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2020-07-13

スポーツとは何か? U -19日本代表の監督に聞く コロナ時代のサッカーとの向き合い方

溜まったマグマを爆発させてほしい

U-19日本代表候補のFW斉藤光毅(横浜FC)

――そうなると、影山監督もここら忙しくなりますね。

影山 本当に心苦しかったんです。代表監督の仕事なんて、ほかの指導者のみなさんや選手たちがバリバリ働いていて、その上に乗っからせてもらっているようなもの。だからこそ、ここからは本当にハードワークしていきます。夏の間も練習試合や親善大会はあるでしょう。そこにも私やスタッフが可能な限り足を運びます。

――高校生も諦めずにやっていれば、影山監督の目に留まる機会は出てきますよね。

影山 私たちはまず、アジアの最終予選へ向けてU-19日本代表の準備を当然やるんですが、U-18やU-17のカテゴリーも候補キャンプを実施して、可能性のある選手たちによりレベルの高い環境での刺激を与えられるようにしたいと思っています。アジア最終予選を突破する部分とはまた別に、日本サッカーとして取り組まなければいけない点だと思います。

――中断したことによる影響は何とも言えない部分があります。

影山 過去に練習や試合を3カ月もしていないなんてことはありませんでした。ただ、逆にデータを取りたいと思っています。休み期間で体が大きくなっているかもしれないからです。高校の途中で大ケガをしてしまって練習を休んだら、体が一気に大きくなったという例が結構あるんです。同じような現象が全国で起こっているかもしれません。日本はトレーニングを休みなくやり過ぎているのではないかとの疑問がずっとありました。「体を大きくするために休養はこれだけ大事」、「オフ期間をしっかり設定すれば選手の身長が伸びる」といったデータが出てくるかもしれません。

――総じて前向きに取り組んでいきたいですよね。

影山 新型コロナウイルスの問題には確かに苦しめられていますが、日本にはいろいろな天災から立ち上がってきた経験があります。レジリエンシー(弾力、回復力)の強さを日本は持っています。

――日本サッカーもサッカーファミリーのパワーを見せるときです。

影山 (10月にAFC U-19選手権<2021年に行なわれるU-20ワールドカップのアジア最終予選>を迎えるにあたり、)「U-19日本代表は2回しか合宿できなかったので負けた」なんて言っている場合ではありません。やれる範囲でやれるだけのことをやります。何より、日本サッカーには素晴らしい「サッカーのある日常」があります。タウンクラブや高体連、Jクラブのアカデミーもある中で、その力を結集して戦うのが代表です。

――U-19日本代表候補の選手たちも、こういうときだからこそ奮い立ってほしいですね。

影山 そういう気持ちで再び集まってくれるでしょう。コロナ期間に溜まったマグマを爆発させてほしいと願っています。火を付けなくてもすでに付いていると思うので、その気持ちを思い切り出させてあげたいです。マグマが溜まっているのは私も同じです(笑)。自宅から徒歩圏内に高円宮記念JFA夢フィールドがあるのに練習ができず、悔しかったですから。

――そうやってマグマを爆発させる指導者のみなさんが全国にたくさんいるであろうことが日本サッカーの強みです。

影山 この期間に少年団、中体連、高体連、タウンクラブの方のさまざまな苦労を聞きましたし、いろいろな取り組みも聞かせてもらいました。すべてが「選手のために」という気持ちを感じました。熱い気持ちは子供たちにきっと伝わりますし、必ず日本サッカーの力になります。いろいろな方が中断期間で努力してきたことは、きっと大きなレジリエンシーを生んで、必ずやコロナ以前よりも強いモノをつくり出していくと確信しています。そうやってみなさんが回復させ、育ててくださった選手たちを借りて戦うのが代表チームです。まずは来年のU-20 ワールドカップへ向けて、日本のサッカーファミリーを代表して全力で戦い抜きたいと思います。

プロフィール

影山雅永(かげやま・まさなが)/1967年5月23日生まれ、福島県出身。ジェフユナイテッド市原(当時)などでプレーし、96年に現役から退く。97年から2年間、日本代表のテクニカルスタッフとして働く。98年にドイツに留学し、1.FCケルンのU-16を指導。2001年から04年までサンフレッチェ広島のトップチームでコーチを務めた。マカオ代表監督、U-16シンガポール代表監督などを歴任し、10年から14年まではファジアーノ岡山で監督として采配を振るう。17年にアンダー世代の日本代表監督に就任し、19年のU-20ワールドカップでベスト16の成績を残した。20年はU-19日本代表監督として、21年に行なわれるU-20ワールドカップ出場を目指す

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