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2017-11-13

【セミナーレポート】胃痛に有効? 乳酸菌が持つ機能性ディスペプシア(FD)の改善効果

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 アスリートとは常に何かと戦う存在だ。試合では対戦相手と、トレーニングでは仲間やチームメイトと。ストイックな日々は自分との戦いでもある。こうしたプレッシャーが精神に与える影響は計り知れない。時にはそれが病気となり、症状に悩まされることもある。だがメンタルにダメージを受けるのはアスリートだけではない。現代に生きるすべての人がプレッシャーやストレスによる病気になる可能性がある。
 心理社会的要因が原因となる疾患の一つに、胃の病気、機能性ディスペプシア(FD)がある。株式会社明治は乳酸菌OLL2716株入りヨーグルトの継続摂取がFD症状に有効である研究結果を発表し、最新研究報告に関するセミナーが行われた。

 そもそもFDとは何か。機能性消化管疾患診療ガイドライン2014では「症状の原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がないのにもかかわらず、慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患」と定義されている。(心窩部とは、いわゆるみぞおちのこと)
セミナーで登壇した川崎医科大学・川崎医療福祉大学の春間賢特任教授によると、がんや潰瘍、炎症がないのに消化器症状を訴えるものを機能性消化管障害(FGIDs)と呼び、胃痛や胃もたれなどの胃に由来する症状を訴えるものを機能性ディスペプシアと診断するとのこと。気苦労を重ねると「胃が痛い」と表現することがあるが、ストレスを抱え慢性的な痛みが続いている場合はFDを発症している可能性がある。日本では、健康診断受診者の11~17%、胃の症状があり医療機関を受信した人の45~53%にFDの人がいると考えられている。
 病気になる原因や状態を「病態」というが、FDの病態は複雑で、一つだけの原因でFDになるわけではない。様々な原因が複合的に組み合わさりFDの症状が引き起こされる。例えばストレスや不眠、喫煙・飲酒、胃の形態や機能低下、菌やウイルスなどが原因として考えられている。様々なストレスと向き合いながら生きる現代人にとっては身近な病気といえるだろう。FDは原因が複数である以上、治療法も様々だ。春間特任教授はFDの予後(病気の回復の見通し)は悪くなく、治る病気であるという意識を持つことが大切であると語った。

 続いて、東海大学医学部内科学系総合内科の高木敦司教授が登壇し、乳酸菌OLL2716のFD改善効果について発表を行った。これまでに乳酸菌OLL2716は胃酸に強いだけでなく、胃内で活発に活動し、ピロリ菌を抑制する効果を持つことは知られてきた。今回、高木教授らが発表した論文によれば、乳酸菌OLLL2716株入りヨーグルトを摂取すると、胃の症状に対する全般的な効果に関する印象、FD主要4症状全ての除去率において有効であることがわかったという。特にFD症状の中でも食後のもたれ感・早期満腹感などのPDS(食後愁訴症候群)症状に有効であること認められた。
 健康のキーワードとして知られるプロバイオティクス。高木教授は最後に「継続的な摂取が必要かもしれないが、毎日の食事に取り入れて、健康維持増進や重篤化予防に役立つことがプロバイオティクスのメリットである」と語った。継続的な摂取を心がけることで、「胃が痛い」日々を改善できるかもしれない。

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