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2019-11-12

【BBM cards Editor's Special Column #2019-26 ルーキーエディションプレミアム】編集者には譲れないことがある!パッケージデザインの変遷を楽しめ!

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BBMカードが世に出るまでには、いろいろな出来事が起こっています。そんな制作の裏側を少しだけ紹介するコラムシリーズ。今回は2007年以来、大人気の「ループレ」ことルーキーエディションプレミアムについてです。発行1年目からのパッケージデザインを順にたどっていく「歴史もの」のコラムをどうぞ!

尖っていたなあ

 ミント立川店の高橋店長による10月の「BBMカード選手権」で、「ルーキーエディションプレミアム」のボックスデザインに高評価をいただいた。「この世代は、いつか日本を代表する。」というキャッチコピーと、選手写真の絶妙なバランスが心を打ったようだ。

高評価をいただいた2019年版のパッケージ

 一般的にも、カードファンにとってもそうだと思うのだが、パッケージはいわゆる包装するのが本来の目的だ。現在でも単行本や雑誌、一昔前ならCDやレコードなどは、その表紙やジャケットに惹かれて、“表紙買い”、“ジャケット買い”などという言葉がある。しかし、トレーディングカードの場合、大切なのはその中身で、パッケージは開封したら捨てられるものだろう。

 この「ルーキーエディションプレミアム」が初登場したのは、田中将大が楽天に入団し、1年目から11勝を挙げて新人王を受賞する大活躍を見せた2007年のこと。その当時はまだカード制作の部署に異動してちょうど1年で、ようやくこの世界のことが分かりかけてきた時期だった。自分にとっても初めて企画から関わり、制作を任されたアイテムで、相当に気合が入っていたのを懐かしく思い出す。カードに詳しい同僚などにアドバイスをもらいながらではあるが、アイテムとしてのコンセプトや全体の構成を考え、ゼロから一つの商品を作り上げていく面白さを感じたものだ。

 その時、このアイテムのこだわりとして重視していたのが、直筆サインカードに縦版と横版を作り、しかもそのそれぞれの写真をレギュラーカードと変えるということ。当時のチーム別カードにも直筆サインカードは入っていたが、これはレギュラーカードと写真は共通で、デザインも横型が一般的だった。縦型サインには新鮮なイメージがあり、さらに写真がレギュラーや横型サインとも異なることで、よりカードとしてのスペシャル感が増すと考えたわけだ。

 そして、もうひとつのこだわりがボックスのデザインだった。カードファンに「このカードセットはこれまでのものとは一味違う、特別なセットだ」ということが一目で伝わるものにしたかったのだ。

伝えたのは「好きにデザインしてください」と一言だけ

 信頼している担当デザイナーには、一言だけ「選手の写真は入れなくていいので、好きにデザインしてください」と伝えた。

 その当時、ボックスのデザインに関しては、販売部の承認を経てから決定されるシステムになっていた。販売部としては当然なのであるが、より多くの人にカードという商品を知ってもらい、売れるものにしたいという意図がある。もちろん、それはすごく大切なことなのだが、制作側としては正直、分かりやすさよりも、カッコよさを追求したいという気持ちもあった。

 当然、意見の衝突が生まれる。これをどう着地させるか。それまでならカード制作の経験も浅かった自分の意見は却下されていたのだが、このアイテムに関しては、こちらの意見が通るのではないかという予感もあった。

 デザイナーが提案してくれたデザインは、素晴らしいものだった。早速、販売部に相談に行ったが、当然のように難色が示された。「なんの商品か、さっぱり分からない」というのだ。それはその通りなのだが、こちらとしては確信犯的にそういうデザインにしてもらったこともあり、このままあっさりと引き下がるわけにはいかない。その後も何度か打ち合わせを繰り返した。予想していた通り、制作部数を大幅に超える予約が入ったことで、最終的には販売部が折れる形になり、ボックスデザインが決定したのである。

 そのデザインは、いま振り返ってみても斬新で、むしろ斬新すぎるくらいだ。現在、ある程度カード制作の経験を積んだ視点でこのボックスを見ると、「かなり尖っていたなあ」と苦笑するしかないのであるが、天面には商品の価格やセット数の表記も入っていない。当然、一見しただけでは野球カードということは、まったく分からないのである。ただ、一番表現したかったプレミアム感だけは間違いなくあふれていた。

これが「ループレ」第1号のパッケージ!

 2年目以降も「ループレ」のボックスデザイン偏重志向はエスカレートしていく。2008年度版からはボックスにも箔押し加工が施され、より高級感も増した。2011年まではデザイナーのセンスに頼りきりではあったが、その年ごとにしっかりとしたコンセプトのある、印象的なボックスを世に送り出させてもらったと思っている。

 方向性を変えたのが2012年からで、初めて選手の写真をボックスに入れ、野球カードとしてのイメージをより濃く出していくようになった。自分もカード制作の経験を積んで、「だいぶ丸くなったなあ」と納得するしかないのであるが、こうして振り返ってみると、2015年までの4年間はデザインコンセプトもその年ごとにまちまちで、一貫性のないものに見える。

 価格、カード構成ともに現在の仕様に生まれ変わった2016年からは、何らかのキャッチコピーと選手写真の組み合わせという基本コンセプトで統一されている。そして、今年生まれたキャッチコピーが、「この世代は、いつか日本を代表する。」だった。

 こうしてボックスデザインだけをみても、カード編集としての自分の成長(迷走?)を見ているようで恥ずかしいところもあるが、カードファンの皆さんにも、これからはいろいろなカードのボックスデザインに興味を持っていただけるとうれしく思う。そこには、担当編集、デザイナー、そして販売部、それぞれのこだわりが詰まっているのだ。

 これから何かの折に、このボックスは捨てずにとっておこうと思ってもらえるようなことがあるとすれば、こんなに幸せなことはない。

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