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2017-10-21

技術と戦術を結びつける 序論3/4

ともすれば、日本の指導現場では「戦術指導」は躊躇され、
技術指導がメインになることが多い。
戦術は難しい、とりわけ、ジュニア年代では必要ない、
という意見を耳にすることもある。実際はどうなのだろう?
戦術と技術の関係をランデル・エルナンデス・シマルがひも解く。
(出典:『ジュニア年代の考えるサッカー・トレーニング5』)

①ウオーミングアップにおける戦術

 技術と戦術のトレーニングを分けて行なう方も多いようです。しかし試合中、選手は常にボールや味方、そして相手の状況を考慮しながらプレーしています。ですから、さまざまな練習に戦術的な要素を含めるべきであり、そうしたことは可能です。反復練習やドリル的なトレーニングであっても試合に近い状況をつくり出すことで戦術理解度を高められます。
 ウオーミングアップでも試合に近い状況はつくり出せます。例えば、対戦形式にすることで判断を求められます。そうすれば、体を温めることと戦術的メッセージを伝えることが同時にできます。例を挙げていきましょう。
 

鬼ごっこ(個人)……鬼ごっこでフリー・スペースを見つけることとそれを埋めること、さらにマークを外す動きを覚えられる

鬼ごっこ(グループ)……チーム対抗にすると、逃げるチームは幅をとるようになり、鬼チームはスペースを狭めようとする。角に追い込むプレッシングも必要

「ハンド・パス」のポゼッション……幅、深さを理解させるのに有効。パスラインを引くこと、パスラインを消すこと、ポジショニングを学ぶことができる
 

 練習メニューをただこなすだけでは意味がありません。目的をしっかりと持った上で練習メニューを組まなければならないのです。目的があるかどうかに関する1つの基準は、「試合の状況を理解させることにつながっているか?」と言えます。そして、ウオーミングアップの時間を有効利用すれば、「幅や深さをとること」、「パスラインを引くこと」、「相手を引きつけること」、「スペースをつくり、利用すること」、そして「マークを外す動き」を学べるのです。「ただ体を動かすウオーミングアップをする」のではなく、「ウオーミングアップで特定の戦術項目を学習する」と目的を設定することが可能なのです。

②技術練習における戦術

 技術の反復練習を繰り返すことで選手は「実行のメカニズム」を習得できます。選手が無意識に実行できるようになるまでには、当然、一定量のトレーニングをこなすことが必要です。しかし、反復練習だけでは本当の意味での「技術的に素晴らしい選手」にはなれません。
 なぜなら、「どのように行なうか?」(実行のメカニズム)と同様に「いつ?」、「何のために行なうか?」も重要であり、知らなければいけないからです。ですから、練習メニューを説明する際、「実際のプレーにどうつながるか」も加えなければいけません。
 例えば、次のようになります。
A:インサイド・キックでのパスを練習する際、「このキックは、確実にパスを出したいとき、または短距離から中距離のパスを出すときに使う」と説明する
B:列に並び、指定されている場所までドリブルでボールを運び、足の裏を使ってボールを引いてターンする練習では、「試合中に別の場所にパスラインを引きたいときやサイドチェンジを行ないたいときに使うプレーになる」と話す
C:グループでの技術練習を行なうときも試合の状況に近づけた構成が望ましい(幅と深さの意識、中へのプレーなどを含む)。また、あらゆるシステムでもイメージできるようにすべき。そのため、「AからBにパスし、次にCへパスして……」という説明ではなく、「幅をとった状態から中へパスし、フォワードの落としをもらって前進。それを繰り返して前進し続ける」など、イメージしやすい言葉で説明する
 こうした練習は技術の練習ですが、戦術コンセプトが含まれています。このような練習が土台をつくり、それが発展のベースとなり、ポゼッションや目的別ゲームで活きていくのです。
 では、特定の技術と関連する戦術を解説していきましょう。

【パス】
•ボールを保持する
•プレーを前進させる
•近づくサポート

4人でのパス&コントロール

進め方:図のような配置にして4選手でパス&コントロール
ポイント:試合の状況を意識し、幅(AとBの選手)と深さ(CとDの選手)をとる設定にしている。最初のパスはボールを保持する横パス(戦術コンセプト:ただし、同じ高さでのパス交換は避ける)。スタートのパス以降は前進の要素が入り、深さを利用する

3人でのパス&コントロール

進め方:図のような配置にして3選手でパス&コントロール

複数人でのパス&コントロール

進め方:図のような配置でパス&コントロール

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