アメリカンフットボールの「Xリーグ」は、5月20日、富士通スタジアム川崎で、春季東日本社会人選手権「パールボウル」トーナメントの1次リーグ戦2試合を行った。第2試合のノジマ相模原ライズ―アサヒビールシルバースターは、ノジマ相模原が30-10でアサヒビールに快勝、Dブロックを2勝で勝ち上がり、準決勝(6月10日、富士通スタジアム川崎)に進出した。準決勝ではIBMビッグブルーと対戦する。
ノジマ相模原が攻守ともにアサヒビールを上回った。ノジマ相模原は第1クオーター4分、K鈴木健太がフィールドゴール(FG)で先制。11分にはRB前島利勇が69ヤードのパントリターンタッチダウン(TD)で追加点を挙げた。アサヒビールは第2クオーター1分に飯島良紀の41ヤードFGで反撃したが、ノジマは前半最後のプレーで鈴木が35ヤードFGを決め、13-3で後半へ折り返した。ノジマ相模原は第3クオーター4分にRB細野陽平が中央を突いてTDラン、さらに鈴木のFGと新米国人QBジミー・ラフレアのパスTDでアサヒビールを突き放した。ノジマ相模原のディフェンスに封じ込まれたアサヒビールオフェンスは第4クオーター終盤に3人目のQB鈴木貴史のTDパスで1TDを返すのがやっとだった。
シルバースターオフェンスは、ランを封じられた上に、QBに強いプレッシャーを受け続けた。ゲーム終盤まで8回のオフェンスシリーズで1インターセプト、6パントと抑え込まれた。対照的にライズは安定したオフェンスを展開、10回のドライブでパントはわずか1回だけだった。細野陽平を中心にRB陣のランが安定したのに加え、QB藤本亮のパスがコンスタントに決まったことが大きかった。Xリーグでは2試合目の先発となった藤本はパス14/17、149ヤードで成功率は82%。試合中盤からは10回連続でパスを成功させた。
前半残り35秒で回ってきたオフェンスでは、4回連続でサイドライン際のレシーバーにパスを決めて、時計を止めながら46ヤードを進み、鈴木のFGに結び付けた。特に残り8秒からTE伊津野に決めた9ヤードのパスが大きかった。ボールを18ヤードまで進めて、きっちり4秒を残した。このパスが失敗していれば44ヤードのFGトライとなり、2年目のK鈴木にはプレッシャーがかかったに違いない。
パスのスタッツには表れない藤本の良さはクイックリリースだ。藤本は「なるべく自分がボールを持つ時間を少なくしようという意識に変わってきた。空いている手前のレシーバーから投げて行くこと。ライズにはレベルの高いプレーヤーが多いので、彼らに任せる」という。ある意味の黒子意識のなせる技だ。結果、シルバースターのオフェンスが7回のロスタックル・QBサックを喫したのに対し、ライズは被サック1回のみだった。
藤本は日本大学出身、須永恭通HCが日大でコーチをしていた時代の教え子だ。1年先輩に平本恵也(富士通)がいたために、大学時代の先発経験は4年生の1年だけ。ライズに入った時には、木下雅斗、小島崇嘉という、パス・ラン共にXリーグでも有数のQBがいた。その後、U19、大学と2世代の日本代表経験を持つ大型パサー荒木裕一朗(現オービック)が加わり、さらに米国からベンジャミン・アンダーソン(現パナソニック)、極めつけとして、ミシガン大のエースだったデビン・ガードナーが入団してきた。藤本は彼らの陰に位置付けられてきた。
どれほど努力しても、次から次に優れた能力のQBがやってくる状況。だが「いつかチャンスはある。そう思ってスターターと変わらない準備をしてきた」という。腐らなかった理由は「根本的にフットボールが好きなんでしょうね」と笑う。
この試合でも、ガードナーの後継QB、ラフレアが初出場した。ラフレアは前半に登場した際は、ロングパスを狙いすぎてインターセプトを喫するなど良いところがなかった。第4クオーターに再登場した際は、藤本のクオーターバッキングを真似るように速いテンポでパスを決めてTDを奪った。ガードナーとはほぼコミュニケーションがなかったという藤本だが「ジミーとはよく話をしている。お互いに補い合えるところがある」という。
ノジマ相模原は、過去ボウルゲーム出場がない。東京ドームでのプレーは秋季公式戦だけだ。「次のIBM戦も必ず勝って、ドームに行きます」。藤本の言葉は静かだが力強かった。【小座野容斉】
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