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2019-03-01

【海外ボクシング】ウィークエンド・プレビュー アーティスト、エリスランディ・ララ復活なるか

写真上=WBA王者カスターニョ(右)への挑戦に復活をかけるララ
Getty Images

3月2日/バークレイズセンター(アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン)

★WBA世界スーパーウェルター級タイトルマッチ12回戦
ブライアン・カスターニョ(アルゼンチン)対エリスランディ・ララ(キューバ)

カスターニョ:29歳/15戦15勝(11KO)
ララ:35歳/30戦25勝(14KO)3敗2分

 定期的に世界的なスターボクサーを輩出してきたアルゼンチンだが、マルコス・マイダナ、セルヒオ・マルティネスらが去ったあとは、いささか寂しい顔ぶれになっている。そんななかでもっとも躍進が期待される存在がカスターニョだ。

 アマチュア実績を積み、プロではじっくりとキャリアを作ったあと2016年に暫定タイトルを獲得、その後に正規王者に昇格した。中間距離から果敢に飛び込んでのインファイトは持ち味。多彩なブローで集中打をまとめ上げる。

 ニューヨークエリアではMSGと並び立つボクシングのメッカになりつつあるバークレイズセンターでのメインイベントに勝てば、一気にスターダムに上り詰める可能性もある。ただ、そのために打ち破らなければならない壁はかなり厚い。

 過去2度、世界のチャンピオンシップを握ったサウスポーのララは、まさしく現代ボクシングを代表するテクニシャン。安定したペースメイクに絡みとって、対戦者の手のうちを丸呑みにしてしまう。あまりに技に走った戦いに、大向こうからの喝采は浴びにくいが、35歳となってもその実力は超一級の領域にある。

 カスターニョはサイドの動きを多用し、多彩な攻め口を模索したい。単調な攻めに終始すれば、ララのリードブロー、左ストレートの格好の標的になってしまう。現時点ではカスターニョの爆発力は確認できていないだけに、やはりララ優位の予想は動かすことはできない。

 試合はSHOWTIMEで放映される。

◆オルティスのカムバックロードは続く

ルイス・オルティス
Getty Images

クリスチャン・ハマー
Getty Images

 ヘビー級のスラッガー、ルイス・オルティス(キューバ/39歳/30勝26KO1敗2無効試合)が前座カードに出場する。デオンテイ・ワイルダーとの壮絶な打撃戦に打ち負けたものの、その後は連続KOと安定感が光るサウスポーが対するのは、ヨーロッパエリアでは実績を持つクリスチャン・ハマー(ルーマニア=ドイツ/31歳/24勝14KO5敗)。力の上ではオルティスの優位は動かず、どんな形で決着をつけるかが焦点となる。

ブライアン・デグラシア(左)とエデュアルド・ラミレス
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 注目のフェザー級強打者ブライアン・デグラシア(パナマ/25歳/24勝20KO1敗1分)がアメリカ・デビュー戦。相手となるエデュアルド・ラミレス(メキシコ/26歳/21勝8KO1敗2分)は、IBF王者だったリー・セルビー(イギリス)に挑んだものの、計量で失格し、さらに完敗。この一戦に生き残りをはかるメキシカンを、デグラシアは仕留めることができるのか。

エドウィン・ロドリゲス
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アントニオ・ラッセル
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リチャードソン・ヒッチンス
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 この日はライトヘビー級の実力者エドウィン・ロドリゲス(アメリカ/34歳/30勝20KO2
敗)がクルーザー級としてのテストマッチを行う。ゲリー・ラッセル・ジュニアの弟で元トップアマのアントニオ・ラッセル(アメリカ/26歳/2戦12勝10KO=バンタム級)、15ヵ月ぶりに再起するスーパーフェザー級の技巧派レデュアン・バルテレミー(キューバ/29歳/13勝7KO1分)、ハイチ代表としてリオ五輪に出場した素質豊かなウェルター級リチャードソン・ヒッチンス(アメリカ/21歳/7戦7勝3KO)などが登場する。

まだまだあるぞ!注目カード
イギリス、ドイツ、オーストラリア……

◆イギリスの精鋭がそろって登場

 2日、イギリスのピーターボローでは、同国フェザー級期待のふたりが、そろってマイナータイトルに挑む。

ジョーダン・ギル
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 ジョーダン・ギル(24歳/22戦22勝6KO)は、空位のWBAインターナショナルタイトル王座をかけてエマヌエル・ドミンゲス(メキシコ/25歳/24勝16KO7敗2分)と。ギルが返上した英連邦タイトルをリー・ウッド(30歳/20勝10KO1敗)とアブラハム・オセイ・ボンス(ガーナ/13勝11KO3敗1分)が争う。

 ギル、ウッドともあのナジーム・ハメドを育てた故ブレンダン・イングルの息子ドミニクの指導を受けただけに、アプローチはやや変則的。ともに右構え、左構えを使い分ける両刀使いだ。ただ、左右前後の動きを大きくとって、フォーム全体は正統派のギル、相手の正面から向き合ってしきりにフ
ェイントをかけて戦うウッドと、タイプはかなり異なる。世界チャンピオンばかりではなく、このあたりにも実力派がいるところにイギリスの層の厚さを感じさせる。

リチャード・リアクポーヘ
Getty Images

 同じカードにはヘビー級コンテンダーのディリアン・ホワイトがマネージメントするクルーザーの強打者リチャード・リアクポーヘ(イギリス/29歳/8戦8勝7KO)が国内ランク上位のトミー・マッカーシー(28歳/13勝6KO1敗)との大事な戦いを迎える。

 アメリカのライトヘビー級アンソニー・シムス・ジュニア(24歳/17戦17勝16KO)が初めて海を渡り、アルゼンチンのベテラン、マテオ・ダミアン・ベロン(29歳/28勝8KO21敗3分2無効試合)と初の10回戦。

カイス・アシュファク(右)
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ジョン・ドチャーティ
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 また、2015年ヨーロッパゲームス銅メダリストのカイス・アシュファク(イギリス/25歳/4戦4勝2KO=スーパーバンタム級)、2017年英連邦大会銅メダルのスーパーミドル級ジョン・ドチャーティ(イギリス/21歳/3戦3勝3KO)ら元トップアマも出場する。

 このカードはイギリスの国内ではDAZNとスカイ・スポーツで放映される。

◆パーカーのライバル、ファがアメリカへ

ジュニア・ファ
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 ニュージーランド国内のボクシング興行は低調ながら、タレントはなかなかそろっていて、いずれも国外にチャンスを求めたがっている。前WBO世界ヘビー級チャンピオンのジョセフ・パーカーはイギリスをベースにする方針だが、そのパーカーのライバル、ジュニア・ファ(29歳/16戦16勝9KO)はアメリカで活動を本格化しそうだ。2日、オハイオ州コロンバスでニューフェル・オタ(フランス/33歳/16勝9KO2敗)と対戦する。身長196cmで一時は120kg以上あったが、動きの切れを呼び出すために115kg前後に減量しているファが、どんな動きを見せるのだろうか。

 オハイオ州スーパーウェルター級タイトルマッチを軸にするこの日のカードには、ヘビー級の中堅ホープがこのほか3人も登場。ファと同じニュージーランドからヘミ・アイオ(28歳/12戦12勝8KO)、ドミニカ共和国からはジョージ・アリアス(27歳/12戦12勝7KO)、さらにステファン・ショー(アメリカ/26歳/10戦10勝7KO)。いずれもトップとは少し差はあるが、勢いをつける戦いに臨む。

◆ドイツでもヘビー級興行

 ヨーロッパ(EBU)ヘビー級チャンピオンのアジット・カバエル(ドイツ/26歳/18戦18勝13KO)が2日、自国マグデブルグで3度目の防衛戦を行う。2016年に一度、この伝統あるタイトルを獲得したあと、翌年、イギリスの難敵デレク・チゾラを破って再度、王座を認定されたカバエルが迎えるのは35歳のベテラン、アンドリー・ルデンコ(ウクライナ/32勝20KO3敗)。ことのほか粘り強いルデンコを元キックボクサーのカバエルがどういう形で打ち破るのか。

エリック・プフェイフェル(左)
Getty Images

 粗さは残るものの23連勝(16KO)を続けるヘビー級ホープトム・シュワルツも出場するが、もうひとり注目したいのは6回戦に登場するエリック・プフェイフェル(ドイツ/32歳/3戦3勝2KO)。ロシア生まれで、オリンピックにはドイツ代表としてロンドン、リオと連続出場した。32歳ながら、ヘビー級としては上り坂。今後の期待を膨らませるためにも、さらに強味を見せつけたい。

◆元ラグビースターも連勝を目指す

ウィルス・ミーハン(右)
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 1日、オーストラリアのビクトリア州フレミントンでは、ヘビー級6回戦に注目の新鋭が出場する。ウィルス・ミーハン(23歳/7戦7勝6KO)だ。身長195cmの巨体を活かしたパワフルなファイトが売り物。期待を集める原動力は、父親が世界ヘビー級王座にも挑んだこともあるカリ・ミーハンであること。それ以上に人々の耳目を集めるのは、オーストラリアの国技とも言えるラグビーで一度はトップリーグに所属したスター候補だったからだ。やはりプロボクサーの肩書きを持ち、日本のパナソニック・ワイルドナイツでプレーしたこともあるソニー・ビル・ウィリアムス(ニュージーランド)はラグビー時代のチームメイトで、今でも親交があるという。当時は140kg以上あった体を120kg台に絞り込み、奮闘しているが、話題先行から抜け出すのはこれからだ。

◆オーストラリアにさらに新星登場

 1日、シドニー市内のイヴリーでIBFユース・バンタム級タイトルマッチに出場するブロック・ジャービス(オーストラリア/21歳/15戦15勝14KO)は、今から目をつけておきたい新鋭だ。

 170cmのスリムな長身で、スピーディーかつバラエティに富んだレフトが素晴らしい。右をほとんど使わないまま、この左だけでKOを量産する。デビュー戦で判定にとどまったのを最後に、ここまで14連続KO中。アマチュアの実績はなく、18歳でプロ転向。それも最初はタイで、それからメキシコでも戦った雑草派でもある。

 今回の相手フィリップ・ルイス・クエルド(フィリピン/23最/11勝4KO5敗1分)を含め、まだ試されるような対戦者とは戦っていないジャービスだが、母国の3階級制覇のレジェンド、ジェフ・フェネックは「次世代のスーパースター」と絶賛している。

文◎宮崎正博

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