

沢田 1年目は映像を使って指導することが多かったのですが、2年目からは少なくなりました。選手たちは各自で試合の映像を見ていますが、指導者のほうから場面を切り取った映像を見せる機会は減りました。その分、練習で同じシチュエーションを再現し、「ここはスライドして守る」、「ここはプレッシャーをかける」などと伝えることが増えています。映像で分かったことを選手に伝え、本当に理解させるために必要なのは「繰り返し言いながらやることなのか」、「映像を使うことなのか」をよく考えるようになりました。
その上で今年度の大きな課題は、勝つことへの執着心と貪欲さをより強く持たせることです。プレミアリーグのチャンピオンシップを連覇したとき(2011年、12年)のような広島らしい貪欲さとエネルギーを再び取り戻したいと思っています。公式戦に勝つだけでなく、練習試合で勝ったり、「1対1」の球際で勝ったりすることも勝ちですし、負けは負けです。「いい試合をすればいい」、「経験を積めばいい」という意識にならないように繰り返し伝えています。
沢田 広島の強みは最大限に活かしたいと思っています。今年度も、週末に福岡遠征を行なったあとの月曜日に、トップチームの若手がJ3のギラヴァンツ北九州と練習試合をすることがあり、ユースから4人が呼ばれました。福岡遠征で2試合プレーしていた選手もいましたが、休ませることはしませんでした。貴重な場があったらどんどん参加させたいと思います。
沢田 現在のユース出身の主力クラスは、森﨑和幸と大学を経由して加入した茶島雄介くらいでしょうか。J1の試合のメンバー表の「前所属チーム」欄を見ると、例えば柏はU-18出身選手が5~6人いるときもあり、広島も以前はこうだったと感じることがあります。トップチームの高いレベルの中でトップ昇格後すぐに活躍できる選手が毎年、何人も出てくるのは現実的なことではないとは言え、「プロのスピードやパワーに慣れればできるだろう」と感じさせる選手を地道に鍛えながら育成していくしかないと考えています。
そのためにもトップチームとの連係は重要です。チャンスがあるときに呼んでもらい、足りないものを経験して再びユースでチャレンジしてほしいと思っています。解決の糸口だけでも見つけておけば進んでいけますし、自分の良さを出せるようになります。そういう選手をたくさん送り出せるように努力していきたいです。
沢田 最近、選手たちに「頭を鍛えろ」とよく言います。壁にぶつかったときは「どんな努力をすればいいのか」を考えなければいけませんし、そのためには頭を働かせなければいけません。ただし、1日で課題を克服するのは難しいので、「やり続けるメンタリティー」、「心が折れそうになっても違う工夫をしながら続ける粘り強さ」が求められます。その2つが鍛えられていないと社会人としても通用しないでしょう。
沢田 試合に出られればいいですが、試合に出られず辛抱しなければいけない時期は必ずあります。そのときに「ひたむきにできるかどうか」で人間性も見えてきます。私としては、若い才能を預かっている以上、プレー面もメンタル面も、「持っているものを引き上げる作業」と「ないものを植え付ける作業」の両方が大事なことだと思います。
沢田 ジュニアユースの監督時代は、ユースに昇格できずに高校のサッカー部に進んだ選手が、インターハイや全国高校サッカー選手権に出て、プレーしているのを見るのが楽しみでした。ジュニアユース時代はハッパをかけてもうまくいかなかった選手が、高校で気持ちを出してプレーしているのを見るのがうれしかったのです。また、例えば昨年ユースからトップに昇格した長沼洋一が今年のルヴァンカップでゴールを決めましたが、プロでの活躍を見るのもうれしいことです。
沢田 やはり、ユース出身選手が中心になって盛り上げていってほしいです。「ユース出身選手は一味違う」と評価されてほしいですし、そのために今後もユースで教えなければいけないことがたくさんあると思っています。

2015年からサンフレッチェ広島F.Cユースの監督を務める。トップチームに好選手を送り込むだけでなく、昨シーズンはプレミアリーグ チャンピオンシップへ導くなど、チーム成績も残している

1993年に柏レイソルに加入し、95年には同クラブのJ1昇格にも貢献。日本代表として4試合でプレーした躍動感あふれる右サイドバックだった
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