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2017-06-23

ドイツで学んだ日本人指導者に聞くポジショニング

photo/gettyimages

土屋慶太(つちや・けいた)/高校サッカー界の名門、静岡県の清水東高校出身。大学卒業後、ドイツやチェコのクラブに所属し、プロとしてもプレーした。現役引退後は指導者となり、ドイツ・サッカー協会公認のA級(UEFA A級)ライセンスを取得。現在は、東京23FCでヘッドコーチを務めながら、『修徳FCジュニア』など、いろいろなカテゴリーで指導している

『サッカークリニック』2017年5月号の特集「ポジショニング指導は難しくない!」より、特集②「ドイツで学んだ日本人指導者に聞く」のインタビューの一部と映像によるポジショニングの考え方を紹介します。話を聞いたのは土屋慶太さんです。

――さて、ポジショニングを選手が決める際、どのような要素を考慮すべきなのでしょうか?

土屋 ボール保持者はもちろん、相手と味方を含めた選手のポジショニングとその意図など、実に多くのことを察知、判断した上で各選手はポジショニングを決めなければいけません。

――例えば、「ボール保持者に対して各選手が効果的なポジションをとり続けること」が大切と言えますか?

土屋 むしろ、「チームとして効率的なポジションをとること」が大切なのだと思います。例えば、中盤にスペースがないとき、ボール保持者から離れている前線の選手が最終ラインの裏を突こうとすることで相手を下げられます。これもいいポジショニングと言えるでしょう。一方、ボール保持者に近い選手には幅を確保したり、パスコースをつくったりするポジショニングが求められます。一般的には、ポジショニングでは「相手に対応しようかなと思わせる」、あるいは駆け引きが生まれるということが必要でしょう。また、チームで「できる限りの深さと必要な幅」を確保することも必要です。
 攻撃時には、ボール保持者が前を向けているのであれば、より前を狙うポジショニングが有効になりますが、ボール保持者が後ろを向いているならば、その視野に入るポジショニングが有効になります。ですから、「ゴールを奪えるポジションがいい」と単純に考えるべきではなく、ほかの選手との関係性の中で考えるべきだと思います。とは言え、「最終的に目指すのはゴールであり、ゴール前に誰もいなくなったり、ゴールから離れすぎてメリットのないポジショニングにしたりしない」という意識も必要です。

――ポジショニングの基本はどのような練習で伝えられますか?

土屋 「ゴール前の2対1」でもポジショニングの基礎は教えられます。
 ただし、ポジショニングを学ぶ上での前提があります。それは、「ボールと自分だけ」という考え方から脱し、「チームで得点を奪う」という意識を持つことです。また、ポジショニングを意識させるのであれば、ある程度の広さがあるグリッドで行なうべきです。「ゴール前の2対1」であれば、ポジショニングの決定要素の一つである「幅」をとるようなサイズにすべきです。

――「2対1」のトレーニングを通じてどのようなポジショニングを学ぶのですか?

土屋 「2対1」の場合、攻撃側の選手に求められるポジショニングは「2対1を相手に意識させつつ、1人のディフェンダーに2人が対応されない」というものです。攻撃側の2人が近すぎると2人いる数的の価値が薄れてしまいます。逆に2人が離れすぎると、パスが届かなかったりして選択肢になれず、「実質的には1対1」となったりします。そうしたことを避けたポジショニングにした上で、ディフェンダーがパスコースを消したならば、ボール保持者はドリブル突破、ディフェンダーがドリブルのコースを消したならば味方にパス、とプレーを選びます。当然、パスするふりしてドリブル、ドリブルするふりしてパスとしてもいいでしょう。
 ポジショニングにはある程度のセオリーがあると考えています。しかしポジショニングが良ければすべて解決できるわけでもありません。ポジショニングが良くてもファーストタッチでミスしてしまえば相手に寄せられますし、パス・スピードが足りなければ相手にカットされるでしょう。ですから各選手はクオリティーを高めなければいけません。

――「2対1」において守備側はポジショニングに関してどのようなことを学びますか?

土屋 数的不利な状況での振る舞い方を学びます。もっとも、練習では「2対1」が続きますが、実際の試合では時間をかければ味方が戻って来ます。そういう意味では相手に時間をかけさせる、下がって帰陣するというのは大切なポイントと言えます。
 しかし、「ただ下がればいい」とはなりません。下がれば下がるほど、ボール保持者は簡単にゴールに近づけるからです。ゴールに相手を近づけてしまえば、失点の可能性は高くなります。
 守備者がすべきなのは下がりながら「限定すること」です。下がりながらパスコースを消して1対1の局面に追い込むのが理想です。さらにゴールに対して角度のないエリアに追い込めれば、シュートの成功可能性を下げられます。ゴールキーパーがいるような設定であれば、失点の可能性をさらに下げられます。

――「2対1」の守備にとっては、できる限りボールと2人の選手を視野に入れておくことが大切になりそうです。

土屋 ボールを持っていない選手が守備を背負い、ボール保持者がその後方にいるような状況では守備者は対応しやすいと言えます。その場合、ボールを持っていない選手が守備側の選手から離れると、「効果的な2対1のポジショニング」にできます。

――「ボール保持者の視界に入る」が攻撃チーム内におけるポジショニング・セオリーだとしましたら、「視界から消える」が対守備のセオリーの一つになりますか?

土屋 トレーニングの参加人数が増えた場合に「視界から消える」という要素が入ってきます。
 「3対1のポゼッション」では「視界に入る」がメインテーマになります。ディフェンダーの陰に隠れずに2つのパスコースをボール保持者に与えることが必要になるからです。「4対2のポゼッション」になると左右に開いてギャップをつくって利用するというプレーが必要になります。「裏のスペースを使うイメージ」です。
「4対1のポゼッション」は「3対1のポゼッション」を楽にしたトレーニングと考えてもいいでしょう。ポジショニング向上よりもテクニック向上をより重視したトレーニングと言ってもいいと思います。

土屋 positioning

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