2017年12月9日、アメリカ・ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われたWBO世界スーパーフェザー級タイトルマッチは、元五輪金メダリストの肩書きはもとより、誰もが認め、対戦を心待ちにしていた究極のテクニシャン対決だった。
ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)vs.ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)
「スパーリングでもいいから見たい!」とファンが何年も前から待ち望んできた顔合わせは、しかし、予想外のワンサイドに終わってしまった。
6ラウンド終了でリゴンドーが棄権し、ロマチェンコが名実ともにトップ・オブ・ザ・トップに君臨することに──。
試合レポートは、現地ニューヨークからライターの杉浦大介さんが切れ味鋭く。
さらに好評連載『ボクシングスクエア』で増田茂さんが“イーグルアイ”で多角的に分析。
そして編集部では、OB&現役選手6名を“識者”に選出し、この試合について、彼らなりの視点を4ページにわたって披露していただいた。ここでは、各人のワンセンテンスだけ紹介。
内山高志
TAKASHI UCHIYAMA
元WBA世界スーパーフェザー級スーパーチャンピオン
「何が有効かを嗅ぎ取ったロマチェンコの集中力はすごい」
川島郭志
HIROSHI KAWASHIMA
元WBC世界スーパーフライ級チャンピオン/現・川島ジム会長
「精神的に追い詰め続ける。思いどおりに機能したロマチェンコの手法」
伊藤雅雪[伴流]
MASAYUKI ITO
WBO世界スーパーフェザー級1位
「ロマチェンコは、相手を立体的に支配する」
※ロマチェンコへの指名挑戦者となった伊藤は、本来ありえない技術について言及。
目を輝かせながら、身振り手振りで説明してくれました。
田中恒成[畑中]
KOSEI TANAKA
元WBO世界ミニマム級&ライトフライ級チャンピオン
「リゴンドーがプライドを守りにいって、つまらんくなってしまった」
※一時期はロマチェンコのサイドへの動きを研究し、取り入れていた田中。しかし、ここではリゴンドーの“心”に食い込みズバリ。両目眼窩低骨折のハンディにも耐え抜き、相手を逆転KOに下した田中だからこその“プロフェッショナル”が垣間見える。
川内将嗣
MASATSUGU KAWACHI
2007年シカゴ世界選手権ライトウェルター級銅メダリスト
2008年北京オリンピック日本代表
「お互いがピークのときに見たかった」
※かつて、「リゴンドーは神」と心酔していた川内。しかし、この対戦には複雑な思いがあった。ロマチェンコとは同時代を戦い抜いた同士だから。
ロマチェンコのアマチュア唯一の黒星の目撃者は、やはりお互いの凄さを冷静に語ってくれた。
成松大介[自衛隊体育学校]
DAISUKE NARIMATSU
2016年リオデジャネイロ五輪ライト級代表
「遊び心がロマチェンコの強み」
※川内が「リゴンドー派」代表なら、成松は「ロマチェンコ派」代表。
“ハイテク”と異名をとるロマチェンコを、「もはやAI」と大絶賛。
◆本誌未掲載 特別編◆
荒川仁人[ワタナベ]
NIHITO ARAKAWA
WBOアジア・パシフィック・ライト級チャンピオン
正月にロマチェンコVSリゴンドー視聴しました。
感想としましては、身体のサイズは確かに違いましたが、
1ラウンドから、リゴンドーがフットワークを使わなかったことが、不思議でしたね。
使えなかったのか使わなかったのかは、わからなかったですが、ひとつの要因として、
ロマチェンコがあれだけフットワーク&ボディーワークを使うため、
見すぎてしまった可能性は一つは有るのかなと思います。
あとは、左を狙い過ぎていたような印象も受けました。
しかし、ロマチェンコは、動きがまったく落ちないですね。
むしろ、自由な発想と感覚で戦っているようにも感じました!
戦っている時に、何を感じ、何処に意識を持っていけば、あんな動きができるんですかね。
凄いの一言です!
※取材依頼当初、この試合を未見だった荒川。
「尾川(堅一)くんの試合を見ることを優先してしまったので」というのがその理由だったが、
本誌締切後に視聴して、わざわざLINEで感想を送ってきてくれました。
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