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2019-02-28

【BBM cards Editor's Special Column #2019−05 Bリーグカード】インサートカードで「アレ、やっちゃおっかな」

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 BBMカードの編集スタッフによる「制作の裏側コラム」の最新版。今回はBリーグカードがテーマです。

 今年で3年目となるこのアイテムは、1月発売の前編「FAST BREAK 1st Half」、2月発売の後編「FAST BREAK 2nd Half」を合わせて180選手が登場するビッグスケールに成長してきました。

 そんな中、今回特にこだわったのがインサートカードでした。通常インサートの「The Contenders」、100枚限定の「BLACK LABEL」、50枚限定の「Franchise」という3種の設定があり、すべて仕様もデザインも変えて投入するチャレンジに打って出たのでした。

 インサートカードにこだわる。これは「カードエディター」としては最高の勝負どころです。複雑で嫌になるほど細かい条件を机の上に並べて足したり引いたり掛けたり割ったりしながら、それでもこれまでにないようなスペシャルなものを作りたいーー。

 そんな本気の思いを込めた、インサートカードにまつわる小さな物語。

「野球カードでもやったことにないようなものをさ」

「今年はインサート、もっとこだわろうよ。去年ともおととしとも違うもの、見たいよね。しかも、うちの主力である野球のカードでもやったことのないようなものをさ」

 2018年の秋のある日、Bリーグカードの打ち合わせの席で、制作プロデューサーが不思議なテンションでこんな風に話したことで、すべては始まった。

 プロデューサーとしては、すごいカードが見たいという単純な欲求はもちろん、(かっこつけて言うのならば)スポーツカードそのものの新しい可能性の第一歩を、このBリーグカードで踏み出したいという思いがあった。

 もちろん「見たいよね」と聞かれれば、野放図な言葉を真正面から受けてしまった印刷会社の営業Hは「見たいですねえ」と言うしかない。でもさすがに、安請け合いはできない。プロデューサーは機嫌が良いのか、ずいぶんと気持ちが高まっている口調だったから、逆にそれが不気味だった。

 でも実は、営業Hにはいつか提案してやろうという腹案があった。アレ、やっちゃおっかな。

「実は、やりたい企画、あるんですけど」

もっと光らせようぜ

 やりたいことがあっても、「OK、じゃ、それな!」と軽やかに事態が動くほど、この世の中が甘いもんじゃないのは営業Hにも分かっていた。でも…。プロデュサーは身を乗り出して「いいねえ、それ!」と乗っかってくるではないか。やっぱり不気味だ。

 プロデューサーからすれば、鉄は熱いうちに打て、だ。

 ホットな企画が議題に挙がってもしばらくして冷静に考えてしまうと、ネガティブな条件を口にするやつが必ず出てきて実現の度合いはどんどん下がっていくものだ。確かに話を大きくしてしまうのは編集者の(というかオレの)悪い癖だけど、経験上、やばいと感じたから、一発でGOサインを出すことがいまは大事なんだ。

 悪い癖のついでに、もう一つ前のめりで検討しなければならないことがあった。インサートカードは前年も3段階。デザインは同じで色替えを施した、通常版、各100枚限定、各50枚限定だ。さて、今回はここをどうしたものか。

「いま提案してくれた内容をベースに3段階作るのもいいんだけどね、色替えだけだと前回と同じになっちゃうよね、それ。ほかになにかできないもんかなあ…」

 ここから打ち合わせは長考に入る。こういうときはだいたい、参加者は頭で考えているようでいて考えていない。妙案が浮かばないときはそんなものだ。

 Back to the basic。こうなっちゃったら基本に戻るんだ。そんなプロデューサーの深層心理を見透かしたかのように、営業Hは「そういえば…」と言葉をつないだ。

「やっぱり、インサートカードって、ひと目見てぱっとそれだって分かるものがうれしいですよね。つまり、キラキラしてるとかそういうやつで……」

 おお、それだよ、それ!

 去年も光ってたけど、もっと光らせようぜ!

ワクワク! ゾクゾク! ドキドキ!

 こんな風にして、3つのインサートカードが誕生した。

 銀紙の風合いを生かしながら、チームカラーとマッチさせ、エンボス調の加工を採用した「The Contenders」、高級感ある黒をベースにフレームや選手名などで凹凸を表現した「BLACK LABEL」、そしてホログラム紙と金箔をダブルでふんだんに使った「Franchise」である。

 どれも自慢のインサートカードだ。デザインを見てワクワクし、色校正を見てゾクゾクし、実物を見て…ドキドキした。

 キラキラ、という部分では、「The Contenders」と「Franchise」がそれに当たる。営業Hの説明。

「銀紙を使おうと思ったのは、過去のアイテムからの流れを大事にしたかったからなんです。Bリーグカードというブランド力というかシリーズ感をしっかり受け継いでいく、という意味合いですね。そこは通常版に当てはめるのがふさわしいと思いました」

「でも、新しいアレンジも進化には必要です。そこで、エンボス調の加工を施しました。加工の方法の都合なのですが、模様部分をザラザラした感じで表現しているところは、デザイン的に細かすぎると失敗するので、線の細さを微妙に調整していきました」

「銀紙の上にクラブカラーを印刷することで、上品できれいめな発色を表現できたと思います。お気づきかと思うのですが、例えばクラブカラーが青の場合でも、チームごとに微妙に色を変えているんです。やはり、クラブごとの独立性は大事だと思いますから、細かいところですけれど、ぜひ見ていただきたいですね」

「もちろん、もともとの紙色である銀も生かしたかったので、カード下部や名前のところは紙地を大事にしました。全体的にはカラフルに見えつつも、銀は黒と組み合わせたことで引き締まったので、トータルバランスは絶妙でした」

「Franchiseに関しては、プロデューサーさんの“光らせようぜ”の言葉にあったように、とにかくキラキラがテーマです。キラキラといえば、まずホログラムですよね。もちろん、それだけでも十分にきれいなカードになるのですが、今回ばかりは物足りない。とにかくもっとキラキラに、ということで、金箔をその上に載せました。細かな模様の部分を印刷ではなく箔載せにしたことによって、従来のキラキラにはない空気感が出せたのではないでしょうか」

「デザイナーと加工現場の営業さんとの連係もうまくいって、例えばこのFranchiseではホログラムをより輝かせるようにデザイン上で背景に色を載せているんです。ホロ+金箔+ホロの上のカラーリングによって、ギラギラ過ぎずくど過ぎず、すべてマッチしたと思います」

すべてハマった快感

 そして、打ち合わせの席で「アレ、やっちゃおっかな」と思い切って提案した仕様は、「BLACK LABEL」に惜しみなく反映された。営業Hの解説はもう止まらない。

「これはもう、狙っていた効果がすべてハマりました」

「加工のベースとしては、4色印刷とニス、そして金箔のコンビネーションです。透明のニスで盛り上がる部分を作ることによって、立体感を出すという狙いでした」

「ニス部分はさっきのエンボス調加工と同じで、細かすぎてしまうと盛り上がっている山の部分同士がくっついてしまって、ただの大きな山ができるだけになってしまいます。でも、フレーム部分の模様はしっかり生かしたい。その微妙なギリギリのところでデザインを調整するのがポイントでした」

「そのフレーム部分、よく見ていただければ分かると思うのですが、場所によって高さに違いがあるんです。これで奥行きが出てきます。さらに部分的に金箔をあしらうことによって、高級感と立体感を両立させることに成功しました」

「選手名の部分にもニスを載せているのはお分かりかと思うのですが、これもまた、フレーム部分とは高さを変えているのにはお気づきでしたか? そして、こちらはあえて箔を載せませんでした。透明なままで盛り上げることによって、レンズ効果が生まれて選手の名前が飛び出してくるような見え方ができるんです」

「インサートの3段階を全体的に見ると、上品なキラキラ→黒ベースのカラーリングで引き締まった高級感→ホロと金箔のキラキラ最上級、というステップになるように考えました。前回は通常版とその色替えバージョンでしたが、今回はデザインも違えばトーンも段階的に変化をつけたんです」

 今回のBリーグカードを手にしていただいた皆さんは、インサートカードにどんな印象を持ってくださっただろうか。

 一つのカードを作るのには、こんな物語もあるのだということを頭の片隅に置いていただければ、「カードエディター」冥利に尽きるというものだ。

 さて、もし来年度もBリーグカードを作らせていただけることになれば、今回の出来を超えなければならない。

 というわけで営業Hさん、新しいアイディア、いまから練り込んでおいてくださいよ!

Bリーグカード詳細はこちら

〈FAST BREAK 1st Half〉

〈FAST BREAK 2nd Half〉

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