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2026-01-22

【相撲編集部が選ぶ初場所12日目の一番】頭一つ抜けた! 安青錦が丁寧に取って熱海富士を退け、ついに単独トップに

理詰めの攻めで熱海富士に力を出させず、最後は天を仰がせた安青錦。あとは新大関優勝へ、一番一番勝っていくだけだ

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安青錦(寄り切り)熱海富士

新大関ではあるが、もはや堂々の「大関相撲」だった。
 
安青錦が、平幕との力の差を見せつける、スキのない相撲で熱海富士を退けた。
 
12日目の2敗対決。終盤にきて両横綱を連破した熱海富士の好調ぶりに、「もしかしたらパワーで圧倒も?」とも思ったが、それは空想でしかなかった。現実では、安青錦が丁寧な相撲で、熱海富士に力を出させることなく完封した。
 
立ち合い、熱海富士は右を固めてカチあげ気味の体当たり、安青錦は頭と両手の三点で当たって突いて出た。踏み込みとしては熱海富士のほうが勝っていたが、やはりこの二人では高さが違う。いったんハジき合った後、再び差しにきた熱海富士の右を、安青錦が左で下から強烈に押っつけると、熱海富士の踏み込み勝った分はたちまち押し戻された。また少し体が離れたところで、安青錦は頭を相手のアゴの下に当てながら左、右と下から入ってモロ差し。
 
そして冷静だったのは、熱海富士がこれを嫌って振りほどいた後だ。安青錦は差し手に固執せず、いったん突いてから両ハズで押し上げ、相手の上体を起こして土俵際に追い詰めた。熱海富士が何とか左に回って体勢を立て直そうとするところでまた頭をつけ、右を差して下手、左も下手を取った。相手が左で抱えて振ろうとすると、その下手を離して腕を返して出る。最後は熱海富士の右からの突き落としを、左を引きつけ、頭を相手に密着させながらこらえて、そのまま寄り切った。
 
相手の動きに応じて、慌てることなく丁寧にさばき切った、まさに安青錦のうまさが凝縮された一番だった。「(左を)取っても、胸を合わせたら(自分の思う相撲が)できない。取っても少しずつ前に出る気持ちで」という心持ちが、この攻めを可能にしたと言えよう。
 
この日は、直前の相撲で、阿炎が琴櫻に対して右四つに組みにいくような立ち合いからあっさり吊り出されて3敗目。「モロ手だとあてがわれるので、左上手を取りにいった」ということだが、ちょっとこれは“策を弄して墓穴”のパターン。このところ立ち合いのバリエーションを増やして成功していた阿炎だが、それが裏目に出る形となった。
 
結びの3敗対決は、寄り切って霧島。これで豊昇龍は、あす、苦手の安青錦に勝てたとしてもなお1差が残る状況と、かなり厳しくなった。
 
そのほかの3敗勢は勝って3敗を堅持、この日を終わって、安青錦がついに頭一つ抜け、単独トップ、関脇霧島、平幕の熱海富士、阿炎、獅司、朝乃山、欧勝海の6人が1差で追う形となった。
 
こうなれば安青錦としては、あすからの両横綱戦、そして千秋楽と、一番一番勝っていくのみ。千秋楽は順当に行けば琴櫻、あるいは安青錦が星を崩したりして星が並んだり、優勝の可能性を残す平幕力士が出るようなら、割を崩してそことの対戦もあり得るが、今場所の両横綱の調子を見る限り、安青錦がそうそう星を落とすことは考えづらい。むしろ安青錦にとっては、今場所は初めて大の里に勝つ大チャンス、とすら言えるだろう。
 
ずいぶん気が早い話にはなるが、もしもこのまま走り切って、新大関優勝を手にするようなら、3月場所は綱取りに。そしてもし両横綱のケガの回復が遅れるという事態になった場合には……。夢の大関2場所通過もあり得るだけに、安青錦にとっては、駆け上がるときはまさに今、といえよう。
 
まずはその前に、今場所の栄冠を確実に手にしなければならない。この日は、廻しを黒に替えて臨んだ安青錦。聞けばこれは師匠の安治川親方(元関脇安美錦)が現役最後に締めていた廻しだとのこと。「師匠と一緒に戦いたいから?」と問われて、「そこまでは」と返した大関だが、「場所が終わるまで着けます」とも。記者好みのウエットな感覚がどこまであるのかはよく分からないが、この場所終盤にきて「(締め込みが替わるとか)そういうところは気にしないんで」という図太さは頼もしい。やはりここは、“新大関優勝の栄冠は、師匠と二人三脚で取りにゆく”という解釈が、落ち着きがいいようだ。
 
文=藤本泰祐

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