
21日、エディオンアリーナ大阪第2競技場で行われたバンタム級8回戦は、スーパーフライ級の世界4団体で上位にランクされる(WBO4位、IBF5位、WBA6位、WBC11位)石田匠(27歳=井岡)が、日本バンタム級9位の定常育郎(21歳=T&T)の攻勢に大苦戦。76対75、77対75、77対74の小差3-0判定勝利を収めたが、華麗なアウトボックスは影を潜めたままだった。
上写真=定常(右)の攻撃力に、終始受け身に回ってしまった石田
IBF王者ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)、WBC王者シーサケット・ソールンビサイ(タイ)。サウスポーの両チャンピオンを見据えてのことだろうか。1階級上のサウスポーの新鋭・定常を呼んで、石田はプロキャリア中、初のサウスポー選手との対戦に臨んだ。
対左に対し、得意の左ジャブを打ちづらい、という素振りは特に見られなかった。が、陣営にとって予想外だったのは、定常の踏み込みの強さ、速さ、そして上下にうまく打ち込んでくる左ストレートの強さだったのではないか。
定常は、石田が手を出すよりも速く入り込み、石田のガードをものともせずに、何度も何度も左を叩き込んでいった。時折放つ右アッパーカットも、石田の目を引きつけるに十分。左ストレートのボディ攻めに、石田は軽快なステップワークも封じられていった。
足を止めながら、石田はジャブ、右ストレートで迎撃態勢に入る。たしかに、瞬間的に定常のステップインを止めることもあった。しかし、定常の突貫攻撃は収まらない。また、定常は石田の右を空振りさせて左をリターンするなど、成長の跡も披露した。
石田が大チャンスを築いたのは6ラウンドだった。近づいた定常に、右アッパーをボディにカウンター。これでたじろいだ定常は、さらに強引なステップインを敢行。攻撃とともに頭が当たり、新井久雄レフェリーの注意を再三受ける。石田も定常の頭を気にしすぎ、これで集中力を切らしてしまう面もあった。
最終8ラウンド、仕掛けたのは定常だった。左ストレートの連続で石田に迫る。しかしここで、新井レフェリーが試合を中断。定常にヘディングで減点1を科した。
定常の攻撃に、どうしても受け身に回ってしまう石田は、クリンチで切る巧さは見せた。しかし、やりたいボクシングの大半を披露できない展開に終始した。
一方の定常は、思い描いていたボクシングをほぼすべて体現できただろう。敗れはしたが、定常の株は大きく上昇。世界上位ランカー石田に大善戦したことで、大きな自信も得たに違いない。
石田の戦績は29戦28勝(15KO)1敗。定常の戦績は16戦9勝(3KO)4敗3分。
文_本間 暁 写真_早浪章弘
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