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2024-05-13

【アメフト】「甲子園の星」元関学大のQB奥野耕世が、初めて東京のチームでプレーする理由とは

冷静にパスを決める電通QB奥野耕世=撮影:小座野容斉

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5月11・12日に1回戦4試合が行われたアメリカンフットボール・Xリーグ「X1 エリア」の「ジュニアパールボウルトーナメント」。 12日の電通キャタピラーズ対三菱商事クラブトライアックスの一戦では、電通のあるQBの登場に、場内が沸いた。

 先発QBとして甲子園ボウルで3戦全勝、大学生の年間最優秀選手賞・ミルズ杯に2度輝いた、元関西学院大ファイターズの奥野耕世だ。

電通キャタピラーズ ○12-3● 三菱商事 クラブトライアックス
(2024年5月12日、富士通スタジアム川崎)


「今日は30点」と2INTに納得がいかなかった奥野。試合後の表情にも笑顔はない=撮影:小座野容斉
自己評価は「30点です」

 見せ場は、最終盤に訪れた。

 トライアックスゴール前5ヤード、3rd&ゴール。第4クオーター残り1分を切っていた。スコアは5-3、電通のリードは2点。トライアックスのタイムアウトは1回残っていた。


 この3rdダウンが止められてしまえば、仮にフィールドゴール(FG)を決めて5点差としても、理屈の上では、トライアックスに逆転の可能性が残る。

 勝利を確実にするためには、この3rdダウンで、タッチダウン(TD)を奪わなければならなかった。

 QB奥野は、エンドゾーン左奥に走り込んだWR中谷建司にハイボールをデリバリーした。

 168センチと小柄だが、運動能力の高い中谷は、ジャンプの頂点で、マンツーマンカバーに負けずボールをキャッチ。TDとなった。エクストラポイントのキックも決まって9点差となり、勝負は決した。

 勝利には7点が必要な場面で、TDパスを決める。QBとしての最も重要なミッションを、今季初戦であっさり決めた奥野。流石という他なかった。

 第3Q途中からの出場で、プレー機会は試合の半分以下だった。パス9/12、111ヤード・1TDは、パフォーマンスとしては決して悪くはない。だが奥野は「全然ダメですね。30点です」とそっけなかった。

 3回のパス失敗の中で、2本がインターセプトだったからだ。

 特に2本目のインターセプトは、最後のTDと同じ、相手エンドゾーンまで5ヤードのシチュエーションだった。WR河波正樹を狙ったTDパスは、前に入り込んだトライアックスDB金本祐磨によって完璧にボールを奪われた。

 「レシーバーとのコミュニケーションが取れていなかった」と奥野は振り返った。プレーリード的にも投げてはいけないパスだったという。
奥野が最も反省していた、第4クオーターにインターセプトとなったパス=撮影:小座野容斉
奥野が最も反省していた、第4クオーターにインターセプトとなったパス=撮影:小座野容斉
電通QB奥野のボパスをインターセプト、喜ぶトライアックスDB金本=撮影:小座野容斉

東京のチームでプレーするのは人生で初


 関西の民放に勤務する奥野は、昨年夏、東京に転勤になった。かっては記者職だったが、現在は営業職。多忙な日々には変わりがない。

 昨年秋は、東京から大阪に通ってX2ウェストのクラブホークアイでプレーしてきたが、シーズン終了後の年末に関東のチームでプレーすることに決めた。

 そして、深川匠ヘッドコーチ(HC)を始め、多くの関学大OBがいるキャタピラーズを選んだ。3月からチームに合流し、練習を重ねてきた。

 東京に住むのも、東京のチームでアメフトをプレーするのも、奥野にとっては初めての体験だ。

 キャタピラーズの練習は週1回しかない。ただその1回も、このところいけないことが多い。今日のインターセプトはその結果だったという。

 日常的なトレーニングを心がけているが、現状は、ほぼウェートトレーニングしかできていないという。

 それでもこの日、肉体的なコンディションは良かったという。パスも「調子は良かったです」と振り返った。確かに、球速やボールの弾道、生命線であるコントロールは決して悪くはなかった。

 第4Qに関学時代の同級生・鈴木海斗にヒットした22ヤードのパスは、ミルズ杯を獲得したころを想起させるような生き生きとしたボールだった。

 だからこそ、2本のINTが自身で許せなかったのだろう。



『大人のQB道』を真摯に模索

 富士通スタジアム川崎は、2021年12月、入れ替え戦でブルザイズ東京(現品川CCブルザイズ)に惜敗したフィールドだ。「ここで戦うのは、あれ以来ですね」という奥野。「あの頃は、関学時代の貯金でプレーしていました」と振り返る。

 関学大時代は、日夜フットボールに明け暮れた。そうできる環境だったし、フットボール漬けになることは、小学校1年から始めたQB人生の中で当然の道だった。

 修練を突き詰めた結果としての甲子園ボウル3連勝であり、2回のミルズ杯授賞だった。

 今は違う。ビジネスマンとして、多忙な毎日を送りながら、フットボールをプレーしている。制約があり過ぎる中で、現時点で可能な限りのベストパフォーマンスを目指している。

 最後に甲子園ボウルで勝ったのは、2020年。かって自分と共に戦った同級生の多くは、最早、フットボールをプレーしていない。

 その中で、アメフトを、QBというポジションを、どこまで突き詰めていけるのか。それは自分の選択だ。

 電通が、日本のトップリーグであるX1スーパーに最短で復帰するためには、「QB奥野のパスがカギ」なのではないか?と尋ねた。

 奥野は、そんな先のことではなく、今は一戦一戦を大切に戦っていくことを考えていると答えた。

 練習量は少なくとも『大人のQB道』を真摯に模索している。それが今の奥野耕世なのだと感じた。

奥野はパンプ・フェイクを入れてパスを決めるなど、持ち味の巧みさも垣間見せた=撮影:小座野容斉

【小座野容斉】

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