上写真=左から真部会長、森さん、袴田秀子さん、新田実行委員長
冤罪の可能性が極めて高い中、1966年に収監され、静岡地方裁判所の再審開始決定により、2014年に釈放された袴田巖さん。しかしその後、東京高等裁判所は、再審請求を棄却。依然、袴田さんは再収監の可能性を持ち、再審→無罪の道を閉ざされたまま──。
袴田さん、そして姉の秀子さんの、想像を絶する闘いを、漫画にして世界中に知ってほしい。JPBA(日本プロボクシング協会)の「袴田巌支援委員会」のプロジェクトにより、漫画『スプリット・デシジョン~袴田巌 無実の元プロボクサー~』が製作。2月15日からネット配信されることが23日、発表された。
「袴田さんの事件について、まだ知らない方々もたくさんいる。そんな方々、また子どもたちにもわかりやすく説明するにはどうしたらいいか。そう考えて、今回の漫画化がスタートしました」と川崎新田ジム会長の新田渉世・実行委員長が、きっかけを語る。「日本語のセリフを変えれば、全世界に伝えることができる」と同委員会の真部豊・マナベジム会長も熱い。
出席した姉の秀子さんも、「タイトルがいいですね」と表紙画をしげしげと眺める。ボクシングファンならご存知、「スプリット・デシジョン」とは、3人のジャッジが2-1に分かれて勝敗を決める判定のこと。これは、裁判官3名の合議の際、2対1の多数決によって、袴田さんが死刑判決を下されてしまった1審の、あまりに理不尽な決定に対する批判をこめたものだ。
タイトルを考え、このノンフィクションも描くのは森重水(もり・しげみ=30歳)さん。事件が発生した静岡県静岡市清水区出身で、三津山ジム所属のプロボクサーとして戦った人である。25歳で上京し、高齢者介護施設で働きながら、週2日、元日本スーパーフェザー級チャンピオン矢代義光さんが主宰する『矢代ボクシングフィットネスクラブ』(東京・三ノ輪)でトレーナーとして汗を流す。そうして、漫画家を目指している“卵”である。
「捜査がいかにずさんに行われたか、袴田さんがどういう人生を歩んできたか。それらを少しでもわかりやすく表現したい」と、ペンを走らせている。自身も取り調べの音声テープを聴き込み、膨大な資料を丁寧に読み込んでいる。あくまでも「事実に忠実に」、この理不尽な闘いを表す。
森さんが表す漫画は全48ページ。これを6回に分けて、2月15日から毎月15日に「日本プロボクシング協会 袴田巌支援委員会ホームページ」http://jpbox.jp/hakamada2.htmlに掲載。JPBAのFacebookやTwitterにリンクを貼って告知する。連載終了後は小冊子化や、劇中のセリフを英語訳し、これをYouTubeに乗せる計画もあるという。
長年、支援委員会のトップに立つ新田会長は、「われわれもリングで戦ってきたが、何回やられても立ち上がる秀子さんの姿に感銘している」と、戦い続ける心を語る。
いまもなお、再収監の可能性が残る袴田さんは、先週上京。後楽園ホールにも足を運んだそうで、「大変健康でございます」と、秀子さんは現況を語った。
「50年戦ってダメなら、100年でも頑張っていこうと思います。こうして支援して下さること、本当に感謝しています」と秀子さん。この決意と熱意、そしてこの闘いが、ひとりでも多くの方に届いてほしい。
取材_本間 暁 写真_山口裕朗
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