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2017-08-07

高校サッカー部で指導する 元日本代表・森山泰行の言葉 「選手のできないところではなく、 いいところに目を向けるようにした」

「1対1」を特集した『サッカークリニック』9月号では、埼玉県の浦和学院高校を率いる森山泰行・監督にインタビューし、「1対1」の指導方法などを聞いています。
 8月4日に今年のインターハイは幕を閉じましたが、森山さんも高校サッカーの名門・帝京高校でプレー(1985年度~87年度)し、同級生で元日本代表の磯貝洋光さんらとともに日本一を目指す強豪校で汗を流した点取り屋でした。その後、順天堂大学を経て名古屋グランパスエイトへ入団した森山さんは、97年に日本代表としても出場、故郷・岐阜でFC岐阜のJ2昇格に貢献したのち、2008年に現役から退いて解説者と指導者の道へ――。14年から浦和学院を監督として率い、現在は指導4年目のシーズンを迎えています。
 今年のインターハイ埼玉県予選ではベスト4で涙を呑みましたが、近年の埼玉県の高校サッカーにおいてメキメキと頭角を現し、注目の存在の一つとなっていることは確か。今日は森山さんの指導の一端を垣間見ることのできる言葉を紹介したいと思います。(協力/吉田太郎、写真/BBM、吉田太郎)

森山 試合中にネガティブな考え方になってしまうのが最もいけないことだと最近考えるようになりました。そのため、私が選手に怒鳴ったりしてネガティブな雰囲気をつくってしまうのではなく、選手を勇気づけたり、前向きな言葉を掛けたりして、次のパワーを生むことにつなげるようにしています。
 サッカー選手としてのアドバイスもしますが、極論を言えば、サッカー選手として成長するための方法論は選手自身が考えればいいと思っています。今、私自身が身につけたいと思っていることは、「どんなことにも動じない人間力」です。人間は嫌なことがあると怒ってしまうものです。しかし、怒ってしまうのは自分自身の問題でもあります。今では、選手には「(私が言ったことが)分からないのであれば、君の良さを出せばいい。責任は私がとる。私が支えてやるから」と言うようにしています。

――プロ生活を長く経験してきた森山監督の練習を見ていると、高校生に対して常に前向きな言葉をかけている姿が印象的でした。

森山 私が2014年に浦和学院の監督に就任したときは、厳しい雰囲気の中での指導だったと思います。しかし、それでは成長しないと思ったのです。私の目は、選手のできていないところにしかいっていませんでした。だから怒ってしまっていました。しかし、選手のいいところに目を向けるようにしたのです。そうしたら、「彼にはこんな才能があるのか」と感じるようになりました。
 1対1、ドリブルなどプレー面における才能だけでなく、応援の仕方などにも才能を感じる選手がいました。そのようにして、「どんな選手にも才能はある」ということを理解するようになったあとは、選手の才能を見て、才能を伸ばすためのアプローチが重要だと感じています。すると、選手たちは安心してプレーするようにもなりました。人間が行なうスポーツですから人間関係も成長する上で重要なのです。だから、最近は褒めることが多いのです(笑)。

抜群のスピードと得点感覚でゴールを量産した現役時代の森山泰行氏。帝京高校時代は、1年生で出場機会をつかみ、3年生のときの全国高校サッカー選手権大会は準々決勝で敗れてしまったが、4試合で5得点の成績を収めた(写真は3年生のときの全国高校サッカー選手権大会東京都A決勝@西が丘)

2014年から埼玉県の浦和学院高校で監督として指導にあたっている森山氏。強化は着実に進んでいる

5月にFC東京の特別指定選手となった浦和学院のFW田中和樹。森山監督同様、スピードと得点感覚を併せ持つ

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