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2025-10-31

【アメフト】法政大SF浅賀大生 ラグビーで磨いたタックル「早稲田戦はフィジカルで圧倒したい」

浅賀は法政大守備の最後尾を抜群の存在感で守る=撮影:北川直樹

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アメリカンフットボールの関東大学1部TOP8は、10月26日に第6節で法政大学と慶應義塾大学が対戦した。法政大が21-0で完封勝利を収め、全国トーナメント出場の要件となるリーグ3位以上を決めた。雨の降るコンディションの中、法政大守備陣は慶應大の攻撃を完全に封じ込めた。守備の要として4度のタックル、1度のロスタックルを記録したSF浅賀大生(あさか だいせい・4年=法政二)は、ラグビーで培った強力なタックルを武器に慶應オフェンスをシャットアウトし、チームを支えた。浅賀は、11月9日の早稲田大学戦に向けて「フィジカルで圧倒したい」と意気込む。【写真・文 北川直樹】


浅賀、4タックルで貢献も、菅野HCは「組織力の低さ」を指摘

法政大は第1クオーター(Q)残り6分36秒、RB小松桜河(4年=日大三)の2ydTDランで先制すると、第2Qにも小松のTDで14-0とリードを広げた。第4QにはWR山本健二朗(4年=日大二)が2ydTDランを決め、21-0で試合を終えた。
守備陣は慶應大の攻撃を完全に封じ込めた。特にDB陣の活躍が光り、DB高山晃(4年=法政二)が第3Qにインターセプトを決めるなど、パスカバーで慶應大を苦しめた。一方で、DLとLBのフロント陣にも見せ場があった。DL瀧川元煕(3年=佼成学園)、赤穂谷怜旺(1年=法政二)、犬飼真基(2年=佼成学園)らが計3回のQBサックを記録し、プレッシャーをかけ続けた。
SFの浅賀は4度のタックル、1度のロスタックルを記録。第2Qには慶應RBのランを-1ydに抑え込み、第3QにもQBのランをロスタックルで仕留めるなど、要所で存在感を示した。
しかし、菅野洋佑ヘッドコーチ(HC)は試合後、ディフェンス全体に対して厳しい評価を下した。
「DBは良かったですけど、DL、LBのフロント陣は組織力の低さが露呈した試合だったと思います。ロングドライブを許してしまったり、陣取り合戦で負けている。3&アウトで止められなかった場面も多かったです」
得点こそ許さなかったものの、慶應大に対して十分な内容ではなかったという認識だ。前半にはタックルミスでファーストダウンを許す場面もあり、「もっと早く勝負を決められた試合だった」と菅野HCは振り返った。

菅野HCは慶應オフェンスにロングドライブを許した守備の出来に、厳しい評価を示した=撮影:北川直樹
菅野HCは慶應オフェンスにロングドライブを許した守備の出来に、厳しい評価を示した=撮影:北川直樹

ラグビー出身「生身のほうが怖くなかった」

浅賀がアメリカンフットボールを始めたのは、大学入学後。中学から高校までの6年間はラグビーに打ち込んできた。
父の浅賀保元さん(52)は立教大学でアメフトをプレーしたフットボーラーだったが、浅賀は「あまり無理に勧めることはしない感じでした」と振り返る。法政二中からラグビーを始め、二高ではLO(背番号5番)としてプレー。神奈川選抜に選ばれ、県ベスト8の成績も残した。
「タックルを武器にしていました。高校1年生から試合に出させてもらえたのも、そのタックルがあったからだと思います」
大学進学を控えた浅賀は、寮生活が必須となる法政大ラグビー部での活動は、自分には難しいと判断。友人として仲が良かった矢満田衛良(やまだ えいすけ)、林凌平に相談し、アメフト部に入ることを決めた。
「タックルすること以外は、全然違いましたね」。浅賀は当初、ラグビーとアメフトの違いに戸惑った。特に印象的だったのは、防具の存在だった。
ラグビーは身一つで相手に向かっていく。一方、アメフトでは防具を身につけるからこそ、より激しいヒットが生まれる。浅賀にとって、その感覚の違いは大きかった。
「今となっては、ラグビーは防具がないんで怖いです。ヘルメットもしないんで(笑)。今は(アメフトに)慣れましたけど、最初の頃はラグビーの方が怖さはなかったですね。防具がある分、アメフトのヒットは勢いがすごいんで」
当初はコンタクトの違いに戸惑ったが、いまはアメフトにフィットしている。
浅賀はサイズがあり嗅覚、タックル能力ともに能力が高い=撮影:KCFA南雲修信
浅賀はサイズがあり嗅覚、タックル能力ともに能力が高い=撮影:KCFA南雲修信

カバーの理解に丸2年「ステップもファンダメンタルも全部練習」


浅賀はアメフト部に入部後、ディフェンスの基礎を学ぶために守備範囲が広いLBを希望した。ただ、アメフト特有の戦術理解には時間がかかったという。
「ステップやファンダメンタルなど、基礎的な部分をたくさん練習しないといけなかったです。法政は1、2年生のうちはファンダメンタルを集中してやるんで、それが実って3年生から試合に出られるようになりました」
中でも特に苦労したのは、アメフト独特のカバーやアサイメントの理解だった。「それにも、同じくらいの時間がかかりました」。ラグビーは状況判断が重視されるスポーツだが、アメフトはプレーごとに細かく役割が決められている。その違いを理解し、体に染み込ませるまでに、丸2年を要した。
下級生時代は、現在RBとして活躍する中川達也(4年、明治学院)とともに筋トレルームに残ってトレーニングを重ねた。「家も近いので、練習後に一緒にサウナに行ったりしていました」と浅賀は笑う。地道な努力を積み重ね、3年時から試合出場の機会をつかんだ。
現在はSFとして、ランサポートを中心にプレーする。「パスよりはランのサポートの方が楽しいです」と浅賀。ラグビーで磨いたタックルスキルが、最も生きるポジションだ。

アメフト特有のシステム理解には苦労したが、フィジカルなタックルはラグビーの経験が生きた=撮影:北川直樹アメフト特有のシステム理解には苦労したが、フィジカルなタックルはラグビーの経験が生きた=撮影:北川直樹

 菅野HCが信頼を寄せる浅賀の冷静な意見

菅野HCは浅賀をこう評価する。「フィジカルがめちゃくちゃ強い。生まれ持ったフットボールのセンスや嗅覚(きゅうかく)もとてつもないですが、それ以上に努力家でもあるのが彼の良さです」
特に感謝しているのは、浅賀の冷静な意見だ。
「僕自身DBの経験がないので、紙の上ではできるアサイメントやスキームなどを、作ってしまうことがあるんです。そういうときに浅賀はしっかり『それは選手的にやりにくいので、もっとこうしてほしいです』と、しっかり対等に会話してくれる存在です。コーチとしては、すごくありがたいですね」
菅野HCは、理論上は可能でも実際には無理のあるオーダーを出してしまうことがある。そんなとき、浅賀は遠慮なくプレーヤー目線で意見をするのだという。浅賀は言う。
「僕はリーダーシップはあまり無いと思うんですが、分からないことはすぐ菅野さんに聞いて、曖昧なことをなくすことは大事にしています」
浅賀本人は謙遜するが、菅野HCにとって浅賀は選手とコーチをつなぐ重要な存在だという。今年のDB陣は経験者が少なく、3年のCB岡村裕(佼成学園)、1年のSFジュッフ ムハンマドゥ(明治学院東村山)らを中心に若い選手が多い。浅賀は南部宏明(4年=法政二)、五十嵐勇人(4年=法政二)らとともに、リーダーシップを発揮している。
菅野HCは浅賀への期待をこう語る。
「彼の持ち味はハードタックル。早稲田戦は、相手がビビり上がるぐらいのハードタックルを期待しています」
立教戦ではゴール前を死守し、高山が決めたピック6につなげた=撮影:KCFA南雲修信
立教戦ではゴール前を死守し、高山が決めたピック6につなげた=撮影:KCFA南雲修信

甲子園ボウルの雪辱を胸に7kg増量


浅賀は昨年の甲子園ボウルで、立命館大学を相手に35-45の敗戦を経験している。
「昨年の甲子園ボウルは1対1の能力差でやられちゃったと思うんです。そこから今シーズンボウルまで、自分自身の体重を7kgぐらい増やして、今はフィジカルで負けないようにしています」
その前に立ちはだかるのが、11月9日のリーグ最終戦となる早稲田大学戦だ。早稲田のエースRB安藤慶太郎(4年、早大学院)は、学生界随一の強力なランナーとして知られる存在。
「安藤君は強いランをしていて、これまでの試合を見ていても、しっかり止めないと厄介だなと思っていました。今、ディフェンス全体でタックルミスが出ちゃってますけど、ミスが出たら安藤君には一発で持っていかれてしまう。脅威だと思うんです。この2週間、しっかりディフェンス全体で課題を潰して、試合ではみんなで止められるようにしたいです」
ラグビーで磨いた強力タックルに、地道に学んできたフットボールスキームの理解、そしてフィジカル。法政大守備陣の要として、まずは早稲田への勝利を誓う。

背番号5は高校時代のラグビーのポジションによるもの。プレースタイル同様硬派で真面目な選手という印象を受けた=撮影:北川直樹
背番号5は高校時代のラグビーのポジションによるもの。プレースタイル同様硬派で真面目な選手という印象を受けた=撮影:北川直樹

【北川直樹】

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