※写真上=66kg級で優勝、阿部一二三の代表内定に「待った!」をかけた丸山城志郎
写真◎近代柔道
男子66kg級で丸山城志郎(ミキハウス)が阿部一二三(日体大4年)に2015年講道館杯以来の勝利を収め、優勝を飾った。
初戦からの3試合をすべて一本勝ちで勝ち上がった丸山は、決勝でも序盤から、間合いを巧みにコントロール。巴投げで翻弄して、相手の焦りをじわりじわりと誘っていった。対する阿部は、勝てば来年の世界選手権代表に内定することもあり慎重になったのだろう、腰が引け、前傾姿勢の時間が長い。やがて丸山はそこにフィット。延長戦に入って1分3秒、「警戒している」と感じていた内股を放って阿部の体勢を崩したところに、巴投げを放って「技あり」。勝負を決めた。
※延長1分過ぎ、丸山の放った巴投げに阿部の体が宙に舞った
写真◎近代柔道
「意地、出しました」と言うと丸山は、いつもの穏やかな語り口に安堵感をにじませ、静かに試合を振り返った。
「『指導』で勝つのは自分の中ではつまらないと思っていたので、何としてでも投げて勝ちたいと思っていました。結果的に投げて勝ててよかったです。巴投げで勝とうとは思ってなかったですけど、内股、大外刈りで組み立てて投げていこうと思っていて。咄嗟に出た巴投げで決めることができました」
この夏のジャカルタ・アジア大会で銀メダルだった丸山は、今回、結果を出せなければ来年の世界選手権、そして2020年東京五輪の代表争いから、大きく後退するところだった。しかも、世界選手権を連覇したばかりの阿部を決勝で倒したことは、単なる優勝以上の意味がある。
決勝前、阿部の妹、詩(夙川学院高3年)が52kg級で優勝。観客席は阿部きょうだいを応援するムードに包まれていた。記者にこのことを尋ねられた丸山は、小さく微笑みながら入った。
「会場中が『阿部ワールド』みたいでした。去年(のグランドスラム東京)からそう感じていたので、見てろよと思っていました」
選手を刺激するのは自らへの声援ばかりではない。66kg級は俄然、面白くなってきた。
※阿部に勝利し、小さく拳を握りしめた丸山。66kg級の代表争いが俄然、面白くなってきた
写真◎近代柔道