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2025-12-18

【陸上】全国高校駅伝 エース頼みのチームから脱却 須磨学園高・池野絵莉「駅伝を全力で走れるっていうことがすごくうれしい」

前回、ケガの影響で1区を走ることができず、3区に回った池野。今季は万全を期して1区に挑むつもりだ(写真/田中慎一郎)

12月21日(日)、京都・たけびしスタジアム京都をスタート・フィニッシュとする全国高校駅伝が開催。10時20分からは37回目を迎える女子が21.0975kmで、12時30分からは76回目となる男子のレースが42.195kmで行われ、男女それぞれ都道府県代表の47校と11地区大会を勝ち抜いた11校を合わせた58校が都大路でタスキをつなぐ。そのなかから、注目ランナーを3回にわたって紹介。2人目は、須磨学園高(兵庫)の池野絵莉(3年)だ。

堂々と1区でチームの結果に貢献できる走りがしたい

3年連続29回目の出場となる須磨学園高(兵庫)は、前回、優勝2回・入賞25回を誇るチームにとって“どん底”の23位だった。かつてない危機感から出発した今季のチームは、エース池野絵莉(3年)を中心に入賞返り咲きを掲げて都大路に挑む。

「昨年は池野頼みのチームでした」と話すのは濱本憲秀先生。池野は2年時からインターハイ1500m、3000m2種目入賞を果たし、チームキャプテンも任された。チームの誰からも「任せておけば大丈夫」と信頼される存在だった。

しかし、前回の都大路はエース頼みが凶と出た。太ももを痛めたことを機に体の左右のバランスを崩してしまい、本来走るべき1区を走れなかった。代役が走った1区は33位と出遅れ、3区を走った池野も区間11位で挽回できず、出場した都大路の連続入賞が25回でストップした。池野は「駅伝で活躍したいという気持ちが、須磨学園に入学する決め手だったので、その駅伝がすごく悔しいものになってしまい、本当につらかったです」と思い出す。

そんな状況は変えなければならない。池野頼みを見直すため、「去年は走りの面でも行動の面でも、池野に頼ってばかり、任せっ放しでした」と言う金子聖奈(3年)が、今季はチームキャプテンを池野から引き継いだ。

さらに、濱本先生は「今までの先輩がやってきたことを何となくやるのではなく、意味をちゃんと理解してやろうと、そこは大事にしてきました」と言い、凡事徹底を促した。金子も「全員が自分のやるべきことを見つけてやろう」と呼びかけた。池野は「みんなと分担して、みんなで頑張れる状況になっていることがすごくいいなって思います」と、チームの変化を歓迎する。


池野は今季もトラックシーズンから活躍した。インターハイでは1500m6位、3000m4位。国スポ3000mでは9分04秒37の自己ベストで3位になった。そして、元気に迎えた駅伝シーズン。池野は兵庫県大会1区で19分16秒。兵庫のコースでは、1500m、3000m、5000m日本記録保持者の田中希実(New Balance、西脇工高出身)しか達成していない19分20秒切りを達成してみせた。

池野をその気にさせたのは、全国のライバルたちだ。「各地の1区の記録をチェックしたら、19分前半とか、19分を切ったりとか、すごい選手がそろっていて、去年のタイム(19分51秒)なんかじゃ勝負にならないと思って走りました」と振り返る。

ライバルには当然、芦田和佳(立命館宇治高3年・京都)もいる。前回都大路3区、今季の近畿大会、インターハイ、国スポ、どのレースでも池野の前に必ず芦田がいた。都大路では1区で対決する公算が大きい。勝ちたい気持ちをストレートにぶつけて勝負するつもりだ。

兵庫県大会で「駅伝を全力で走れるっていうことがすごくうれしい」と笑顔を見せた池野。「私はエースの走りを堂々とできるような選手でいたいと思っていて、今年は全国でも1区を走って、ちゃんとチームの結果に貢献できるような走りがしたいと思っています」と意気込む。

濱本先生が「池野以外にも磨けば光る原石が多い」と評する今季の須磨学園高。一人ひとりが全力で駅伝を走り終えたとき、満点をつけたくなる笑顔が広がっていることだろう。

文/中尾義晴 写真/田中慎一郎

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