
文&写真/本間 暁
2017年12月31日、東京・大田区総合体育館。
トリプル世界タイトルマッチが行われた同会場には、いつもどおり、元&現役世界チャンピオンをはじめ、錚々たるメンバーがリングサイドを賑わせていた。
ファンは彼らに近づきたい。サインをもらったり、写真を一緒に撮ったりしたい。
世界戦会場に駆けつける、もうひとつのファンの“楽しみ”だ。
チャンピオンたちが観戦するゾーンは、当然のようにアリーナ・レベル。その付近に席を確保していた人はラッキーだが、若者を中心としたファンの多くはスタンド観戦。たくさん試合観戦したいから、1回1回のチケット代を抑えて、という人もたくさんいるんだろうと思う。自分も学生時代そうだったから。
「安いチケットを購入するファンこそ大切に」──というのはスポーツ界の格言で、リピーターを大事にしようというもの。後楽園ホールの年間シート購入者や、毎度高額チケットを買えるような別世界の方々は“別格”として、日頃の興行を見ていて、スタンド席がガラガラ、安価チケットが売れないという状況こそが、日本ボクシング界の現状を如実に表しているのではなかろうか。
世界タイトルマッチが開催される会場では、チケット・チェックがあるため、スタンド購入者はアリーナへは降りられない。そこで彼らは考える。
ロビーにパーテーションとして設置された柵がある。ここで勝負をかける。
チャンピオンたちが“向こう側”を通るのを待つのである。
たまたま私が居合わせたのは、元WBA世界スーパーフェザー級チャンピオン内山高志さんと、現WBA&WBC世界ウェルター級統一チャンピオン、キース・サーマン(アメリカ)の登場。


内山さんは、2016年まで6年連続大晦日興行の“大トリ”を務めてきただけに、ファンにとって「内山の出ない大晦日」は、なんともいえない違和感がある様子。だからこそ、その姿を見たときの歓待、熱狂ぶりは凄まじかった。最初から待っていた人たちに加え、あっという間にものすごい人だかりができる。
イヤな顔ひとつせず、マジックを走らせ、ファンの言葉に耳を傾け、写真に収まる。
収拾がつかないため、「すみません! あと1人で!」と佐々木修平トレーナーが仕方なく声をかけ、内山さんも立ち去ろうとする。が、「内山さん!」と背中に声が届くと、条件反射のように、またくるりと戻って対応する──本当に、なんと人のできたチャンピオンなんだろうと、毎度感服することしきり。
そしてサーマン。親日家として知られ、もう何度も来日している彼も、世界的なスーパースターであるにもかかわらず、まったく悪びれる様子がない。終始ニコニコしながら、内山さんと同じようにファン対応を続ける。
彼は意外にもスタンド観戦だったが、ひっきりなしにファンが席を訪れていた。「くれぐれも観戦の邪魔をしてくれるなよ」なんて、内心ヒヤヒヤしながらも、それでもサーマンを知るファンがこんなにたくさんいるんだ、って嬉しくなったものである。


たかがサイン、写真。されど──。
以前、サインにまつわる話は、私自身の少年時代の経験(プロ野球選手ふたりの対照的な対応)を『I THINK』というコーナーで書いた。30年以上前の話だが、いまだにくっきりとそのときの映像がよみがえる。神対応、そうでないもの、どちらも……。
だからできれば、ぜひボクサーが子どもたちと触れ合える場をつくりたいなぁと思う。
ボクサーってやっぱり、誰がどう見たってカッコいいから。
自分にとって、具志堅用高、浜田剛史や大橋秀行、高橋ナオトがそうであったように、
いまの子どもたちにとっても、ボクサーがヒーローであってほしいから
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