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2019-04-03

【ボクシング】 「この辺が限界なのかな……」 赤穂、不本意な負傷判定勝ち

2日、東京・後楽園ホールで行われた56.0kg契約8回戦は、WBO世界バンタム級4位の元OPBF東洋太平洋スーパーフライ級、日本バンタム級王者・赤穂亮(32歳=横浜光)が、日本スーパーバンタム級20位の藤岡飛雄馬(27歳=宮田)に5回55秒負傷判定勝ち。スコアは50対46、48対48、49対47の2-0だった。

上写真=赤穂の右が藤岡の顔面を捉える場面もあったが、得意の左フックを空振りするシーンが目立った

 強引に振り回す左フックが空を切る。その光景は、これまでの37戦(33勝20KO2敗2分)でも散々見られてきたもの。赤穂らしいといえば赤穂らしいが、それにしても、この日の空振りには、切なさも感じられた。

 空振りをしても、体ごとぶつかっていくような野獣性は皆無。空を切った後、藤岡に回り込まれ、バランスを崩してロープに突っ込むこと再三。そこを藤岡に詰められるシーンもあった。

「いい練習はできていたけれど、試合のモチベーションが……」と赤穂。前回は昨年11月にノーランカーの水谷直人(KG大和)が相手、そして今回も日本ランク下位の藤岡。緊迫感のある相手じゃないと、火がつかないと言いたいのだろう。

 しかし、水谷同様サウスポーの藤岡は、赤穂の豪快なパンチに臆することなく、空振りさせてはコツコツとジャブや左ショートをヒットしてきた。赤穂にとっては、うっとうしいパンチ。イライラは募ったことだろう。赤穂が言う「熱さ」とは違うヒートアップをし、力んで空振り……は、回を追うごとに増えていった。

 ただし、空振りも多かったが、藤岡のガード上を叩く迫力があったのも事実。そして、フック系を意識させておいての右ストレートもわずかだが効果を上げた。4回には左フックのダブルを上から下へと突き刺し、藤岡の動きを止めかけた。

 だが、2回に眉間を、3回に左目上を、そして5回には眉間の別の場所をそれぞれバッティングでカットしていた赤穂の傷は酷くなる一方。ドクターチェック後にレフェリーが試合を止めた。

「こんなつまらない試合をしてすみません。このあたりが限界なのかな。先のことは考えます」と、赤穂はリング上から引退を匂わせる発言もした。「自分にガッカリ」と控室では下を向いた。

 目の前の相手が誰であろうが、襲いかかっていくのが赤穂の持ち味だったはず。それが失われているのならば、本人がいうとおり、じっくりと自分を見つめ直す時間が必要だろう。

 敗れたとはいえ、藤岡は大きな自信になったことだろう。被弾もあったが、まともには食らわず、ほとんどをガードやパーリング、ターンなどでかわし、地味だがコツコツとヒットも奪った。飛躍の1戦にしたい。19戦10勝(1KO)8敗1分。

文_本間 暁 Text by Akira Homma
写真_小河原友信 Photo by Tomonobu Ogawara

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