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2019-03-20

【ボクシング】キャリア18年、39戦目で世界初挑戦決定 船井龍一、5月にアメリカでIBF王者アンカハスに挑む

元日本&WBOアジアパシフィック・スーパーフライ級王者で現IBF同級1位の船井龍一(33歳=ワタナベ)が5月4日(日本時間5日)、アメリカ・カリフォルニア州ストックトンのストックトン・アリーナでIBF王者ジェルウィン・アンカハス(27歳=フィリピン)に挑戦することが20日、ワタナベジムで発表された。

上写真=「右で倒したい!」。船井は、もっとも自信のあるパンチでKO奪取を狙う

「いまはアマチュアでキャリアを積んだ選手が、早い段階で世界チャンピオンになる時代ですが……」
 15歳、高校1年でボクシングを始めてから18年。2005年に19歳でプロデビューして39戦目。23戦目で初めてのタイトルマッチに挑み、OPBFバンタム級王者ロリー松下(カシミ)に完敗を喫し、34戦目、三度目のタイトル戦でようやく日本チャンピオンに輝いた“遅咲きの男”。けれども、紆余曲折を経てようやくつかんだチャンスだからこそ、得られた自信がある。

「それまでは気持ちが弱かったけれど、親友の中川に勝ったことで、気持ちが強くなりました。あの試合が、いまの自分のすべてです」

 中川健太と元プロ選手の増田岳之さん、そして船井。3人は高校の同級生で、3人でボクシング部をつくってしまったほどのエネルギーの持ち主。そこから中川と増田さんはロッキージムへ、船井はワタナベジムへと分かれたが、ずっと交流は続いていた。
 しかし、その中川が、ひと足早く日本チャンピオンとなり、運命のいたずらとでも言ったらいいのか、船井が挑戦するかたちとなった。
 2017年3月22日、後楽園ホール。優しさを捨てた船井は、親友に襲いかかり、7回KO勝利。2度防衛し、WBOアジア王座も獲り、昨年11月にIBF王座挑戦者決定戦に勝って、今回のビッグチャンスまで一気に駆け上ったのだ。

「絶対勝ってこいよ!」(中川)
「当たり前だろ!」(船井)
 今回の試合が決まって、そんなやり取りをしたのだという。

「あいつともう1回やろうって話してます。僕が獲って、あいつがまた這い上がって、今度は世界で」

 中川は今月1日付でレイスポーツジムから三迫ジムへ正式に移籍。そうそうたるメンバーが集うジムで、明るく切磋琢磨している。勝者と敗者で差は開いてしまったが、今度は中川が追いかける番。船井もさらに高い山を登って、待ち構える覚悟だ。

「満を持しての挑戦」と渡辺均会長。船井も「ベストタイミング」と意気込む

 王者アンカハスは今回が7度目の防衛戦のオールラウンドなサウスポー。「なんでも対応できる選手。カウンターも上手いし、アグレッシブに攻められるし、駆け引きもすごく上手いし。どれをとっても強い」と、船井も一筋縄ではいかないことを百も承知している。
 しかし、ここのところの船井は、元々強かった右ストレートを、ピンポイントで打ち抜く術を心得ているかのよう。

「高橋さんとの反復練習で、体に染み込んでいる」と、高橋智明トレーナーとの地道な積み重ねが花開いたことを強調する。この高橋トレーナーは、元WBA世界同級チャンピオン河野公平を支えたことでも知られるが、河野も右のカウンターパンチで一気に頂点へと登ったことは記憶に新しいだろう。前戦でビクトル・エマヌエル・オリボ(メキシコ)を右のワンパンチで沈めたシーンの再現を期待したいところ。

 そのためには、「序盤に右を怖いと思わせたい」と船井が明かすとおり、右を警戒させつつ、左を使っての戦い方が重要になってくる。それがうまくハマれば、船井が展開する幅もグンと広がるはずだ。

 夢にまで見た世界チャンピオン。そして、夢だったアメリカでの試合。
「そのふたつを5月4日に同時に叶えられると思うと本当に楽しみです。泥臭くても、一瞬で終わっても。何が何でも勝ちます」

 そのためには、「これまでどおり、その日に向かって1日1日を大切に過ごします」。
船井は、この言葉を何度も何度も繰り返した。

 なお、アンカハスvs.船井と同じリングで、IBF世界ライトヘビー級タイトルマッチ、王者アルトゥール・ベテルビエフ(ロシア)vs.13位ラディボエ・カラジッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)も行われる。トップランク・プロモーション主催で、ESPNで中継されるという。

アンカハス:34戦30勝(20KO)1敗2分
船井:38戦31勝(22KO)7敗

文&写真_本間 暁

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