新日本プロレス「G1クライマックス」が過去最大の盛り上がりを見せるなか閉幕。だが、8月20日にはDDTが、8月27日には全日本プロレスが両国国技館大会を開催するなど、盛り上がりを見せる夏のプロレス界はまだまだクライマックスを迎えそうにない。
そんななか、業界が大注目!とはちょっと違うかもしれないが、個人的に興味を抱く一戦が東京から遠く離れた北海道・岩見沢市で実現する。
8月20日、岩見沢市イベントホール赤れんが2F特設で開催される、北都プロレス。クレイン中条率いる北海道ローカル団体の記念すべき400回記念大会で、アイスリボンの親子レスラー、星ハム子と星いぶきが初の親子シングル対決がおこなわれるのだ。
ハム子「6月に札幌で地元凱旋をやりましたけど、岩見沢はホント生まれ育ったところなんですよ。自分の親も見に来るんですけど、あんまり体の調子が良くないし先は長くないかもしれないので、私たちがプロレスやってるところを見せたいなって。(話題が世間に)あんまり広がらないかもしれないけど、生まれ育った地元の人に見せたいなって思って(シングルを)やることにしたんです」
アイスリボンファンなら記憶に新しいだろう。今年6月11日、アイスリボン札幌大会でハム子の娘であるいぶきはプロレスデビューした。
だが当初の予定では、同大会でサプライズ的にいぶきがエキシビションマッチをやって、「間もなく正式デビューです!」的なアナウンスがされる予定だった。
ところがハム子のパートナーである宮城もちが大会直前に負傷欠場。札幌大会のメインは、ハム子&もちのらぶりーぶっちゃーずで空位になっていたリボンタッグ王座決定戦に臨む予定だった。
大会直前のアクシデント。さぁ困った!と頭を悩ませた取締役選手代表の藤本つかさが目を付けたのが、たまたま道場に練習に来ていたいぶき。藤本が、ハム子のパートナーとして札幌大会でデビューしないか?的な打診をしたところ、恐れ知らずの14歳はまさかの快諾。「ムリムリムリ!」と困惑し、涙を流す母・ハム子をよそに、いぶきの電撃デビュー、母娘タッグ結成、札幌大会のメインでリボンタッグ王座決定戦挑戦という異例尽くしのデビュー戦が電撃決定した。
果たして、いぶきは大役を務めた。さすがに王座奪取はならなかったが、デビュー戦とは思えぬ強心臓ぶりを見せつけた。また直前まで泣いていたハム子も母は強し!な大暴れを繰り広げた。2017年6月11日、生まれ故郷の北の大地で繰り広げられたリボンタッグ決定戦は、星オヤ子にとって一生忘れ得ぬ試合になったことだろう。別の取材をしていた記者もSNSで無事に試合が終わったことを知り、親戚の子どもの受験合格を知ったオッサンのように、妙にホッとしたことが思い出される。
そんな星オヤ子が故郷・岩見沢で初の一騎打ちをおこなうのだ。親戚のオッサンとしては気にせずにはいられない。
と、これまであれやこれやと書いてきたが、記者がハム子と初めて話をしたのが、アイスリボンを担当するようになった今年2月からだからわずか半年前。なのに、なぜそんなにも星ハム子をやけに気になるのかといえば、記者は東京スポーツ紙が大好きだからだ。
頭のなかが???となった方も多いだろうから、説明しよう。
ある時期の東スポには、ハム子が定期的に登場していた。いまは異動されたが、IWAジャパンなども担当した某ベテラン記者の手によってアイスリボンの怪女=ハム子は東スポの紙面を割と頻繁ににぎわしていた。二丁目劇場ならぬ蕨劇場とでもいうべきアイスリボンの記事は非常に面白く、アイスとはまるで縁のなかった記者も楽しみに読んでいた。
だから今年になってアイスリボンを取材するようになった時、初めて星ハム子を見たときはテンションが上がった。記者のなかでハム子は東スポ上のキャラクター。いわばユニコーンとかドラゴンと同じ架空の生き物ぐらいの認識だった。
だから、初めて本物のハム子を見たとき、「オー!」と感動して、本人にも「いつも東スポで見てました!」などと、とても記者とは思えぬ対応を取ってしまった記憶がある。
それもあってハム子の試合をいつも楽しみに見ているのだが、キャリア9年が織りなすプロレスは伊達じゃない。セクシーなコミカル路線もこなせば、真っ向からぶつかり合う肉弾対決で客席を沸かせる。どのリングでも誰が相手でも会場を盛り上げ、何より星ハム子であり続けるそのプロレスはアッパレですらある。
聞けばハム子は大の全日本女子プロレスファンだったそうで、全女好きが高じてプロレスがやりたくなり、北海道では車で片道3時間かけて某道場に通い、2時間の練習を終え、また3時間かけて帰るという日々を送っていたという根性の持ち主。
結婚にともない一度はプロレスの道を断念。ハタチのときに長女を、つまりいぶきを授かったが、プロレスを諦めきれず道場通いを再開。ただ、冬の時期は雪で通うことができないため、一念発起して上京。出げいこ的にアイスリボンの道場に通うようになり、本当にデビューしてしまったという、ある意味ですさまじい経歴の持ち主なのだ。
そんなハム子のプロレスを見ていて思うのは「多分この人はいまでも本当にプロレスが好きなんだろうな」ということ。おまけに名前は星ハム子という一度聞いたら二度と忘れられないようなリングネームだし、ビジュアルもなかなかパンチが効いている。しかもメリハリの効いた面白いプロレスをする。必殺技のハムロールもインパクト大。気にならないと言うほうがウソだろう。
そんなハム子が初の親子シングル対決で娘のいぶきに何を伝えるのだろうか。
上京してプロレス活動を続けてきたぶん、母と娘は親子の時間をあまり取れなかったという。それでもいぶきは母の姿を遠くから見ていて、その背中が輝いて見えたから、同じプロレスラーになろうと思ったのだろう。
そんな星オヤ子はプロレスという肉体言語を使ってどんな会話をするのだろう。いぶきを北海道で預かっていたハム子のお母さんの前で、母と娘はどんなプロレスを見せるのだろう。
いぶきのデビューからいままで、ほんのわずか2カ月だけど、いぶきは先輩と対戦し、華蓮DATEという同世代の選手と闘い、母が着ていたコスチュームから自分だけのコスチュームを着るようになった。
ハム子はハム子で今度は自分がケガをした。アイスリボン自体も大きく揺れて、何度涙したかわからない。わずか2カ月だけど、2カ月とは思えないぐらいいろいろあった。
そんな母と子のあいだにはプロレスという共通言語がある。2人はリングで、言葉以上の何かを伝え合うのではないだろうか。そう思うと、親戚のオッサン気分の記者は、今からちょっとソワソワしたりしてしまう。
…と、ここまであれやこれやと書いておいてなんだが、記者は残念ながら星親子の一戦を取材に行けない。
夏の北海道は涼しくて過ごしやすいだろう。だから、ぜひファンの皆さんに旅行もかねて、足を運んでもらって、SNSなどでその模様を流していただければと図々しくも思う。同大会には、8・27後楽園ホール大会で5度目の防衛戦をおこなうアイスリボンのICE×∞王者・世羅りさや、ウェートリフティング日本代表の経歴を持つマッスルガール・尾崎妹加も出状。さらには〝東洋の神秘〟グレート・カブキも特別参戦し、こちらは舞牙との〝親子タッグ〟を結成するなど400回記念大会らしいラインナップになっている。
故郷、岩見沢で星オヤ子はどんな闘いドラマを繰り広げるのか。現地に行けない記者は6月11日と同じように、スマホ片手にどんな試合で、どんな結末を迎えたのか、チェックしたいと思います。
北都プロレス「チャリティープロレスin岩見沢」
★2017年8月20日(日)午後6時開始
北海道・岩見沢市「イベントホール赤れんが2F」(JR岩見沢駅となり)
①星いぶきVS星ハム子
②仲川翔大VS梅沢菊次郎
③カツオVS斗猛矢
④池田昌樹VS小仲=ペールワン
⑤星ハム子&世羅りさvs尾崎妹加&沙紀
⑥大矢剛功&ラピタバードVSザ・グレート・カブキ&舞牙
⑦時間無制限◎バトルロイヤル
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