写真上=加藤(右)と激しく打ち合う竹迫
写真◎小河原友信
2日、東京・後楽園ホールで行われた日本ミドル級タイトルマッチ10回戦は、ここまで10戦オールKO勝ちのチャンピオン、竹迫司登(ワールドスポーツ)が、1位挑戦者・加藤収二(中野サイトウ)の粘り強いファイトに苦しみ抜いた末に3者3様のドローで逃げ切った。竹迫は2度目の防衛に成功した。
これまで豪快KOの山を築いてきた竹迫だったが、どうして今回はそうできなかったのか。「決定打がなかった」という結論は当たらない。加藤が「決定打を出させなかった」といったほうがより正しいのだろう。
「気持ちの強さを感じました。打っても打ってもへこたれない。打ち返してくる」(竹迫)
そのために、とっておきのパンチを置き去りにしたまま戦ってしまった。そしてもうひとつの理由も、やはり加藤の勇気が生み出した果敢な処理にある。
「ここで打とうとすると、すっと前に出てくる。そうかと思うと、くるりと後ろに回ってくる」
いまや、日本重量級のとっておきの強打にも怖じ気づくことなく、加藤は果敢に距離を潰し、あるいは角度を変えていく。そのうちに竹迫のサウスポーへの苦手意識が引き出されていった。9ヵ月前のチャイワット・ムアンポン(タイ)戦。プロになって初めて左構えで戦う相手との試合は苦労しながら7回でやっと仕留めたもの。この日もラウンドを追うごとに単調な戦いになっていった。
最初の2ラウンドこそ、威力のある右ストレート、左フックを印象づけた竹迫だったが、3回に加藤がショート連打にアッパーカットを交え始めると、ペースはだんだんと乱れていく。ロープ、コーナーへと追っても、逆襲の連打に立ち往生してしまうシーンもしばしば。真正面に突っ立って左右をねじ込むばかりで、その攻撃はあまりに淡泊に過ぎた。350人ともいう応援団の絶叫にも似た声援にも後押しされて、加藤の奮闘は続く。竹迫の右目のあたりが腫れ始め、苦戦の色合いがいよいよ濃くなった。
それでも、竹迫の今後に可能性を感じさせたのは勝利への執念だ。小さく連打をまとめてくる加藤に対して、自分から引くことなくプレッシャーをかけ続ける。終盤、やや疲れの見えた挑戦者から右強打で強引にポイントをもぎ取って、勝負を引き分けに持ち込んだ。
「もうひと押しができないところが、自分の弱さだと思います」と加藤がコメントしているころ、そのはす向かいの控え室にいた竹迫はタイトルを守った安堵と、自分のふがいなさをなじるような複雑な表情を見せていた。
「勝ったわけではない。ドローです。まだまだなのを自分自身も思い知りました。また、がんばっていきたい」
斎田竜也会長も、「再戦? やっていただけるのならいつでも。(竹迫に)このまま男を下げさせ続けることはできません」。
層が厚いとは言えない日本のミドル級。竹迫にとって、加藤は日本での大きな壁になるかもしれない。
取材◎宮崎正博
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