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2019-04-28

【海外ボクシング】エストラーダがシーサケットに雪辱/ローマンがドヘニー下し統一王者に

4月26日(日本時間27日)アメリカ・カリフォルニア州イングルウッドにあるザ・フォーラムで行われたWBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦で、挑戦者1位ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)が王者シーサケット・ソールンビサイ(タイ)を3-0の判定で破り、世界2階級制覇に成功した。また、ダブルメインのWBA・IBF世界スーパーバンタム級王座統一戦では、WBA王者ダニエル・ローマン(アメリカ)がIBF王者のTJドヘニー(アイルランド)から2度のダウンを奪って判定勝ち。2本目のベルトを手に入れた。

上写真=エストラーダの左アッパーカットが、シーサケットのアゴを捉える!

シーサケットの“読み”が裏目となった

 14ヵ月ぶりのリマッチ。試合3日前の公開練習で、シーサケットとエストラーダはともに“KO宣言”をしていた。

 2年前にアメリカ進出を果たし、世界4階級制覇の“怪物”ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)を際どい判定で破った後、再戦では痛烈KOに沈め世界的に名を轟かせたシーサケットは、「私は再戦が好きだ。今回も再戦はKOで勝つ」と自信をみせる。

 一方で追う側のエストラーダは、「今回はジャッジに委ねるつもりはない。積極的に戦う。KOする準備をしてきた」と言い切った。スピード、技術力に定評があり、初戦でもポイントで上回ったとみる向きも多かった。陣営は「10回以降のKO」と具体的に語ってもいた。

 そんなエストラーダが宣言どおりスタートから積極的に出て、シーサケットの重そうなパンチにひるまず、シャープなコンビネーションを先行させる。サウスポーのシーサケットが右構えでスタートしたのは「相手が対サウスポーの準備をしているのだから、右で行こうという作戦だった」と試合後に明かしたが、結果的には自らを出遅れさせてしまった印象だ。現に5回、6回と、サウスポーに戻すとパワフルな左ストレート、右フックでエストラーダをぐらつかせている。しかし、チャレンジャーのリズムは崩れない。正確な連打で着々とヒットを重ね、8回には左アッパーから右で頑丈なタイ人をよろめかせてみせる。そして試合は、エストラーダ陣営が“予告”した終盤に入る。チャージをかける挑戦者はそのぶん被弾のリスクも高まって、シーサケットの左に脅かされ、11回にはローブローの痛手も受けた。が、チャンピオンの追い上げを振り切り、勝利をつかんだ。採点は116対112、115対113が二人の3-0だった。

シーサケットの左に、右をクロスさせるエストラーダ。シーサケットのパワーを、エストラーダが技で封じた

「とても幸せだ。すべての人のサポートに感謝する。彼がまた戦いたいと言うならやるが、それよりも他のチャンピオンとの統一戦の方がしたい」と語ったエストラーダは、42戦39勝(26KO)3敗。かつてライトフライ級無敵時代のロマゴンを最も苦しめた男として注目された実力者は、WBAとWBOフライ級王座に続き、これで世界2階級制覇を果たした。

 敗れたシーサケットは「エストラーダは速く、力強くなっていた。もう一度戦いたい」と、ラバーマッチを熱望している。長い間スーパーフライで戦ってきた32歳は、試合前、「そう遠い未来ではなく階級を上げることになると思う」と話していたが、悔いを残しては先へ進めない、ということだろう。戦績は53戦47勝(41KO)5敗1分。日本の佐藤洋太(協栄)からWBCスーパーフライ級王座を奪ったのが、ちょうど6年前。1年で無冠となり、その3年後にロマゴンを破って同じ王座に返り咲いた。今回は4度目の防衛戦だった。

“テクニック”対“パワー”は、前者に凱歌

ローマンの右アッパーがドヘニーの顔面にヒット

 奇しくも日本から世界王座を強奪した二人によるスーパーバンタム級の王座統一戦。ローマンは2017年9月に久保隼(真正)から奪ったWBA王座を、TJドヘニーは昨年8月に岩佐亮佑(セレス)から奪ったIBF王座をかけるこのカードは、戦前から勝敗予想が難しかったが、実際、紆余曲折あって観衆の目を惹きつけた。

 サウスポーのドヘニーが懐深く構えてローマンの出端をとらえ、上々の滑り出し。しかし2回、攻めあぐねているように見えたローマンがコンパクトな左フックをテンプルに命中させてダウンを奪うと、動きに自信が漲った。しかし4回、ドヘニーが打ち合いに応じてパンチの交換になると、“パワー”の愛称を持つIBF王者の攻撃力が目を引いた。岩佐も「ドヘニーは、パンチありますよ」と認めるとおり、7回にはその左フックでローマンを大ピンチに追いやっている。しかしそのチャンスに、ドヘニーが詰めに出なかったのはローマンにとって幸いだった。右まぶたを腫らしながらもローマンは9回にはすっかり立て直し、左ボディブロー、死角からの左アッパーを効果的に使ってIBF王者を追い込んでいく。11回には左ボディアッパー一撃でダウンを追加。勝利を決定づけた。採点は116対110が二人と113対113の2-0だが、ローマンの勝利は明白だった。

「TJのパンチをもらって、打ち合ってはいけないと再確認した。でも私のボディブローで彼が効いたのがわかって、すかさず行った」と試合を振り返ったローマンは、これで30戦27勝(10KO)2敗1分。4度目の防衛を果たしたWBA王座は“スーパー王者”に格上げされ、先日同暫定王座を獲得したブランドン・フィゲロア(アメリカ)が正規王者に昇格するはず。またIBF王座は、元同王者の岩佐亮佑(セレス)が次期挑戦権を保持して待っている。岩佐と同じくリングサイドから観戦したWBC同級王者レイ・バルガス(メキシコ)との3団体統一戦を望むローマンだが、バルガスにはWBCが同暫定王者・亀田和毅(協栄)との対戦を指令している。ともに本筋を守るのか、王座統一戦を優先させるのか、次戦の行方が注目される。

2本のベルトを巻き、さわやかに喜ぶローマン

前座では元王者同士が対戦

 この日の前座では元WBOウェルター級チャンピオンのジェシー・バルガス(アメリカ)と元世界3階級制覇者ウンベルト・ソト(メキシコ)によるスーパーウェルター級10回戦も行われ、バルガスが6回1分48秒KO勝ちを収めている。

 さる2月に元IBFスーパーライト級王者ブランドン・リオス(アメリカ)に大差判定勝ちをおさめ、気力に満ちているソトが初回からバルガスの腹を狙って出た。2回にバッティングが起きてバルガスが右まぶたから流血してから打ち合いは激化。バルガスは躊躇なくボディショット、カウンターの右クロスを合わせ、ベテランを傷めつけておいて6回に右一撃でノックダウン。再開後の連打でレフェリーストップを呼び込んだ。

3年ぶりのKO勝ちを収めたバルガスは33戦29勝(11KO)2敗2分。興行主マッチルームUSAのエディ・ハーン氏によると、バルガスとWBOスーパーウェルター級王者ハイメ・ムンギア(メキシコ)を対戦させる計画があるという。ソトは82戦69勝(37KO)10敗2分1無効試合。

取材・文_宮田有理子 Text by Yuriko Miyata
Photos by Ed Mulholland/Matchroom Boxing USA

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