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2017-11-14

攻撃的戦術コンセプト 1/3 ミスに対する指導者の姿勢

アドリブや即興のイメージが強い攻撃におけるプレー。
しかし、実際にはセオリーややるべきことが存在する。
例えば、「壁パス」にも行なうべき状況というものがある。
果たして、「壁パス」など、攻撃アクションは、どのような状況とタイミングで
選択すべきなのか? ランデル・エルナンデス・シマルが解説する。

「修正をかける前に、選手の犯したミスが3つのプロセス(知覚、判断、実行)上、どの段階で発生したのかを見極められていますか?」(Q3)

 序章で、私はこのような質問をしました。私は、「見極められるかどうか」は素晴らしい指導者とそうではない指導者を分ける能力の1つになると考えています。指導者には、選手が犯したミスの原因や状況を理解して解決に導く修正方法を見つけ、さらにそれを選手に伝える能力が必要です。そのためには、以下のような3つのプロセスを踏むことになります。
①ミスを見つけ出す
②修正方法を選ぶ(修正方法を知っていなければならない)
③「いつ、どのように、その修正方法を伝えるべきか」を知っている
 優れた指導者になるため、さらに獲得すべき能力(姿勢)を考えていきましょう。

■選手がプレーしている際、最も集中できる。五感のすべてを駆使して起こっていること、そして起こりそうなことをキャッチできる

 私はこれを「存在感」と呼んでいます。指導者は、選手のプレーを分析することに自分の全精力を使い、それ以外のことに惑わされるべきではありません。

■決して焦って行動せず、しかも、瞬時に的確な修正をかけられる。じっくりと観察し、思いついたまま発言せず、その後の影響まで考えて言動を選べる

 単純な技術的ミスに見えても、その原因は前段階にあったりします。多くの場合、プレーに直接関係のないような行動が次の行動の成否を決定しているのです。ですから、指導者には「プレーを再現する能力」が必要なのです。そして、頭の中でプレーを最初まで巻き戻せ、しかも正しく分析するために全体象をとらえられなければなりません。

■選手に対する固定概念や先入観を取り除く

 足の遅い選手がボールに追いつけなかったとしましょう。その際、「足が遅いから」と簡単に結論づけず、走り出す前の準備段階にミスがあったのではないかと仮説を立てて分析することも必要です。

■指導者自身のミスを認め、責任を取る(練習が流れない際、グリッドの大きさ、ルールの数、状況設定などのミスを認める)

■選手を正しい方向へ導くための理論を知っている。選手が改善したいと思っているプレーに対し、正しい改善方法に関して十分な知識を持っている

サッカーを始めたばかりの年代では1つのアクションにおいて多くのミスが起こり得ます。例えば、技術メカニズム、体の向き、タイミングなどに改善点が見られるでしょう。むしろ完璧などあり得ません。にもかかわらず、そうした一つひとつのミスを常に修正しようとすると、選手はミスを恐れてプレーできなくなります。
 それを避けるために指導者は、数あるミスの中から優先して修正すべきミスを決め、かつ修正順序と時期を決められなければいけません。つまり、プランニングして一つひとつのミスをしっかり修正できなければならないのです。
 大事なのは、段階を踏むことです。思ったことをすべて口にせず、「どのような指示を出すか」、「どこまで出すか」を管理すべきなのです。そして修正では、「どのように」、「何のために」を明確にしておかなければいけません。
 大別すると、解決方法の見つけ方には2つあります。1つは選手自身で見つけるものであり、もう1つは指導者が解決策を提示するものです。前者では、選手自身が解決策を見いだせるように指導者はサポート役を担います。
 また、修正の方法と時期は選手によって変えるべきです。同じ問題を抱えていても、サポートを必要とする選手と必要としない選手がいます。ですから、トレーニング中にフリーズしてコーチングすべきなのか、それとも個別に呼んでコーチングすべきなのかを指導者は判断しなければなりません。

出典:『ジュニア年代の考えるサッカー・トレーニング 5』

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