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2025-12-22

【アメフト】立命館宇治が佼成学園を35-0で完封しクリスマスボウルを制す 主将QB大鹿蓮が3TDパスの活躍

2年ぶり4度目の優勝を決めた立命館宇治。中央が主将QBの大鹿蓮=撮影:北川直樹

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アメリカンフットボールの全国高校選手権大会決勝、第56回クリスマスボウルが12月21日に横浜スタジアムで行われ、立命館宇治高校が35-0で佼成学園高校を下し、2年ぶり4度目の高校日本一に輝いた。立命館宇治は主将QB大鹿蓮(3年)が3つのTDパスを決めて三隅杯(最優秀バックス)を獲得。守備陣もLB高島舷太(3年)が3つのインターセプトを記録するなど、攻守にわたって安定した試合運びを見せ、佼成学園を完封した。立命館宇治は総獲得337ydと佼成学園の136ydを大きく上回る攻撃力を見せつけた。クリスマスボウルで完封勝利したのは、2000年の大産大附属高の64-0(対 法政二高)以来25年ぶり。【北川直樹】

立命館宇治 ○35-0● 佼成学園(横浜スタジアム、来場者数2938人)

序盤から主導権を握った立命館宇治、前半で21-0のリード

立命館宇治は第1Q、RB森本悠生(3年)のランでダウンを更新しながら着実に前進。QB大鹿からWR小波津 航児エンリケ(3年)、RB中川丸玖(1年)へのパスを通し、敵陣22yd付近まで侵入すると、大鹿からWR西田宗稜(2年)へのTDパスが決まり、8分過ぎに先制した。

一方の佼成学園はQB曽我部智希(2年)のロングパスで反撃を試みたが、攻撃のリズムをつかめないまま第1Qを終えた。

第2Qに入ると、立命館宇治の攻撃に変化が出る。リバースからのトリックプレーでボールを大鹿に戻し、そこから大鹿が投じたパスで敵陣11ydまで前進。その後、大鹿から西田へのTDパスが決まり、6分過ぎに14-0とリードを広げる。

佼成学園もQB曽我部からRB髙岡力(3年)へのショベルパス、WR藤田丈(2年)へのパスでダウンを更新し、ハーフラインd付近まで前進したが、立命館宇治DB松本悠里(2年)らのQBサックで大幅にロスし、パントに追い込まれた。

前半終了間際、立命館宇治は佼成学園のパスインターフェアの反則で15yd前進し、敵陣21ydまで到達。大鹿から小波津へのTDパスが決まり、残り50秒に21-0と大きくリードして前半を折り返した。

立命館宇治は大鹿を中心としたパス攻撃が威力を発揮した=撮影:北川直樹
立命館宇治は大鹿を中心としたパス攻撃が威力を発揮した=撮影:北川直樹

立命館宇治守備がインターセプトで試合を決定づける

後半に入っても立命館宇治の勢いは止まらない。西田のパントリターンで敵陣47ydの好位置から攻撃を開始すると、大鹿から西田へのパスでさらに前進。すると一度ボールを受けた中川が小波津へパスを投じるスペシャルプレーが決まりTD。1分過ぎに28-0と差を広げる。

佼成学園はQBを辻岡塔吾(1年)に交代して反撃を図ったが、辻岡のパスを立命館宇治LB鈴江貴仁(3年)がチップし、これを高島がインターセプト。攻撃権をつかんだ立命館宇治は、大鹿から小波津へのパスで敵陣5yd付近まで前進すると、RB森本がエンドゾーンに飛び込んで5本目のTDを挙げ、8分過ぎに35-0と突き放した。

第3Q、立命館宇治RB森本が飛び込んでTDを決めた=撮影:北川直樹
第3Q、立命館宇治RB森本が飛び込んでTDを決めた=撮影:北川直樹

佼成学園は、第3Q終盤にQBを中島楽来(1年)に交代したが、立命館宇治の反則で前進したものの、得点には至らなかった。

第4Qに入り、佼成学園はRBに入ったLB吉岡獅音(3年)のラン、QB中島のキープで敵陣26yd付近まで前進。さらに敵陣12yd付近まで迫ったが、4thダウンギャンブルが失敗に終わり、3分に攻撃権を手放した。

佼成学園は5分過ぎに回ってきた攻撃で再び前進を試み、スペシャルプレーから吉岡がボールを投じたが、LB高島が2本目のインターセプトを記録し、佼成学園の反撃の芽を完全に摘んだ。

終盤は両チームが4thダウンギャンブルを選択する場面が続いたが、いずれも失敗。佼成学園のラストプレーで、病気のため欠場が続いていたエースQB平本将悠(3年)が登場。思い切って投じたロングパスをLB高島がインターセプトし、試合終了となった。

病気のため春以降欠場した佼成学園QB平本がラストプレーで出場した=撮影:北川直樹
病気のため春以降欠場した佼成学園QB平本がラストプレーで出場した=撮影:北川直樹

QB大鹿を中心とした立命館宇治の攻撃が佼成学園を圧倒

立命館宇治は攻撃回数49回で総獲得337yd(ラン78yd、パス259yd)と、パス主体の攻撃を展開した。三隅杯(優秀バックス)を受賞したQB大鹿を中心としたパスオフェンスは、20投15成功、259yd、4TDと高効率のパフォーマンスを記録。大鹿はWR西田へ2本、WR小波津へ1本のTDパスを決め、佼成学園ディフェンスを翻弄した。

西田は2本のTDレシーブに加え、キックオフ、パントのリターンでも好位置を確保するなど活躍。小波津も2本のTDレシーブを記録し、パスユニットが立命館宇治の勝利に大きく貢献した。

ランはRB森本が着実にゲインを重ね、TDも記録。ルーキーRB中川はランプレーだけではなく、パスを投げる、受けると多彩な攻撃で佼成学園を苦しめた。立命館宇治は19回の1stダウンを獲得し、そのうち13回をパスで更新するなど、パスオフェンスの強さが際立った。

ディフェンスは、安藤杯(優秀ライン)を受賞したDL池端薫(3年)がフロントを支え、LB高島が3つのインターセプトを決めて佼成学園の攻撃を完全に封じた。DB松本らのQBサックも含め、立命館宇治ディフェンスは終始佼成学園オフェンスを抑え込み、自由にさせなかった。

立命館宇治WR小波津は2TDと大活躍=撮影:北川直樹
立命館宇治WR小波津は2TDと大活躍=撮影:北川直樹

勝負どころでインターセプトを決め、完封に抑えた高島=撮影:北川直樹
勝負どころでインターセプトを決め、完封に抑えた高島=撮影:北川直樹

一方の佼成学園は、総獲得136yd(ラン86yd、パス50yd)と立命館宇治を大きく下回った。QB曽我部、辻岡、中島、平本と4人のQBを起用して反撃を試みたが、パスは23投7成功、成功率30.4%にとどまり、3つのインターセプトを喫した。随所でRB髙岡、吉岡のランで前進する場面はあったものの、1stダウンは10回と立命館宇治の19回を大きく下回り、勝負に出た4thダウンギャンブルも決まらず、流れを引き寄せることができなかった。敢闘賞を受賞したDL佐々木励恩(2年)、LB吉岡、DL森野倭(3年)らを中心に守備陣が奮闘したが、立命館宇治の多彩な攻撃を止めることはできなかった。

立命館宇治は攻守にわたって完成度の高いフットボールを披露し、35-0の完封勝利で2年ぶり4度目の高校日本一の座をつかんだ。

佼成学園LB吉岡はRBでも起用され、ラン・パスと奮闘した=撮影:北川直樹
佼成学園LB吉岡はRBでも起用され、ラン・パスと奮闘した=撮影:北川直樹

立命館宇治・主将QB大鹿蓮のコメント

これまでオフェンスで勝ったと言える試合はほとんどなく、ディフェンスに助けられて勝ってきたチームだったと思います。だからこそ、決勝はディフェンスのためにも、これまで支えてくださった方々のためにも、オフェンスで勝つ試合を見せたいと思っていました。それが形になって、本当に良かったです。

三隅杯受賞は嬉しいですが、正直、この賞は自分が取るべきだとは思っていませんでした。オフェンスで勝てたのは、OLが守ってくれて、WRがパスをとってくれて、RBが体を張ってくれたからで、自分はその中でボールを配っていただけです。個人の賞というよりはチーム全体の評価だと思っています。本当は周りの選手が取ってほしかった、という気持ちの方が強いです。

今日はウォームアップの時点で自分の役目は果たせるという感覚はありました。これまで応援してくださった方々の想いを受けて、フィールドに立てたと思います。

キャプテンとQBを兼務するのは簡単ではありませんでしたが、QBは周りを生かすポジションなので、キャプテンとしても同じ意識で取り組んできました。自分が引っ張るというより、みんなが頑張ってくれるチームを作りたいという思いが強かったです。

これまでのキャプテンの先輩方から多くを学びました。1年生の時は厳しく引っ張るタイプのキャプテン、2年生の時は誰にでもフレンドリーなキャプテンを見てきて、その両方の良い部分を取り入れたいと思っていました。その中で、日本一を本気で目指すなら、言わなければならないことは言わなければならないと覚悟を決めました。

実際、言い方が強くなりすぎてしまったこともありました。後から一人で振り返って、「もう少し別の言い方があったのではないか」と反省することも多かったです。ただ、日本一を目指す以上、甘さは出せないと思っていましたし、その姿勢を仲間が理解してくれたことが、最後までチームが一つになれた理由だと思います。

アメフト以前に、人として正しいことを徹底したいという思いがありました。そうした日常の部分からチームを整えることが、日本一につながると信じていました。

今季は特に基礎を大切にしてきました。シーズンを通して難しいプレーに取り組む中でも、調子が落ちた時ほど原点に立ち返ることを意識し、ウォームアップでの一投一投も試合のスローと同じだと捉えて準備してきました。

クリニックの「QB道場」で新生剛士さんから教えていただいたことも大きかったです。投げる動作だけでなく、体の軸を安定させる体の使い方や、投げる前の準備の重要性を改めて学び、基礎を徹底する意識がより強まりました。技術面だけでなく、QBというポジションに求められる声の出し方や声掛け、コミュニケーションの取り方についても教わり、オフェンスをまとめる存在としての振る舞い方を見直すきっかけになりました。

そうした基礎の積み重ねと準備の質を高めてきたことが、今日のパフォーマンスにも表れたと感じています。

このチームで日本一になれたこと、そしてキャプテンとして仲間と一緒にやり切れたことを、心から誇りに思います。大学でも1年からどんどん挑戦して、チームを勝たせるQBになりたいと思います。

 佼成学園LB吉岡はRBでも起用され、ラン・パスと奮闘した=撮影:北川直樹
主将、QBと大役を全うした立命館宇治 大鹿=撮影:北川直樹

立命館宇治・木下裕介監督のコメント

昨年の敗戦を経て、「何が何でも日本一を取りに行く」という強い思いでスタートしたシーズンでした。その中心にいたのが大鹿で、彼のリーダーシップなくして今年のチームはなかったと思います。

チームとしては、人間力が決して高いとは言えない集団からスタートしました。アメフトだけでなく、日本一にふさわしいチームを目指す中で、高校生なのでいろいろなエラーもありました。その都度「どうすればもっと良いチームになるのか」を考えながら進んできました。正直、しょうもないこともいろいろ起こりながら、今日を迎えています。

大鹿は、いわゆるスーパースタータイプのQBではありません。朝早くから準備をし、練習後も仲間を集めて取り組むなど、地道な努力を積み重ねてきた選手です。その積み重ねが、この1年での大きな成長につながり、今日のプレーにもはっきり表れていました。

QBとキャプテンの兼務は簡単ではなく、壁にぶつかる時期もありました。QBとしてうまくいかない時に、キャプテンとしての役割にも影響が出てしまう場面もありましたが、春以降はチームの信頼を勝ち取り、周囲から認められる存在になっていきました。強い気持ちゆえに言葉がキツくなることもありましたが、それ以上の行動と結果を示してきたからこそ、今では誰もが認めるキャプテンです。

印象的なエピソードは、下校時刻を守らなかった部員をバス停で強く叱っていたときのことです。それを見ていた他部の監督が、「アメフト部には厳しい先生がいるな」と思ったそうですが、実はそれが大鹿だと後に知って驚かれました。間違ったことは間違っていると言える強さが、彼の強さであり、このチームの強さだったと思います。去年にはなかった一面で、今年になってからの彼の大きな成長だと思います。

その厳しさは、自分にも他人にも向けられたものでした。自覚と責任を持ってチームを引っ張ろうとする姿勢が、大鹿を大きく成長させ、このチームの強さにもつながったと思います。日本一という結果は一つの到達点ですが、人として、チームとして、私たちはさらに成長していかなければならないと感じています。

立命館宇治 木下監督は、キャプテン大鹿の成長を称えた=撮影:北川直樹
立命館宇治 木下監督は、キャプテン大鹿の成長を称えた=撮影:北川直樹

小波津とともに2TDの活躍だった立命館宇治 WR西田=撮影:北川直樹
小波津とともに2TDの活躍だった立命館宇治 WR西田=撮影:北川直樹

立命館宇治LB高島が3本目のインターセプトを決めて試合終了。2年ぶりの日本一を決め喜ぶ選手ら=撮影:北川直樹
立命館宇治LB高島が3本目のインターセプトを決めて試合終了。2年ぶりの日本一を決め喜ぶ選手ら=撮影:北川直樹

立命館宇治幹部のDB木原功聖(24)、大鹿蓮、DL池端薫(77)=撮影:北川直樹
立命館宇治幹部のDB木原功聖(24)、大鹿蓮、DL池端薫(77)=撮影:北川直樹

北川直樹

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