水田光夏選手はパラ射撃を本格的に初めてからわずか3年で、東京2020パラリンピック代表内定を勝ち取った。シャルコー・マリー・トゥース病という難病を背負いながら、彼女はいかにして短期間でここまで上達したのか? これまでの歩み、そして1年延期となった東京2020パラリンピックに向けての思いを、スポーツ情報マガジン「スマイルスポーツVol.82」のインタビューで語ってくれた。(※取材はオンラインにて2020年4月16日に行いました)
水田光夏選手に射撃の魅力を聞くと、「自分の体に意識を向けて、自分自身と向き合える時間が面白いと思います」という答えが返ってきた。競い合う相手こそいるものの、根本は自分との戦い。彼女は自分と向き合いながら、競技力を高めてきた。
水田選手は中学2年生のときにシャルコー・マリー・トゥース病を発症。この病気は下腿や脚、手や上肢の筋萎縮と感覚障害を伴う末梢神経の疾患で、手足の神経がマヒし、筋力が低下する進行性の難病だ。車椅子で生活するようになり、大好きだったダンスができなくなってしまった。
「踊るのは好きでしたが、もともとスポーツが好きなわけではなく、病気を発症してからはスポーツに興味を持つこともありませんでした」
そんな彼女がパラ射撃と出会ったのは、高校在学中の2015年のこと。母・光美さんとともに、日本パラリンピアンズ協会の会合に出席。このとき、パラリンピック3大会連続出場のパラ射撃選手・田口亜希さんの講演を聞いて、未知なる競技に興味を抱いた。
「当時はすでに東京2020オリンピック・パラリンピックの開催が決まっていたので、何か新しいことを始めるにあたって『スポーツをやってみようかな』というくらいの軽い気持ちでした。そこで母と一緒にパラリンピアンズ協会の会合に行かせてもらって、田口さんやいろいろな方の話を聞かせてもらいました。射撃は見たことも聞いたこともなく、私にとってすごく新しくて未知なものだったので、ライフルを撃てるものなら撃ってみたいなと思いました」
本格的に競技を始めてから、わずか3年でパラリンピック代表に内定。その背景には、自身の努力に加え、寄り添うように丁寧に指導してきた鳥居健コーチの存在がある。その甲斐あって、驚異的な上り調子のままパラリンピックに挑むはずだったが、全世界を襲う新型コロナウイルスの影響により、東京2020オリンピック・パラリンピックは1年延期となってしまった。
「残念な気持ちはもちろんあります。ただ、状況的には仕方ないと思いますし、逆に1年延びたことでプラスになることもあるかなと考えています」
射撃は自分との戦いではあるが、東京2020パラリンピックでは、これまで自分を支えてきてくれた母・光美さんや、鳥居コーチの期待に応えたい思いも強い。
「母は練習のときも大会のときも、必ずついてきてサポートしてくれていますし、鳥居コーチには競技を始めたときから練習を見てもらっています。ずっと支えてもらってきたので、それに応えるためパラリンピックで結果を残したいという思いもあります」
自分自身のため、そして支えてくれる人たちのために挑む夢の舞台は、1年後。水田選手がその名のごとく、光り輝く夏が待っている。
水田光夏(みずた・みか)
1997年8月27日生、東京都出身。白寿生科学研究所所属。2016年7月にエアライフルを所持し、9月から本格的に競技を開始。デビュー戦となった2017年11月の全日本障害者ライフル射撃選手権で2位。2019年の世界選手権で24位となり、日本の出場枠を獲得し、東京2020パラリンピックの代表に内定した。
こちらのインタビューのほか、初の大会からパラリンピックを意識するまでの心情、鳥居コーチへの感謝の思い、また“相棒”とも言える車椅子に関する秘話など、水田選手のカラー2ページにわたるインタビューは、6月1日に(公財)東京都スポーツ文化事業団が発行した『スマイルスポーツVol.82』に掲載されています。
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