56年を経て父から娘へ、空撮のバトンはつながった。
4月8日にこの写真部サイトで報じた中島氏の長女梨絵さんが、父の遺志を継ぐため新国立競技場を空撮した。
※写真上=ヘリコプターから新国立競技を撮影する中島梨絵さん
昭和30年代に、弊社写真部に在籍していた中島信夫氏。退社してフリーランスになり活動。
亡くなる年の平成30年、梨絵さんが「また東京五輪が開催されるけど、もう一度ヘリコ
プターに乗って空から(国立競技場を)撮影したい?」と尋ねると「うん」と答えた父。「そうか撮影したかったんだ。」そう考えるうちに、父の夢はいつしか娘の梨絵さんの夢となっていった。
梨絵さんは父が使っていたものと同機種のカメラ、ニコンSPを入手。フィルムの入れ方から練習を始めた。父と同じカメラで撮影を果たしたいとの強い意志から、敢えて扱いの難しい当時のカメラを選んだ。
チャーターしたヘリコプター会社のパイロットは、今回の試みに賛同してフライトスケジュールや撮影の事など親身に相談にのってくれた。
搭乗席の隣には、父の座る場所も設け、ヘッドホンからは地域の混声合唱団の活動にも尽
力した中島氏が参加した「第九」を流した。
新国立競技場の上空に到着してファインダーをのぞき、父と同じ構図を狙いシャッターを押すタイミングを計っているとき「りっちゃん、今だよ!」という父の声が聞こえた気がして3回シャッターを押した。その数秒後に離陸と同時に流し始めていた第九が終了して拍手が鳴り響いたという。
「偶然とは思えぬタイミングで、まるで父から拍手を贈られているように感じた」と梨絵さんは振り返る。
カメラ探しや使い方にアドバイスをいただいた方々、パイロットの方、空撮当日に国立競技場付近の地上から、撮影中のヘリコプターを撮影してくれたフォロワーの方々など、夢を一緒に応援してくれた多くの方々に感謝していると話した。
この写真は、 今月28日まで品川キヤノンギャラリーSで開催中の雑誌協会スポーツ報道展「平成アスリート戦記」~令和の夜明け、そして東京2020へ~の中で展示されている。
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