写真上=ジャーボンタ・デービス
(写真◎Getty Images)
★WBAスーパー世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦
ジャーボンタ・デービス(アメリカ)対ウーゴ・ルイス(メキシコ)
デービス:24歳/20戦20勝(19KO)
ルイス:32歳/43戦39勝(33KO)4敗
この一戦、本来、デービスが対戦するはずだったのはアブネル・マレスだった。好戦派のマレス相手なら、かなりの注目度だったが、マレスが網膜剥離に罹ったため、試合の10日前に対戦者がルイスに入れ替わった。当初はヒジの故障をリタイアの理由としていたマレスだが、網膜剥離とあってはカード変更も致し方ない。
相手がどうなろうが、今のデービスの戦いは決して見逃せない。極上の才能を秘めるこのサウスポーときたら、すべてのパンチがカウンターとなり、ここぞのタイミングでインサイドに切れ込んで打ち込む多彩なブローも身震いするほどの切れ味ときている。
対戦するルイスは元WBAバンタム級(暫定)、WBCスーパーバンタム級のチャンピオン。亀田興毅、長谷川穂積と日本で対戦しており、なじみの選手。大柄のボクサーパンチャーで、ツボにはまればきわめて危険な一撃を打ち込んでくる。1月19日に試合をしたばかりだが、突然舞い込んだチャンスを快く受諾した。評価がレベル以上に達しない選手は、こういう形で浮上を目指すしかないのだ。
ルイスの強打はあっても、デービスの充実度は素晴らし過ぎる。序盤のKO決着とみるのがもっとも順当だ。
なお、会場のディグニティ・スポーツヘルス・パークは、元のスタブハブセンター。今年の初めから新しいネーミングライツが発効した。試合が行われるのはサッカースタジアムに併設される野天のテニスコートで、スタンドを増設すれば1万人以上の収容能力を持つ。ボクシングの新メッカにもなっている。
試合はショータイムによりアメリカ国内に放映される。
◆ルビンの高性能は再整備されているか
PBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)がプロモーションするカードだけに、前座には有望株が一斉登場するが、もっとも期待したいのはスーパーウェルター級のエリクソン・ルビン(アメリカ/23歳/19勝14KO1敗)だ。スリムな長身パンチャーで、誰もがイチ押しホープとしていた1年半前、ジャメール・チャーロ(アメリカ)に痛烈なKO負けを喫し、以来、長らく沈黙を守ってきた。左右のスタンスを巧みに使い分け、鋭角的なパンチを打ち込んでくる。
対戦するイシュ・スミス(アメリカ/40歳/29勝12KO10敗)は20年近いキャリアを持つベテラン。老獪な試合運びに隠し込んだ小技が持ち味。ルビンがトップ戦線復活の手がかりとするためには、重量な相手になる。
★WBC世界スーパーライト級タイトルマッチ12回戦
ホセ・カルロス・ラミレス(アメリカ)対ホセ・セペダ(アメリカ)
ラミレス:26歳/23戦23勝(16KO)
セペダ:29歳/32戦30勝(25KO)1敗1NC
どこまでもアクティブなスタイルで人気のラミレスが、圧倒的な支持を受ける地元で防衛戦を行う。パウンドフォーパウンドの主役のひとり、テレンス・クロフォード(アメリカ)の相手候補として名前が挙がっているだけに、絶対に負けたくない一戦だ。なおかつ、しっかり強さもアピールしなければならない。
2度目の世界挑戦となるセペダは、テリー・フラナガン(イギリス)にわずか2回でストップされているが、それも4年前の話。最近は4連続KOと上り調子だ。中間距離で早い展開を作り、ラミレスのアタックをしのげればクロスした展開にも持ち込める。
★スーパーライト級10回戦
岡田博喜(角海老宝石)対レイムンド・ベルトラン(メキシコ)
岡田:29歳/19戦19勝(13KO)
ベルトラン:37歳/45戦35勝(21KO)8敗1分1NC
アメリカ進出第2戦となる岡田は、早くも難敵との対戦になる。ただし、トップを目指すのなら避けては通れぬ戦いだ。
ベルトランは重いパンチと、重厚なアタックを持ち味にするベテラン。前WBO世界ライト級チャンピオンでもある。37歳ながら、まだまだ底力がある。
ベルトランは前戦、ホセ・ペドラサ(プエルトリコ)が作る距離を打ち破れず、完敗を喫している。長身からの歯切れのいいパンチで勝負する岡田としては、やはりロングレンジで勝負したい。ベルトランにはいきなりの長距離砲もあるから、どのときも油断はできない。ただ、チャンスにきちんと追撃打をまとめられないと、アメリカでの評価は勝ち取れない。難しい舵取りだが、評価もともに勝利を奪い取る好ファイトを期待したい。
この試合はESPN+で全米にストリーミング中継される。
◆セルバニアも前座に出場
日本のカシミジムに所属するWBO世界フェザー級1位ゼネシス・カシミ・セルバニア(フィリピン/27歳/32勝15KO1敗)がフェザー級10回戦でカルロス・カストロ(アメリカ/24歳/21戦21勝9KO)とフェザー級10回戦で対戦する。2017年のWBOチャンピオン、オスカル・バルデス(メキシコ)挑戦で大善戦し、大いに株を上げたセルバニアは、順当に新鋭を退けてアピールしたい。
不敗のライト級ホープのふたり、サウル・ロドリゲス(アメリカ/25歳/22勝16KO1分)、ガブリエル・フローレス・ジュニア(アメリカ/18歳/11戦11勝5KO)らも登場する。
★WBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦
レイ・バルガス(メキシコ)対フランクリン・マンサニジャ(ベネズエラ)
バルガス:28歳/32戦32勝(22KO)
マンサニジャ:30歳/22戦18勝(17KO)4敗
ケガでブランクを作っていたバルガスが4度目の防衛戦に臨む。対戦するマンサニジャは昨年、強打のフリオ・セハ(メキシコ)を敵地で棄権に追い込んで脚光を浴びた強打者だ。とはいえ、速い動きでテンポを作り、ハイピッチに仕掛けるバルガスなら、それほどの難敵とは思えない。焦点はここぞで決めきれない難点をどう克服できるかにある。
ただ、バルガスが留守の間に、同王座には暫定王座が設けられ、日本の亀田和毅(協栄)が決定戦に勝って暫定タイトルをてにしている。ルールがきちんと適用されるなら、バルガスは亀田と対戦しなければならない。そういう意味でも日本のファンには見逃せない試合になる。当日は亀田も現場で観戦すると言うから、なおのことバルガスの出来は注目に値する。
この試合はDAZNで日本でもストリーミング中継される。
★WBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦
アルベルト・マチャド(プエルトリコ)対アンドリュー・カンシオ(アメリカ)
マチャド:28歳/21戦21勝(17KO)
カンシオ:30歳/25戦19勝(14KO)4敗2分
カリブのストライカー、マチャドの2度目の防衛戦。その高い素質を買われてきたマチャドはタイトルを獲得したラファエル・メンサー(ガーナ)戦こそ、拳を痛めて倒せなかったが、V1戦ではかつてのホープ、ユアンデール・エバンス(アメリカ)を痛快に初回KOで切り落とした。やはりその切れ味は評判どおりだ。実績的には中堅レベルのカンシオが対戦者だけに、その力のほどをじっくりと見定めたい。
◆ジョセフ・ディアスが再スタート
ジョセフ・ディアス(アメリカ/26歳/27勝14KO1敗)はWBC王者ゲリー・ラッセル・ジュニア(アメリカ)に善戦して評価を高めながら、すぐにチャンスを与えられたWBAタイトルマッチでウェイトオーバー。試合にはヘスス・マヌエル・ロハス(プエルトリコ)に勝ちながら、タイトルを手にできなかった。期待度は依然として高く、この日はチャールズ・ウエルタ(アメリカ)と対する。
このほか、ミドル級の元コンテンダーでシブい技巧が魅力のトレアノ・ジョンソン(バハマ/34歳/20勝14KO2敗)の名前もプログラムに入っている。
◆フランス期待のシソコ、8連勝なるか
リオ五輪ウェルター級銅メダリストスレイマン・シソコ(フランス/27歳/7戦7勝5KO)が9日、フランス・パリでフランス・スーパーウェルター級タイトルマッチ10回戦に登場する。対戦者はロメン・ガロファロ(フランス)だ。
シソコは力感あふれる攻撃で、リオ五輪でも注目された逸材。フランスの大手ファッションブランドが立ち上げたボクシング・プロモーション、リングスター・フランスにスカウトされて、プロ活動を開始した。このところ、対戦者の質が上がり、2試合続けてKOを逃しているシソコだが、今回はやや力の落ちる相手。本来のパワーを爆発させたい。
ところで、リングスター・フランスは、リオ五輪スーパーヘビー級金メダリスト、トニー・ヨカをメインキャストにスタートした。そのヨカに禁止薬物テストで陽性反応が出て1年間、ライセンスはサスペンドされた。その留守中を任されているのが、シソコというわけだ。ここは頑張りを見せないと、主役再登場の前に、大事な興行主は意欲を失ってしまうかもしれない。
◆ “暫定席王者” ガバロが日本人と対戦
不敗のバンタム級ハードヒッターレイマート・ガバロ(フィリピン/22歳/20戦20勝17KO)は9日、フィリピン・マニラの首都圏にあるパサイシティで日本人選手の中村優一と10回戦を行う。
ガバロは2017年、ハワイで豪快なTKO勝ちを収めて注目され、その後、アメリカで不敗のスティーブン・ヤング(アメリカ)を破り、WBA暫定王者になっている。ただし、世界を冠に戦った試合はこの1戦きり。現在はフィリピンで活動している。
そのガバロと対戦する中村は、日本国内ではJBC公認の試合に出場実績なし。中国を皮切りに東南アジアを転戦している。その間にタイ・バンタム級チャンピオンにもなっているが、ムエタイのスター、タッサーナ・ルアンポンには初回TKO負けしている。
同じカードにはライト級のロメロ・デュノ(フィリピン/23歳/19戦18勝14KO1敗)がクルディープ・ダンダ(インド/29歳/8戦7勝1KO1敗)と対戦する。
デュノは2年ぶりの故郷での試合となる。その強打を買われてアメリカに進出し、4連勝をマークしながら、KOはひとつだけ。地元に帰り、拳を再整備しての出直しファイトだ。
文◎宮崎正博
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