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2019-01-11

【海外ボクシング】ウィークエンド・プレビュー 2019最初の注目カードは?

写真上=元ヘビー級王者レノックス・ルイスを挟んで健闘を誓うウスカテギ(左)とプラント
写真◎Getty Images

1月13日/ロサンゼルス(アメリカ・カリフォルニア州)
ウスカテギの強打が炸裂か

★IBF世界スーパーミドル級タイトルマッチ12回戦
ホセ・ウスカテギ(ベネズエラ)対カレブ・プラント(アメリカ)

ディレル(左)との再戦を制して念願の世界王座に到達したウスカテギ
写真◎Getty Images

 アンドレ・ディレルとの因縁の再戦をワンサイドでものにして念願の世界タイトルを手に入れたウスカテギが、ロサンゼルスで初防衛戦を行う。相手は不敗のプラントだ。

 身長188cm、リーチ194cmとこのクラスでも恵まれた体を持つウスカテギはなんと言ってもハードパンチが自慢。その攻めには28勝23KO(2敗)という戦績以上の迫力がある。

 2017年、IBFの暫定王座をかけて戦ったディレルとの第1戦では、優勢のうちに戦いながら、ゴング後のパンチによって失格負け。危険な反則に激高したディレル陣営がベアナックルで襲いかかってきて、なんとも後味が悪かった。10ヵ月後にやはり同じ冠がかかったタイトル戦では、今度はウスカテギがディレルを棄権に追い込んでTKO勝ち。その後、正規チャンピオンに承認されて、今度の初防衛戦に臨む。

 ちょっと気になるのは、2013年以降、勝利はすべてKO・TKOだったのが、トップクラスと対戦し始めてから、“倒す力”がなんとなく鈍っていること。やや衰えが目立ったディレルも仕留め切れんかったし、暫定王座獲得後に挟んだノンタイトル戦でも、もろさのあるエセキエル・マデルナ(アルゼンチン)に判定まで持ち込まれている。

 一方のプラントも強打者として売り出されながら強打は湿りがち。最初の9戦で8KOをマークしながら、その後はめっきりと迫力を欠いている。ここまで17勝でKOは10。ここ最近は左手をだらりと下げた構えをフットワークに乗せて、着実にポイントをピックアップしている。拳の不調を訴えているが、その影響が多分にあるのかもしれない。それでも最近はアンドリュー・エルナンデス(アメリカ)、ロヘリオ・メディナ(メキシコ)とタフなところを一方的な判定で破っており、このチャンスになんとか結びつけた。

 プラントも身長185cmの長身。ウスカテギががさつに攻めてくれば、アウトボクシング仕切る可能性もあるが、結局はパワーパンチに直面してしまうのではないか。ウスカテギの豪快なKOに期待したい。

 なお、試合当日の解説席は往年のライト級名選手レイ・マンシーニに加え、2月にWBC王座決定戦に出場するアンソニー・ディレルも。アンドレの弟ディレルには因縁もあり、さらに2月の恣意でアブディ・イルディリム(トルコ)に勝てば、この日の勝者と1年以内に統一戦が行われる。リングサイドもスリリングになるのかも。

◆リゴンドーが13ヵ月ぶりの復活戦

帰ってくる至高のテクニシャン、リゴンドー
写真◎Getty Images

 同じカードの注目はギジェルモ・リゴンドー(キューバ)の復帰戦(8回戦)。ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に喫した完封負けから13ヵ月、格下のジョバンニ・デルガド(メキシコ)と対戦する。

 至高のテクニシャン、リゴンドーも38歳。PBCに拾われる形で試合の機会を得たが、この試合はあくまでもトライアウト的なもの。今後にトップ戦線での活動をバックアップされるのかどうか、その出来にかかっている。

元暫定王者とのテストマッチに挑む無敗のホープ、フィゲロア
写真◎Getty Images

 同じカードには、フェザー級期待のブランドン・フィゲロア(アメリカ)が出場する。17連勝不敗12KOの勢いのまま対戦するのは、元WBA暫定王者モイセス・フローレス(メキシコ)。兄オマールを追って世界チャンピオンになれるかどうか、大事なテストマッチになる。

 このほか、エジプト生まれのライトヘビー級アーメド・エルビアリ、メキシコのリオ五輪代表で7連続KO勝ちのリンデルフォ・デルガド(スーパライト級)のカードも用意されている。

メイウェザー2世、ヘニーに最終テスト

1月11日/シュリーブポート(アメリカ・ルイジアナ州)
メイウェザー2世ヘニーに最終テスト

★ライト級10回戦
デビン・ヘニー(アメリカ)対ゾリサニ・ヌゴンベニ(南アフリカ)

20歳のホープ、ヘニーは無敗の南アフリカ人と対戦
写真◎Getty Images

 新年だけに “新しい力” がカードの主役になった。ヘニーは所属するメイウェザープロモーションのトップ、フロイド・メイウェザー・ジュニアの再来とも呼ばれる逸材だ。ボスの全盛期のように、軽やかなステップを踏み、ここぞで鋭いパンチを打ち込む。まだ個々の局面で対応のばらつきは見られるが、能力的な評判どおりなのは間違いない。

 まだ20歳の若さながら、ヘニーは自信満々だ。「プロスペクトと呼ばれるのは今回が最後にしたい。世界のコンテンダーと呼んでほしい」。この試合に対する意欲も相当だ。

 ヌゴンベニはここまで28戦(全勝13KO)を戦っているが、地味なマッチメイクを重ねており、戦力的には「?」の部分も多い。ヘニーがその艶やかな技巧で圧倒できれば、確かにそのキャリアは次の段階に入っていくことになる。20戦全勝13KOの若者の可能性を実感したい。

◆注目の不敗対決も

 前座カードで光るのはフェザー級8回戦。ルーベン・ビリャ(アメリカ)とルーベン・セルベラ(コロンビア)の不敗対決だ。

 サウスポーのビリャはここまで14連勝(6KO)。彼の戦歴で光るのは、なんと言ってもアマチュア時代。リオ五輪銀メダリストのシャクール・スティーブンソン(アメリカ)のシニア昇格第1戦で黒星をつけている。さらに注目のスーパーフェザー級、ライアン・ガルシア(アメリカ)を全米トーナメントで2度も破っている。プロ転向後は決め手になるパンチが見当たらないのがネック。今回の相手、21歳のセルベラは11戦10勝9KO1NCの強打者。勝ち残ったほうがより大きな注目を集めるようになる。

 ヘビー級のフランク・サンチェス・ファウレ(キューバ)も楽しみだ。とても切れ味鋭いボクシングを見せる。身長193cmは現代ヘビー級では小柄だが、ここはじっくりとキャリアを重ねたい。また6回戦に出場の6戦6KO勝ちのマイキー・ダールマン(アメリカ=ミドル級)の破壊力はすでに注目を集めている。未知数のホープとしてチェックしたい。

 このカードは全米国内でShowtimeを通して放映される。

まだまだあるぞ! 注目カード
ヌルスルタノフ、マイダナ弟・・・

◆カザフスタンの新鮮力ヌルスルタノフ

元トップアマのヌルスルタノフにも注目
写真◎Getty Images

 同じ金曜日、アメリカ・カリフォルニア州のサンタイネスでミドル級8回戦に出場するメリリム・ヌルスルタノフ(カザフスタン)にも目をやってほしい。柔軟な体を利した、とてもスタイリッシュなボクシングを見せる。これに爆発力が加われば、トップ戦線突入の可能性も十分にある。

 2010年アジア・ユーース選手権のチャンピオンで、その後もアマチュアで長く活動した。セミプロリーグWSBで12勝1敗の好成績を残し、アメリカでプロ入りした。

 ヌルスルタノフの相手は13勝9KO1敗のメキシカンラモン・アギナガ。勝てば不敗の連勝は10の大台に乗る。

◆弟マイダナが着実に実績を重ねる

左フックに爆発力を秘めるマイダナ弟(左)
写真◎Getty Images

 乱打戦一辺倒の豪打者として一時代を築いたマルコス・マイダナの弟ファビアン・マイダナ(アルゼンチン=スーパーフェザー級)が、11ヵ月ぶりに地元のリングに立つ。アメリカでジャスティン・サビ(ベニン)、アンドレイ・キリモフ(ロシア)をストップに追いやり、注目を集めた。そして今回は兄がプロモートする12日、アルゼンチンのマルデルプラタのリングでハイデル・パーラ(ベネズエラ)と対戦する。

 マイダナは荒くれファイトを得意とした兄と違ってテクニカルなボクサーパンチャー。とりわけ左フックには抜群の破壊力があり、16連勝12KOをマークしている。かつて日本で内山高志と戦い、ボディブロー一発で沈んだパーラはダルレイス・ペレス(コロンビア)にも不覚を取ったが、その後は無傷。ひとつのノーコンテストを挟んで9勝9KOだ。おもしろい戦いになりそうだ。

 ところで弟を呼び戻したマルコスだが、自らがカムバックする可能性をほのめかしている。35歳の本気度はどのくらいなのだろうか。

 この日のカードではIBFスーパーライト級元チャンピオンセサール・クエンカ(アルゼンチン)が2年ぶりにカムバックする。リングを駆けずり回るような試合っぷりで一度は世界の頂点に立ったクエンカ。48勝2KO(2敗2無効試合)とある意味、驚異の戦績を作ったフットワークは健在なのだろうか。
 また。リオ五輪代表のバンタム級フェルナンド・ダニエル・マルチネス(アルゼンチン)も出場する。

文◎宮崎正博

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