アメリカンフットボールの「Xリーグ」は、6月10日、富士通スタジアム川崎で、春季東日本社会人選手権「パールボウル」トーナメントの準決勝2試合を行った。第1試合のオービックシーガルズ―LIXILディアーズは、オービックが23-10でLIXILを破って、決勝(6月28日、東京ドーム)に進出した。
オービックは第1クオーター、DBブロンソン・ビーティーのインターセプトで得たチャンスからK星野貴俊が29ヤードのフィールドゴールを決めて先制。第2クオーター4分にはWR池井勇輝が77ヤードのパントリターンTDで追加点を挙げた。さらに9分、オービックはLIXILのパントをブロックすると、DLケビン・ジャクソンがボールを奪ってリターンTD。11分にはQBスカイラー・ハワードからWR水野太郎に46ヤードのTDパスが成功し、23-0とリードして後半へ折り返した。LIXILはエースQB加藤翔平が、第2クオーター終盤、サックされた際に足を負傷しそのまま後半を欠場。変わった大和田昌太郎もオービックの激しいパスラッシュに苦しんで、第4クオーターにパスTD1本を返したにとどまった。
前戦では、富士通ディフェンス相手に序盤から得点を重ねたオービックのオフェンスが、この日は苦しんだ。ブロンソンのインターセプトでエンドゾーン11ヤード前まで攻め込みながら3&アウトでFGにとどまった。その後も3回のオフェンスシリーズはいずれもパントに終わった。流れを変えたのがキッキングチームだった。第2クオーター4分、自陣23ヤードでボールをキャッチした池井がフィールドを横切るように左へ走るとサイドライン沿いをエンドゾーンまで走り切った。さらに9分、バイロン・ビーティー・ジュニア(BJ)がLIXILのパントに好反応しブロックする。ケビン・ジャクソン(KJ)が転がったボールを逃さず奪うとそのままエンドゾーンに走り込んだ。
ビッグゲームでの経験豊富なQBスカイラーがこの流れを切らなかった。オービック残り1分4秒からのオフェンスで、スクランブルからのランでファーストダウンを重ねたスカイラーは、右サイドを縦に走ったWR水野にロングパスを投げ込んだ。LIXILのDBにタイトにダブルカバーされていた水野だが球際の強さを発揮。いったんバウンドしたボールをしっかり確保してTDとした。
前半、フットボールのオフェンス・ディフェンスでは互角だったLIXILだが、後半残り3分から2TDを奪われた。気がついたら3ポゼッション差にされていたというところだろう。
4連覇時代のオービックの強さの理由の一つは、スペシャルチームにあった。通常スペシャルチームには若手や控え選手を起用するケースが多い。これは米国のNFLやカレッジでも同様だ。しかし当時のオービックは、WR清水謙、木下典明などのリターナーだけでなく、LB古庄直樹、塚田昌克、DLのKJ、BJ、RB古谷拓也など、QB以外のオフェンス・ディフェンスのオールスターが、リターンにもカバーにも出場していた。経験豊富な彼らの瞬間的な判断で、しばしばビッグプレーを決めて、流れを引き寄せていた、いわば「十八番」のプレーだった。
この日も同じだ。池井のTDでは、木下典明がLIXILの122キロ服部をブロック、KJは2人の選手を串刺しにするようにブロックした。そして、池井の前方をブロッカーとして走っていたのがBJだった。
KJのTDでは、BJが飛び込みながら、パントを右手で叩いた。BJは「その前のパントでもう少しで届く(ブロックできる)ところだった。蹴る方向を考えて左手ではなく右手を伸ばしたら、思った通りに決まった」という。
前半で、一気にモメンタムを引き寄せたのに対し、後半は2試合連続の無得点。さらにフォルススタート、ホールディングなど反則が続き、74ヤードも罰退させられるなど、オフェンスを中心に、まだまだ課題も多い。古庄ヘッドコーチも「スロースタートということを意識して、そこを改善してきたが、今度は後半が問題になった」と認める。春の大団円、オービックはどのようなフットボールを見せるのだろうか。【小座野容斉】
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