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2026-01-16

【相撲編集部が選ぶ初場所6日目の一番】今年は“勝ちにこだわる”阿炎が6連勝。優勝争いの単独トップに

右の突きで距離を取り、朝紅龍に左の廻しを与えないようにしながら追い込む阿炎。最後は突き出して、ただ一人、初日から6連勝とした

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阿炎(突き出し)朝紅龍

落ち着いて、かつパワフルに、小兵の朝紅龍を料理した。
 
阿炎がこの日も元気な相撲で白星を得て、初日から6連勝。きのうまで全勝でトップに並んでいた欧勝馬がこの日、美ノ海に押し出されて土がついたため、幕内でただ一人の全勝となり、単独トップに躍り出た。
 
阿炎の初日から6連勝は、令和4年の1月場所以来。実はその前の令和3年11月場所でも初日から6連勝を記録しているが、この2場所はいずれも12勝まで星を伸ばしている。
 
印象に残ったのは、立ち合いカチ上げでいったことだ。この日の相手の朝紅龍は小兵で横の動きもあるので、まあモロ手突きで入るだろう、と予想していたが、それを裏切ってきた。
 
以前は阿炎の立ち合いはほぼモロ手突き、たまに横への動き、という感じだったが、このところ、モロ手突きだけでなく、差しにいったり、廻しを取りにいったり、あるいはこの日のようなカチ上げに出たりと、バリエーションを増やしている。「きょうは距離を空けて取ろうと思った。無理やり出ずに、しっかり足がついていった」と阿炎。
 
おそらくは相手に左の廻しを与えない、というところも重視していったのだろうと思うが、このあたりにも、ただの調子相撲ではない工夫がうかがえる。
 
聞けば、今場所の変身の陰には、「今年は勝ちにこだわることにした」という、心境の変化があったようだ。

「去年は相手のこととか考えたり、勝ちよりも相撲の内容、ということを考えてやっていた。でもその結果、1回しか勝ち越せなかった。先代(元関脇寺尾の錣山親方)には“負けて覚える相撲かな”と教わっていたけど、それは先代の慰めでもあったと思う。考えてみたら、勝ちにこだわっていった結果、負けたときにそういうふうに声をかけてもらっていたんじゃないかと。だから、先代に教わったことを忘れるんじゃなくて、それを踏まえたうえで、今年は勝ちにこだわろうと」
 
以前は幕内上位が定位置だったが、昨年1回しか勝ち越せなかったこともあり、今場所は前頭二ケタの地位。ここで持ち前の負けん気に火がついた。

「周りから“大人になったね”と言われて。普段はそれはいいんですけど、僕は現役力士なんで。闘志が表に出ないように見えているのなら、それはよくないんじゃないかと。だから勝ちたいという気持ちを出していこうと」
 
そして、阿炎が本来持つ、勢いのある動きが戻ってきた。この一年、いろいろ考えたうえでここに戻ってきたことは、決して回り道にはならないはずだ。
 
過去には優勝経験もある阿炎。まだ6日目なので、ちょっと気の早い話ではあるが、もともと上位常連でもあり、もしもこのまま優勝争いに残っていって、終盤上位陣に当てられたとしても、十分勝っていける可能性があるところは頼もしい。むしろ、立ち合いのバリエーションを増やして、どう来るかますますわからなくなった阿炎は、ここ一番の勝負度胸のよさとも相まって、受ける上位陣にとって、何ともやりづらい相手になるだろう。
 
この日を終わって1敗の横綱・大関陣には、過去、対安青錦は0勝2敗だが、大の里には3勝6敗で、3連勝したことがあり、豊昇龍には9勝12敗で、なんと5連勝したことがある。果たしてこのまま終盤まで飛ばして、上位陣との直接対決が組まれるところまでいけるか。
 
あす7日目の朝乃山との対戦も楽しみ。いずれにしても、このダークホースが場所を引っ張り、かき回してくれれば面白くなることは、間違いがない。

文=藤本泰祐

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