ブラジルの名門、クルゼイロECの育成方法を日本で紹介し、実践するために、2013年に発足した『クルゼイロ・ジャポン』。毎年のように、全国各地で小学生向けにクルゼイロ公認の『クルゼイロ・キャンプ』(https://www.cruzeiro.jp/)を実施し、多くの子供たちが参加した。同キャンプで指導を担当したことのあるクルゼイロの現役指導者、アドリアーノ・コーチに、「シュート」をテーマにして、日本とブラジル、そしてクルゼイロのシュートの違いについて話を聞いた。
上の写真=ブラジルと日本のシュート意識の差がなぜ生まれるのか? クルゼイロのアドリアーノ・コーチが解説してくれた
(出典:『サッカークリニック』2019年2月号)
取材・構成/石田英恒 写真/gettyimages、BBM 協力/スリーライン
アドリアーノ(以下、A) サッカーはゴールを奪わないと試合に勝てないスポーツです。そのためシュートは、「1番」と言っていいくらいに重視している項目です。その中でクルゼイロでは、単純なシュート練習ではなく、試合で起こり得るシュート・シーンを想定したシュート練習を行ないます。しかも、シュート・シーンは可能な限り網羅するようにしています。選手たちがあらゆるシーンに対応できるように、豊富なバリエーションを設定するようにしています。
A シュート練習に関してはかなりの時間を割いています。通常練習でもそうですが、通常練習時間外にも取り組ませています。クルゼイロには、U–14以上を対象にした『GDA』と呼んでいる練習外トレーニングがあります。GDAとは「グループ・ダイヤモンド・アズー」のことで、クルゼイロのエンブレムである「青地(アズー)に星(ダイヤモンド)」を指したものです。居残り練習に近いものかもしれませんが、例えば、シュートに問題を抱える選手がいたら、通常練習時間外に何人か集めて、シュートを徹底的にトレーニングします。
A 私が日本人のプレーに関して知っているのは、日本で4年行なってきたキャンプに参加してくれた子供たちと、ワールドカップで見た日本代表選手のパフォーマンスだけです。日本サッカーのシュート事情についてすべてを知っているわけではありません。
その上で私の考えを言わせてもらうと、現状ではブラジル人選手、あるいはクルゼイロの選手たちのシュート・レベルのほうが日本人選手よりも上だと感じています。日本との差がどこからきているのか考えると、先ほど話した点に行き着きます。つまり、クルゼイロのシュート練習はとても多く、しかもさまざまなバリエーションでのシュート練習を行なっていることが理由だと思います。練習環境の違いによって生まれた差があると思うのです。また、ブラジルは試合数が多いです。小さいときから多くの大会に出場し、実戦の中で競争心を持ってサッカーに取り組めていることも、クルゼイロのシュート力が高い要因の一つと言えるでしょう。
A どの練習であっても、試合に向けて行なわなければいけません。どれくらいのシーンでシュートを打ってきたかによって、試合でのパフォーマンスに大きな差が出ると思っています。
例えば、センターバックをかわしてエリア外からシュートを打たせたり、キーパーと「1対1」をさせたときに、必ずキーパーを抜いてからシュートを打たせたりするなどの制限をかけたメニューも行ないます。
A 確かに、試合に出てくるシーンすべてを前もって経験させることはできないでしょう。可能な限りの準備をしてきたとしても、想定外のことが必ず起こります。そういうときは、試合映像を見て検証し、補っていきます。「シュート前の動きが良くなかった」、「シュート自体に問題があった」などを分析し、練習でその局面を再現し、トレーニングしていくのです。
A まずはシュートを打つときの姿勢です。軸足がゴール方向に向いていること、腕を効果的に使えていることが重要です。さらに、ゴール近くからのシュートではインサイド・キックでコースを狙うこと、ゴールから離れたシュートではインステップ・キックで強いシュートを打つことなどといったキックの使い分けも重要です。ほかにも、シュートを打つ前にフェイントを入れていることも大事な要素となります(下の表)。キーパーとの「1対1」の場面でシュートを打つ前に冷静にフェイントを入れることができれば、ゴールを決める可能性を高められるでしょう。
また、選手一人ひとりがどのような選手であるかを把握し、その選手の得意なところを活かしながらシュートをさせるようにしている点も欠かせません。例えばループ・シュートが得意な選手ならば、キーパーが前に出る状況が生まれるメニューに取り組ませるなど、個々の得意な形を活かせるようにするのです。ブラジル代表のコウチーニョ(FCバルセロナ)は、左サイドから中へ切り込む形でのシュートが得意です。バルセロナでもブラジル代表でも、そういう形をチームとしてもお膳立てしています。コウチーニョはなぜそのシュートがうまくなったかというと、コウチーニョの育成に関わってきた指導者が、彼の得意な形でシュートを打たせる場面を数多くつくってきたことが大きく影響していると思うのです。もちろん、苦手を克服するトレーニングも大切ですが、得意なプレーをさらに伸ばす取り組みも必要なのです。
A 選手の苦手なところを克服しつつ、得意なところを伸ばしていかなければならないことについては、プロも育成年代も変わらないと思います。特にU–12年代は、すべてを基礎から習得しなければならない時期のため、より重要と言えます。
進め方:(1)図のようにサイドで「2対1」、ゴール前に攻撃側と守備側を3人ずつ配置。(2)サイドの赤チームはサークル内でボールを保持し、白は手にボールを持ったまま赤チームのボールを追う。白が赤チームのボールに触れたら、持っているボールを足元に転がしてドリブルし、ゴール前にクロス。(3)ゴール前にいる白チームはゴールを狙い、赤チームはクリア。(4)逆サイドからも行なう
ポイント:(1)対象はU-14。(2)サイドでの「2対1」のうちの「1」は、数的不利な状況でのサイドバックの守備をイメージ。(3)クロスの精度。(4)ヘディングでの競り合い。競り合い後のこぼれ球への反応
アドリアーノ・アンドラーデ(Adriano Andrade)/ 1989年5月24日生まれ、ブラジル出身。大学までアマチュア選手としてフットサルをしていた。その後、サッカー指導者としてクルゼイロECに加わり、U-14担当コーチを務める。また、クルゼイロ国際部で海外からの留学生の指導とコーディネートを任され、2018年9月からはアジア責任者となっている
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