アメリカンフットボールのシーズンが始まった。国内トップリーグ・Xリーグの「X1 スーパー」では、開幕節の6試合があり、虎視眈々と上位を狙う東京ガスクリエイターズが、IBMビッグブルーに快勝した。
X1スーパー第1節東京ガス クリエイターズ○34-9●IBMビッグブルー(2025年09月03日@横浜スタジアム)両チームの対戦は、かってはIBMが圧倒的に優位で、秋のリーグ戦は2021年までIBMの8戦8勝。2019年秋にはIBMが48-7で勝利したこともある。昨年の東京ドームでは、12-7で東京ガスが勝利した。
それから1年。両チームの立場は完全に入れ替わった。ただ、得点だけを見ると東京ガスの圧勝だったが、スタッツは違った。ランはIBM217ヤード、東京ガス138ヤード。パスはIBM152ヤード、東京ガス174ヤード。トータル369ヤード対326ヤードでIBMが上回った。
今年36歳、走るQBとしてプレースタイルを変えず

スコアの差は、勝負強さの差。東京ガスはチャンスをすべてTDに結びつけた。この日のゲームMVPとなったQB徳島秀一の決定力が勝利の原動力だった。
最初のチャンスは、パントブロックから得た。攻めきれずに4thダウン1ヤード、ゴールまで10ヤードが残った。手堅くFGを蹴る場面だが、東京ガスはギャンブルを選択、登場したのがベテランQBの徳島だった。徳島はQBキープで10ヤードを走り切り、鮮やかな先制TDを奪った。
次のチャンスはファンブルをリカバーから。ルーキーQB谷口雄仁が3rdダウン13ヤードで、TDパスを決めた。
IBMはFG(フィールドゴール)を返したが、東京ガスはルーキーRB松元奏が29ヤードを走ってTD。IBMを突き放して、折り返した。
東京ガスは、第3クオーター最初のドライブでもゴール前まで攻め込むと、QB徳島がキープでTDを決め、試合は一方的に。QB徳島は第4クオーターにもランでこの日3本目のTDを奪って、ダメを押した。

徳島の3TDは、10ヤード、5ヤード、7ヤード。ショートヤーデージはなく、1本目は4thダウンギャンブル、3本目も3rdダウン7ヤード TO ゴールと、簡単なシチュエーションではなかった。それだけにその「決め切る力」が光った。
ルーキーQB谷口が決めたチーム2本目のパスTDも、その前のドライブで先制TDを奪っていたため、思い切って勝負に行けた結果だった。
徳島は年末で36歳になる。慶応大学時代は、父・秀樹さんの後を継ぐ2世QBで、富士通QB高木翼の3学年上だった。走力のあるオプションQBとして鳴らし、東京ガスに加入後も、随所で光るランを見せてきた。30歳を過ぎ、一度は引退したが、現役復帰。しかし、アキレス腱断裂で1年全休と、紆余曲折も経てきた。父から受け継いだ背番号8も、「2倍」の16となった。
板井征人HC(ヘッドコーチ)が就任し、チームの強化が進み、IBMやノジマ相模原にも勝利するようになった中で、走るQBとしてプレースタイルを変えずに、結果を出すのは賞賛に値する。
徳島は「TDランは僕の力ではなく、OLのおかげ。OLもRBも、以前より、ぐんとアップグレードしていますから」と語る。ただ、日常に気を付けて、トレーニングも重ねている。「自分もフィジカルはアップしています」と少しだけ誇らしげに言う。
家庭では9歳と5歳の2人の娘の父。30代半ばになって、大怪我もして、でもフットボールを続けていることは「家族には迷惑をかけているし、よく支えてくれていると感謝しています」。この日は、コイントスに次女と手を繋いで参加したのも良い思い出となった。

東京ガスは、今季、久しぶりに米国人QBがいない。エースは若い谷口だ。ベテラン徳島の決定力が必要となる場面が、今後も出てくるだろう。





