close

2019-05-02

【ボクシング】令和初の日本タイトルマッチはドロー 注目の源vs.阿部は、2度ダウン喫した挑戦者が後半盛り返す

『第40回チャンピオンカーニバル』最注目の日本フェザー級タイトルマッチ10回戦が1日、東京・後楽園ホールで行われ、チャンピオンの源大輝(28歳=ワタナベ)が2度ダウンを奪ってリードしたが、挑戦者1位の阿部麗也(26歳=KG大和)が後半、ポイントで猛追。判定に持ち込まれた決着は、95対94で阿部が一者、94対94が二者の引き分けに。源は2度目の防衛に成功。阿部は王座初挑戦でのタイトル獲得はならなかった。

上写真=王者・源(右)の右フック、挑戦者・阿部の左が交錯する

 平成が終わり、新時代『令和』の幕開けにふさわしい好カード。前座カードの人気も相まって、後楽園ホールには満員の1979人が駆けつけた。

 豪快に振り抜く左右フックと気迫みなぎる戦いで惹きつける王者と、空間把握能力に秀でており、カウンターで相手を痛めつけていく洗練されたサウスポーの挑戦者。対照的な両者の対戦は、いつの時代でも人を魅了する。

 そろりそろりと独特のフットワークとジャブでペース支配を始めたのは阿部だった。が、初回終了間際、阿部が左を伸ばすところに、源の右ショートストレートがヒット。阿部は尻もちをついてしまう。続く2ラウンドも、阿部がサークリング、ステップワークでリズムを取りかけていたところへ源の右ロングがガツン。阿部はふたたびキャンバスに倒れてしまった。

初回、そして2回と、源の右で阿部がダウン。最初の2ラウンドで4ポイント差がつくという波乱の幕開けだったが……

「自分はスロースタートの傾向があるのに、立ち上がりでうまくいきすぎて、倒せると思って力んでしまった」(源)

「後ろにコケたところに、パンチが伸びてきて……。効いてはいなかった」(阿部)

 阿部は、すっくと立ち上がると、何事もなかったかのように、フットワークで小刻みにポジションを変え、猛進してくる源を、マタドール(闘牛士)のようにさばく。そして、ジャブ、右アッパーカット、左ストレートの上下攻撃を差し込む。しかし、源が一撃の右スイングを見舞うと、阿部の動きが加速する。そんなラウンドが繰り返されていった。

 5ラウンド終了時に公開された採点は48対45で、ジャッジ三者とも源を支持していた。

 6ラウンド以降、阿部はより力強いブローを放っていく。源は左目周りが腫れ、鼻血も流し始める。独特な軌道を持つ源のスイングを阿部はすっかり見切り、源の空振りが目立つ。と同時に、バランスを崩すシーンも多くなった。ダメージ、疲れももちろんだが、「減量の影響もあったかもしれない」と源自身も認めざるをなかった。

試合全体のペースを支配していたのは阿部(左)。しかし、1発の印象で源が上回るラウンドもあった

 8ラウンド、ロープを背負った阿部に、源の右がヒット。挑戦者の腰がロープに落ち、源にふたたびビッグチャンスが訪れたが、阿部はまたすいすいとかわしていくと、手数を増やしてコツコツとヒットを集める。この先、阿部が迫力ある前進で攻めていけば、源もあるいは……という展開が続いたが、「あの右に完全に委縮しちゃいました」と、阿部は試合後、自ら仕掛けられなかった理由を素直に語った。

腫れの目立つ王者に対し、挑戦者は綺麗な顔。はたして、再戦は実現するのか。そして、完全決着はどのようにつくのか──

 気迫で戦い抜いた源、高い技術を披露しながら、決定的な何かを示すことができなかった阿部。決着はつかなかったが、「しっかり白黒をつけたい」(源)、「ドローは悔しい。(再戦は)話があれば……」(阿部)と、ともにリマッチを望む。ダイレクトの再戦となった日本ミドル級タイトルマッチ、竹迫司登(ワールドスポーツ)vs.加藤収二(中野サイトウ)戦同様、両選手のふたたびの邂逅が待ち遠しい。

文_本間 暁 Text by Akira Homma
写真_菊田義久 Photos by Yoshihisa Kikuta

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事