウー=photo by Getty Images
 今回、カンファレンス・チャンピオンシップにコマを進めた4チームの先発QBの中で最年長が27歳のマホームズ。NFLのQBは若返りが進んでいる。出場する4人のQBそれぞれにプレースタイルなどの特徴は異なるが、彼ら4人に共通しているのが  “ポイズ (poise)” 、試合中の「落ち着き」にある。

 一つ一つのプレイの中でも、一つの攻撃シリーズの中でも、一試合を通して、決してパニックに陥ることなく、その時々の状況に応じて最善策を選び、致命的なミスを犯すというシーンは今シーズンを通してほとんど見当たらない。

 また、イーグルスのハーツや49ersのパーディーにとって、カンファレンス・チャンピオンシップへ進むのは初めての経験となるが、彼らは大学時代に上記に記載したような試合をレギュラーシーズン中に経験し、その上でさらにプレイオフの舞台やボウルゲーム出場など世間からの注目を一身に集めた大舞台を経験済みだ。

 AFCチャンピオンシップ、NFCチャンピオンシップ共に、好ゲームを期待したい。

■寄稿者の「アメフト沼」さんプロフィール
「アメフト沼」さん
1996年4月 関西学院大学 入学
アメフト部に1年間在籍、スカウトチームでWRを経験したのち退部。
1999年1月 アラバマ大学 留学(編入学)
アラバマに暮らす人々の人生に根付いたカレッジフットボール文化を体験して以来、カレッジフットボールの魅力にどっぷりハマる。現在は、週末、フラッグフットボールのコーチをする傍ら、日本の大手スポーツメディアがスルーするようなネタを拾い集めるアメフト系ポッドキャスト「アメフト沼」をSpotify, Apple Podcast, Amazon Music 他にて配信中。

「アメフト沼」ボッドキャスト
 https://open.spotify.com/show/1IdFrocpPamC5CRa7aF9PF

「アメフト沼」twitter
https://twitter.com/football_swamp

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