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2017-12-03

SPECIAL DREAM TALK 新時代築く才能がついに邂逅 井上尚弥 × 田中恒成 Vol.4<最終章> Naoya Inoue vs. Kosei Tanaka

現在発売中の『ボクシング・マガジン12月号』で5ページにわたって掲載した「WBO世界スーパーフライ級チャンピオン井上尚弥(大橋)×WBO世界ライトフライ級チャンピオン(※当時)田中恒成(畑中)」のスペシャルトーク。3時間におよぶ盛り上がりをみせた対談を、そのページ数ではとうてい載せきれず、当Webサイトで続きのVol.2、Vol.3を掲載してきた。そして今回のVol.4<最終章>──。
 10月にパパとなった井上尚弥のプライベート話から、ともに手こずってしまったタイ人チャレンジャーとの試合、そして、それぞれのボクシングの「作り方」……。
 本誌、Webと長きにわたってきたこの4作を、これからもぜひ繰り返し読み返していってほしい。

構成/本間 暁  写真/高塩 隆
Structured by Akira Homma Photos by Takashi Takashio

赤ちゃん

──赤ちゃん(※10月5日、井上尚弥に第一子の長男が誕生)かわいいですか?
尚弥 めっちゃかわいいですね!
──夜泣きとかどうですか?
尚弥 ヤバいっすよ(苦笑)。奥さん、くまができてますもん。
恒成 尚弥さんと一緒ですね(笑)<と、左目の下をジーっと見つめる>
尚弥 でしょー(笑)。
一同爆笑
尚弥 土曜日は泊まりに行くんですよ。日曜休みだから。でも、「寝てていいからねー」って言われるんですけど、だいたい0時ぐらいから2時間起きに泣くんですよ。で4時ぐらいに、「はー、勘弁してよ」って呟かれると、寝てられなくて(笑)。「あー、オレ抱っこするよ!」って(笑)。
一同爆笑
尚弥 沐浴も怖いですね。背中とか腰も据わってなくてグニャグニャだから。
恒成 ああー。オレ、小6くらいのときに妹生まれたからわかります。
──恒成選手が育てたようなもんですね。
恒成 はい。オレが育てました(笑)。きっとオレよりおっきくなります。

ナメてないつもりでもナメてしまってる

尚弥と拓真。攻守入れ替わり、延々とカウンターを合わせる練習を繰り返す
写真/本間 暁

──尚弥選手はこの前、ノニト・ドネアのカウンターじゃないですが、右を打って、それをかわして、左フックのカウンターっていう練習を拓真選手と交代でずっと繰り返してましたよね。ああいうことも昔からやってますよね。
尚弥 そうですね。条件マスは延々、10ラウンドくらいやります。
恒成 やっぱり、そういうのっていいですね。同じ時間に練習始めて、ずっと一緒に練習して、行動も一緒。他人だとなかなか難しい。頼める限度もあるし、気を遣う部分もありますから。
──やっぱり、一緒に練習したほうがいいですね。
尚弥 そうですね!
恒成 ……。あ、オレですか! 兄弟の話かと思った(笑)。
──次の企画はじゃあ、スパーリングでいきましょう!
尚弥 はい!
恒成 もう時間ですか? いや、オレ、なんなら明日までもいっていいくらいですから(笑)。尚弥さんは時間大丈夫ですか?
尚弥 うん、全然大丈夫だよ!
──それではもう少し続けましょう!(笑)。恒成選手はもう練習始めてるんですよね。
恒成 はい。軽く一所懸命に(笑)。

9月13日、大阪のリングに初登場した田中恒成は、格下と見られていたパランポン・CPフレッシュマートに大苦戦。初回にダウンを奪われ、両目眼窩低骨折にも見舞われて大ピンチとなったが、徐々にボディブローでペースを手繰り寄せると、9回に右ストレートで倒し、最後は連打でストップした
写真/石井愛子

──この前の恒成選手の試合、見ましたか?
尚弥 見ました。見ましたよー(笑)。
恒成 見てくださってありがとうございます、って言いたい試合じゃないんですけど……。
尚弥 正直、田口(良一、WBA世界ライトフライ級チャンピオン=ワタナベ)さんとの統一戦を見据えての調整試合かと思ったら、あれ? 意外と強えーじゃんみたいな感じだったでしょ?
恒成 ナメとらんつもりでナメてました。
尚弥 そうでしょ。絶対それあるなと思った。気が緩んでないつもりでも、意外とどこかで気が緩んでるし。そうしたとき、相手が自分の想像を超えてきたときに対応しきれなくなるときってあるし。
恒成 試合始まってすぐにダウンして、こんな試合してる……ってなって、気持ちでパフォーマンスがどんどん落ちました。理想が高かったので。
──尚弥選手はそういう試合ってありましたか?
尚弥 ないです!……ああ、ペッチのときはナメくさってました(笑)。
恒成 もう、ペッチっていう言い方自体がナメてますよね(笑)。
一同爆笑
尚弥 それでわかるでしょ!(笑) 。まあ、でも名前だから。
恒成 たしかにペッチバンボーンは長いですから、そこで切るしか(笑)。
尚弥 でしょ。だからペッチ(笑)。普通に腹で倒せるべ、みたいに思ってたら、ああいうタイ人てタイトルかかると頑張るから。
恒成 タイ人は変わりますよね。
尚弥 いざやったら、打ってこい! みたいなことまでしてきた(笑)。いいから倒れてくれよ! みたいな(笑)。
一同爆笑

2016年9月、地元・神奈川県座間市のリングに2度目の登場となった井上尚弥は、やはり格下と目されていたペッチバンボーン・ゴーキャットジム(タイ)を攻めあぐねた。負傷がちな右拳の不安以上に、オーバーワークによる腰痛の影響がひどかった。10ラウンドにきっちりとKOで仕留めてみせたのはさすが!
写真/馬場高志

尚弥 拳は打てないほどじゃなかったけど、腰は本当に最悪。イスから立つのも痛くて。
恒成 アドレナリン出とってそれだったらけっこうですね。
尚弥 そう。アドレナリン出ててなんとか。試合の後、フジテレビ行って、控え室で座って、立とうと思っても立てなくて、立たせてもらって……。疲労が蓄積されてて、筋肉がガッチガチに固まっちゃてて。やれることなんでもやって。針とか。毎日風呂に入ってほぐしても全然ダメで……。
──それで、立って、動いて、打って、よけてって考えられないですけどね。
尚弥 自分、試合であんなに集中力切らしたの初めてですもん。腰痛いのもあって、ロープ際に下がって、よけ切ったと思ったらまだ来ててもらったりとか。
恒成 どのシーンかわかります。
一同 (笑)
──さっき尚弥選手が言ったように、ミリ単位の戦いの中で、みんなどこかしらケガしたり何かを抱えたりしながら、そういう作業をできるっていうのは想像を絶しますね。
恒成 当たり前になってくるんですかね。ケガっていうのは。酷い、軽いはあるにしろ。
尚弥 でもオレはもう、完全にケガをなくしたいから。
恒成 完全無欠です! っていう試合はありましたか。
尚弥 前回のアメリカの試合と、その前はもう全然。河野(公平)さんとの試合のときは、癖じゃないけど、なったらヤだなぁっていう自分の中の恐怖感ありながらの試合だったから違和感はあったけど、そこからは拳も腰も全然問題なく、この2試合はできてる。
恒成 ケガがあると年3回4回はキツイですよね。大事な試合決まりました、の前にケガと戦っとったらもう、話にならない。
──ケアもかなりしてますか?
尚弥 してますね。ストレッチもかなりしてます。練習前は軽くほぐして、練習後は1時間弱とかストレッチして。
恒成 すごいですね。そんなにやる人、初めて聞きました。
──高村さん(淳也トレーナー)に教わったやり方ですか?
尚弥 そうですね。腰のストレッチ、筋トレとか。特にスパーリングの後は欠かさずやってます。それをやり始めてから、腰の張りとかなくなりましたから。
──そう考えると、前の、やってなかった自分というのは……
尚弥 ヤバいッスねぇ。12ラウンドスパーリングやって、軽くシャドーやって上がり~ですもん(笑)。
一同爆笑
恒成 差がスゴイですねー(笑)。
尚弥 いま考えたら、そりゃそうなるわーみたいな。まあその経験があるから、またいい方向にいけるという。
──でも、下手したら、試合中に突発的に起こる可能性もあったわけで……
尚弥 まあまあ、運も良かったんですよ、その試合でペッチだったから(笑)。ペッチって、また完全にバカにしてるって思うでしょ(笑)。
恒成 (笑)。
──ペッチバンボーンも良い選手だったじゃないですか?
尚弥 どうなんですかねー、そこまでは……(笑)。頑張る選手でしたけど。
──パランポンも強かったですよね。
恒成 それこそ、いや~っていう……(笑)。
尚弥 けっこうパンチあったでしょ。
恒成 いままでやってきてる中だとそこまで感じなかったです。
尚弥 そうなんだ。
恒成 わかんないです。ジャブで(眼窩低骨折に)なっとるんで。最初にもらったのがそれなんで、イメージはあるんですけど、たぶんそんなに強くはないです。
──パーンて弾ける感じ?
恒成 いや、痛っ! て思ったら二重になっとったんで。すぐ直るやつと思ってたんですが。
 知らんほうがいいですね。知った上で、「あ、これヤバいやつだ」って思うほうが怖いですね。
──怖いですねぇ。やっぱり万全でやるというのはなかなか難しいですね。
尚弥 ここまで来たら難しいですね。何戦もやってると、何がベストかっていうのがわかるようでわからないという。

腰痛で痛い経験をした尚弥は、以後、練習前、練習後には必ず入念なストレッチをするようになった。
強いだけではない。一流のトップ選手は、コンディショニングなど、ケアにも全力を注ぐのだ
写真/本間 暁

それぞれのアプローチの仕方

──ジムでのスパーリングと試合との差、というのは感じるところですよね。
尚弥 そうですね。スパーの自分を出せたら、めちゃ楽しいんだなと思います。
──試合も楽しそうですけどね。
尚弥 まあ、楽しいですね(笑)。
──試合によって、フロイド・メイウェザーみたいになったり。メイウェザーフックとか。
尚弥 メイウェザーフック?
──メイウェザーがリッキー・ハットンを倒したフック。尚弥選手が河野選手を倒したとき、姿がかぶりました。
尚弥 ああー! でも自分、マネばっかりですよ。いろんな選手の。いろんな人のイメージがあって、今日練習するときに、気分的に、「ああ、じゃあこの人のステップとか、入り方とかやってみようかなぁ」とか。いま常にシャドーで意識してるのはパッキャオ(マニー)の踏み込みとか、サイドへの動きだったらロマチェンコ(ワシル)とか。そのときそのときで、いまこの人の感じでやってみようかなとか。
恒成 オレはいま、人のモノマネをやめようって思ってるときで。
尚弥 あ、そうなの。
恒成 見るのはそう好きじゃないんですけど、ちょっとロマチェンコと、おもしろいからハメド(ナジーム)は見とったくらいで、マネしたりしてたんですけど、マネじゃあ越えられないなって極論なんですけど。じゃあ、自分にしかないものはなんだろなとか、自分の武器というのか、オレはマネしてもこの人にはなれんけど、誰もマネしてもオレにはなれんものは何なのかとか。自分をわかっとるかなっていう感じで、自分のことをもうちょっと理解しようかなとかいう感じで、自分にしかないものにちょこっと取り組もうかなと。自分より凄い選手ばっかりだけど、その人たちもできんこと、何かないかなって。
尚弥 なるほどね。逆にオレは、いろんな人のを吸収して、オレをつくる、みたいな。自分の考えがある中で、いろんな人のいいところを吸収して「井上尚弥」を作り上げていくという。
──でも、もう出来上がってますよね。
尚弥 マネをして、ちょっと取り入れたからといって、ロマチェンコになるわけではないし、見ている人からすれば、いま自分がやってるボクシングは、井上尚弥のボクシングだし。
恒成 尚弥さんは、コレがあるから、“アクセサリー”が絶対自分のものになると思うんですけど。言ったら“土台”がデカいから。でも、オレは土台がないけど、いままでアクセサリー集めすぎて、わけわからんくなってきたんで。っていうとき(笑)。
一同 (笑)
──たとえば、尚弥選手が恒成選手を見て、参考になる部分もあると思うんですけど。
尚弥 もちろんいっぱいありますよ! 踏み込みの速さ。ジャブからワンツーとか。速いテンポでパンパンパンとか。自分はそういうタイプじゃないんですよ。でも、そういうパターンも引き出しとしてあれば。できないことを他から盗んで、持っておけば、いざというときに出たり。この前のアメリカでも、やりながら、ここロマゴン(ローマン・ゴンサレス)だったら、どう詰めるんだろうとか、考えながらやってたし。
恒成 試合中にそこまで回るのは凄いですね。
尚弥 ホントにいろいろ考えながら。
──まずその、考えられる余裕を作るのが凄い。
尚弥 そこがまあいちばん、重要かもしれないですけど。
──尚弥選手のボクシングを全ボクサーに参考にしてほしい部分があって。さっきも話しましたが、打った後に動くという。
恒成 連続写真のやつですね!
尚弥 なんの試合のとき?
恒成 練習です。ボクマガのネットに載ったやつです。
──さっきも少し話しました、「みんな、スピードとかパワーを語るけれど、本当に凄いところは……」っていう話(ボクシング・マガジンWEB 2017年8月18日掲載『基本の積み重ねにこそ“モンスター”の原点がある~井上尚弥の“こだわり”~』<http://www.bbm-japan.com/_ct/17110451>)です。
尚弥 ああ、あれですか!
──すみません。ちょっとひねくれてるので(笑)。
尚弥恒成 (笑)。
尚弥 あのガードの位置の維持は、リゴンドー(ギジェルモ)なんですよ。
──打った後にすぐステップバックは?
尚弥 それは須佐勝明!(笑)。
──やっぱりそうですよね!(笑)。
尚弥 高校のときに、散々見てマネたり、マスやって自分で取り入れたりして。
──大橋ジムはみんなやりますもんね。
尚弥 そうですね。打った後がいちばん大事ですから。
恒成 勉強になります。
──恒成選手もやってますけどね。
恒成 試合でできてない。
尚弥 できてないことないと思うけどね。ただオレが最近見て、すごく感じるのは、恒成はステップワークとスピードがあるけど、意外とパンチもらうなって印象。
恒成 さっき、「防御ってどういう練習してますか」って訊いたのと同じで、これここ最近ずーっと、何やっていいのかな? もらいすぎだよなと思って。距離感とかにもつながってくるんですけど。
尚弥 そうだよね。
恒成 最近、もらうんで、いろいろやって、ファイター化しちゃってるんで。アコスタ(アンヘル)のときでも、パワーある奴と中で勝負して。これのほうが安全だっていうぐらい、外でかわせる自信がなくなっていて。だから、スピードをあんまりアドバンテージにできていないっていうのを感じてるんですけど。で、よけてリズムをつくれないと、ハンドスピードも、自分の気持ちもノッてこなくて、もらって、気持ちが落ちていって。調子に乗れないと、スピードも出ずに、またアドバンテージもなくなってっちゃってるんで。ちょっといまは、それでどうしよっかなぁって現実を見て、一応、対策としてやるのは、当たり前にガードはここにするっていう。まずはこれでいこっかなっていう。最初の構えとか打ち終わりをいっつも狙われて……。これがめちゃくちゃ難しくて。癖つきすぎて。
 まあ、練習してるだけじゃ、他の選手見ててもあるように、頑張って毎日やっとんのに、弱くなっちゃうみたいな。これ、正解だと思ってたのに、違うのかなとか、自信なくしちゃったり。そんなときもあるかな。
──尚弥選手もそういうことありますか?
尚弥 あるんだろうけど、気にしてない(笑)。そのことを。まあ、ダメなときあってもへこまないし、性格的にいいんですかね。スランプをスランプと感じないみたいな。
恒成 1年休んどったときはどうしとったんですか? けっこう気持ちも落ちますよね、当たり前ですけど。
尚弥 いや~、あんましないんだよねー(笑)。
恒成 あ、それはすごいですねー(笑)。
尚弥 いや、できないんだからもう。でも、手術するときはスゲー悩んだ。あの勝ち方をして試合をできないっていう。そこだけ。でも、手術しちゃったら、ああもう年末までできないから、考えてもしかたないからって。
恒成 で、もう、取り組むことも明確にして、すぐできちゃうんですね。
尚弥 そんなには明確にしてないね。
恒成 気持ちだけ?
尚弥 そう、気持ちだけ普通に。休むときは休んで、友だちとバーッと遊んで。練習再開するときは普通に練習始めて。
──拓真選手もそんな感じでした?
尚弥 タクの場合は、ちょっと考えてたみたいですけど。
──やっぱり性格的なもので、違うんですね。
尚弥 自分は考えてもしかたないっていう考え方なので。そうじゃない人って、そう言われても……みたいになるじゃないですか。奥さんが落ち込んでるときに、「考えてもしかたないよ」って言うと、「あんたみたいにそりゃなりたいよ!」って(笑)。
一同爆笑
尚弥 なれればなりたいよ! って(笑)。こればっかしは性格だし。
──恒成選手の場合は、考えに考えてきたからこそ、いまの「田中恒成」を築いてきた部分があるんでしょうね。
尚弥 そうですね。
恒成 はい。
──というわけで、話は尽きませんが、今回はそろそろ……。
何度も言いますが(笑)、次はふたりの手合わせで再会しましょう!
尚弥 待ってるね!
恒成 はい!

See You ……

「尚弥さん、フェイスオフさせてもらっていいですか?」
「いいよ! やろうよ!」

 お互い、何度も吹き出してしまいNG連発……。

 きっと、いつの日か──。

写真/本間 暁

PROFILE
いのうえ・なおや◎1993年4月10日生まれ。神奈川県座間市出身。身長164cmの右ボクサーファイター。
父・真吾さんがアマチュアボクシングをしていた影響を受け、小学1年(6歳)でボクシングを始める。その後、父が開いた『井上ボクシングジム』(神奈川県秦野市)でトレーニングを続け、小学6年からスパーリング行脚を開始。すでに全国で名前を知られる存在に。
 2007年、中学3年で『第1回U-15全国大会』に出場し、優勝と同時に優秀選手賞を獲得。相模原青陵高校に進学し、1年でインターハイ、国体、選抜の全国3冠を果たした。アジア・ユース銅メダル、世界ユース・ベスト16、インドネシア大統領杯金メダル、世界選手権ベスト16、全日本選手権優勝、アジア選手権銀メダルなど、高校時代は7冠を達成している。
 2012年10月2日プロデビュー。2013年8月25日、田口良一(ワタナベ)の持つ日本ライトフライ級王座に挑戦し、判定勝ちで奪取。国内最速タイ記録の4戦目での獲得だ。同年12月6日、ヘルソン・マンシオ(フィリピン)を5回TKOで破り、空位のOPBFライトフライ級王座を獲得。5戦目での同王座獲得も国内男子最速タイ記録。2014年4月6日、WBC世界ライトフライ級王者アドリアン・エルナンデス(メキシコ)を6回TKOで倒し、6戦目という国内最速世界王座奪取記録を作る(防衛1=返上)。
 2014年12月30日、世界に名高い名王者オマール・ナルバエス(アルゼンチン)を衝撃の2回KOで打ち砕き、WBO世界スーパーフライ級チャンピオンに。これまた当時、世界最速8戦目での2階級制覇を達成した。しかし、この試合で右拳を負傷し、手術も経て、1年のブランクをつくった。
 その後、5度の防衛戦を5勝(4KO)でクリアし、今年9月9日、念願のアメリカ初登場。カリフォルニア州スタブハブ・センターで行われたスーパーフライ級メインキャスト総登場の『Superfly』で、アントニオ・ニエベス(アメリカ)を6回終了TKO。6度目の防衛を果たした。12月30日、横浜文化体育館で7位のヨアン・ボアイヨ(フランス)とV7戦を行う。来年2月24日、アメリカで再び開催される『Superfly2』への出場を熱望している。
アマチュア戦績=81戦75勝 (48KO・RSC)6敗
プロ戦績=14戦14勝(12KO)
 弟・拓真(21歳)、従兄・浩樹(25歳)とともにアマ時代から切磋琢磨し、現在も同じ大橋ジムで励む。尚弥は2015年12月に結婚し、今年10月5日、男児が誕生している。

PROFILE
たなか・こうせい◎1995年6月15日生まれ。岐阜県多治見市出身。身長164cmの右ボクサーファイター。
空手の支部長だった父・斉(ひとし)さんの影響で3歳から空手を習い始める。小学5年で、打撃を練習するために地元のイトカワジムでボクシングを習い始め、そのおもしろさを知って競技変更。中学生になり、U-15全国ボクシング大会にも出場し、中京高に進学。元OPBFスーパーフライ級王者の石原英康監督の指導を受けて、1年で国体優勝を皮切りに、インターハイ、選抜など4冠を果たした。また、3年時に出場したアジア・ユース選手権では銀メダルを獲得している。
 2013年11月10日、現役高校生のままプロデビュー。2014年10月30日、OPBFミニマム級王者・原隆二(大橋)を10回TKOで下し、国内男子最速となる4戦目でOPBF王者となった。
 2015年5月30日、フリアン・イエドラス(メキシコ)とのWBO世界ミニマム級王座決定戦に臨み、12回判定勝ち。5戦目での世界獲得を果たし、井上尚弥の6戦目を上回り、国内最速世界王座獲得記録を更新した(防衛1=返上)。
 2016年12月31日、すでに2階級制覇を果たしている名高いモイセス・フエンテス(メキシコ)とWBO世界ライトフライ級王座を争い、5回TKO。8戦目での2階級制覇は井上尚弥と並び日本最速記録。
 今年9月13日、パランポン・CPフレッシュマート(タイ)を9回TKOで破り2度目の防衛を果たしたが、両目眼窩低を骨折。年末にWBA王者・田口良一(ワタナベ)との統一戦を行うことで、両陣営が交渉を始めていたが、負傷によって、この話はいったん白紙となった。
 12月に入り、WBO世界ライトフライ級王座を返上。2018年は、あらためてフライ級で3階級制覇を目指す。
 2014年4月に中京大学経済学部に入学し、現在4年生で在学中。
アマチュア戦績=51戦46勝(13KO・RSC)5敗
プロ戦績=10戦10勝(6KO)

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