アメリカンフットボールの立命館大学と早稲田大学の定期戦は5月20日に東京・調布市のアミノバイタルフィールドで行われ、立命館大学が20-3で早稲田大学に勝利した。早大が「甲子園の前哨戦」と述べたように、両チームとも秋のシーズンに向けて重要な位置付けとして臨んだ一戦は、立命大が地力の差を見せつけた結果となった。厳しい試合展開のなかで、早大を激しく鼓舞し、引っ張るオフェンスリーダーの姿があった。
【立命館大学vs早稲田大学】早稲田攻撃を牽引した、オフェンスリーダー元山伊織 写真:北川直樹
威勢の良い関西弁の檄が、試合前のワセダ攻撃陣のハドルに響いた。今季、オフェンスリーダーを務めるRB#7元山伊織だ。元山は大阪の府立豊中高校の出身。関西人の彼は、関西のチームとの対戦には、ことさら熱くなる。
序盤、両チーム共ファーストシリーズが得点につながらず、膠着するかに思われた。そんな中、先に早大の攻撃にリズムを作ったのが、元山のランプレーだった。自陣深くから、65ヤードのビッグゲインで敵陣に入ると、QB#1柴崎からWR#85小貫へのパス、柴崎自らのランでゴール前に迫る。タッチダウン(TD)には繋がらなかったが、K#30片岡のキックでフィールドゴール(FG)の3点を先制した。
早大がこの試合で得点することができたのは第1クオーター(Q)のこのFGのみで、強靭なフィジカルを誇る立命大のラン攻撃に苦しむ展開となった。しかし、元山は13回のランで102ヤードのラッシングを記録。早大の攻撃総獲得ヤードの6割を一人で稼いだ。
また、主将のDL#97斉川が立命のFGを2本ブロックするなど、随所で意地を見せ、スタッツの獲得ヤード数が倍近くに開いたほどの差は、感じさせないゲームだった。
元山はこの試合を「際(きわ)の勝負でやられてしまい、前に倒れれば取れるはずの、あと数ヤードがゲインできなかった。これまで早慶戦、中央大と、今日の立命を見据えて準備してきたが、想像以上に力勝負で負けしてしまった。気持ちの部分でも押されてしまっていたのが、一番の反省」と振り返った。
元山は3年次からRBとしてスターターを務めているが、今年はオフェンスリーダーとして、チーム作りの根幹も担う。「これまでの試合でも、自分として及第点のプレーはあった。昨年までの経験から、良い意味で緊張感なく試合に臨めている。しかし、リーダーとして自分がチームを引っ張り、盛り上げるという部分では、まだまだ。もっともっと、自他共に厳しくやらなければならない」と、課題を挙げる。
元山が求めるのは「観客を楽しませつつ、自分たちも楽しむオフェンスを作る」ことだ。厳しい試合の中でも常にゲームを楽しみ、ビッグプレーで観客を沸かすことが出来れば、チームの勝利にもおのずと近づくという考えだ。
また、プレーヤー個人として、意識しているライバルがいる。関西学院大学のRB#34山口祐介だ。
元山には、豊中高校3年生時の春季関西大会で、関学高に敗れた苦い経験がある。試合は3Qまで1点差でリードしていたが、4Qに逆転され、14-21で惜敗した。関学に対するライバル心は人一倍強く、関学大で同ポジションのエースを務め、学生界で注目されている山口のことは、当然意識している。
「関学の山口君は、下級生のときから出ていて体が強く、走りに無駄がない。どちらかというと自分と近いタイプだが、現状では彼の能力の方が優れている。しかし夏を乗り越えて、秋には絶対に自分が学生ナンバー1のRBになる」という。
今年最終学年となった元山の目標は、はっきりと決まっている。年間最優秀選手賞、チャックミルズ杯の受賞だ。それはすなわち、チームが関東の代表として甲子園ボウルに出場し、優勝することも意味する。そのために、プレーヤーとして自ら活躍するだけではなく、自身が中心となって「勝てるオフェンスユニット」を作っていかなければならないことを、強く自覚している。
【文/写真:北川直樹】
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