第3代LIDET UWF世界王者として無敵の防衛ロードを突き進む中嶋勝彦は、2・11後楽園ホールで青木真也を下しV7を達成したあと、「相手がいないからベルトを封印する」と発言。それに抵抗するべく挑戦に名乗りをあげた選手たちの中から3・8新木場1stRING「LIDET UWF Ver.8」でタイトルマッチが組まれたのは渡辺壮馬だった。G PROWRESTLINGでは腰をクネらせ軽いキャラクターで味を出す壮馬が、ここに来てLIDET UWFに対するこだわりを見せたのはどのような思いだったのか。(聞き手・鈴木健.txt)――中嶋勝彦選手の「LIDET UWF王座を封印する」という発言を受けて伊藤貴則、井土徹也、そして渡辺壮馬選手の3人が挑戦の名乗りをあげましたが、その中で壮馬選手がチャレンジャーとして選ばれました。
渡辺 ほかの2人は中嶋選手とLIDET UWFを懸けて敗れていますけど、僕はまだLIDET UWFを懸けてはやっていないんで、順番的にもそうなるよなっていう感じです。それを抜きにしても、もう俺しかいないだろ!って思うし。
――ただ、ここ最近はBGIとしての活動に専念していたこともあり、LIDET UWFに関しては唐突感があったのも確かです。
渡辺 言われてみればそうですけど、中嶋選手による“封印”というワードによって突き動かされたんです。あのベルトは、初代王者を決めるトーナメントをみんなでやった上で始まったわけじゃないですか。あのとき、闘った者たちでしか味わえなかったLIDET UWFならではの殺伐感、緊張感、恐怖心というものを中嶋選手は情報レベルでしか知らないと思うんですよ。それを味わっていない人にベルトを獲られたまま封印というのは、そこに出たほかの選手たちに対しても失礼だと思うし、特に僕は1回戦で佐藤光留選手とやって負けて本当に悔しい思いをした。仮に、本当にLIDET UWFのタイトルを封印するのであれば、あのトーナメントで闘った人間…これを始めた人間がするべきだと思うし、その一人である自分の手で封印したいって思ったんです。
――では、中嶋選手が封印を口にしなかったら名乗りをあげていなかった?
渡辺 だと思います。僕、前回のLIDET UWF(12・6新木場1stRING)の時も「今、この時代にUWFというものが必要なのか必要じゃないのかわからない」って発言しているんですよ。それはおそらく、ファンも思っていることだと思うし、ハッキリ言ってしまうと中途半端だということはやっていて感じていたんです。だけど、だからこそそれを変えたいと思う自分もいる。そういうどこか曖昧な位置づけの現状だからこそ、「封印」というワードが引っかかったのかもしれないです。
――自分の中にあった葛藤を突いてきたような?
渡辺 ああ、まさにそうですね。G PROWRESTLINGの方が、前回の後楽園が終わって丸々1ヵ月ないじゃないですか。せっかく年末から後楽園までの間に発生した流れに関心を持ってもらえてきたのに、そこへポツンと別の興行が入る。それなら、その一枠をG PROWRESTLINGに回してくれよっていう思いもある。LIDET UWFを続けてきた自分でも、そう思ってしまうのが今のLIDET UWF興行の受け取られ方なんじゃないですか。
――今、言われたようにLIDET UWFルールの試合は続けてきたわけじゃないですか。その分の思い入れも持たれているとは思うんです。
渡辺 それはあります! UWFスタイルをやったことで僕の中にあるプロレスの価値観がすごく変わりました。だから、やってよかったと本心から言えます。ただ、僕の中ではLIDET UWFとG PROWRESTLINGはまったくの別モノととらえているので、そこで果たして必要かどうかって考えてしまうんです。で、その答えは僕の中でも出ていない。自分の手で封印するという気持ちも本心なんですよ。その一方で…LIDET UWFって、ハードヒットとの対抗戦から始まったじゃないですか。その時の殺伐感はお客さんにも伝わっていたと思うし、今だから話せますけど試合前の恐怖感や、セコンドについて血まみれになる田中稔さんを見て「うわー…マジかよ」って思ったこともあったんです。だから、続けるとしたらそういうものを取り戻したいし、取り戻せるならば続けたい。でも、中途半端なままなら、きっぱりやめるのもUWFに対してのケジメというか。
――ただ、中嶋選手の方からは奇しくも3人の中で一番中途半端なのが渡辺壮馬という辛らつな言葉が出ています。
渡辺 (食い気味に)僕から見たら中嶋勝彦の方が中途半端です。前回のLIDET UWFの時(中嶋&愛鷹亮vsケンドー・カシン&青木真也)もいきなり場外乱闘になったじゃないですか。そんなのあるか!ですよ。僕はあくまでもGLEATに入ってからUWFを知った身ですけど、そこから数えてもそんなものはなかった。確かに防衛回数は重ねてきていますけど、それって勝敗とは別次元のLIDET UWFに向き合う姿勢の問題じゃないですか。あのベルトを巻いて、このスタイルの象徴であるべき人間がUWFからかけ離れたことをやっている。それを中途半端と言わずしてなんと言うんですか。
――自身は中途半端だと認識していないんですね。
渡辺 言葉にすると軽くなってしまうので、本当は言いたくないけど命を削ってUWFをやっています。あのトーナメントで、それほどの覚悟でやらなければ続けられないってわかったんで。先ほども言った通りG PROWRESTLINGとLIDET UWFは違う種目ぐらいに思っているので、B.G.I.の渡辺壮馬でいくつもりはないですから。腰を振るのも、LIDET UWFのリングでやるのは僕の中ではあり得ない。反対に、蹴りとか打撃はG PROWRESTLINGでは出さないようにしています。井土や伊藤はそのあたりで分けることなくキックを出すじゃないですか。でも僕はそこを明確に分けています。
――そもそもなぜ腰をクネらせ始めたんですか?
渡辺 名古屋だったかな、CIMAさんと組んだ時があったんですけど、その頃ってちょうどCIMAさんがマグナムTOKYOさんと久しぶりに再会した時で、試合中に腰をクネらせたんですよ。それを見て、ちょっと僕もやってみようかと思ってクネらせたら、これはCIMAさんより俺の方がうまいんじゃね?って。やった瞬間に「俺にはこれだ!」と思いました。あとは、LIDET UWFと両立するにあたって真逆じゃないですか。それもいいなって思ったんです。
――中嶋選手とはG PROWRESTLINGルールながら過去に1度、シングルマッチで対戦しています(2025年5月17日、横浜ラジアントホール。G-CLASS 2025ブロック準決勝で敗れる)。
渡辺 その時点で強いのはわかっていましたからね。僕がWRESTLE-1所属の時に外敵としてやってきて、ベルト(WRESTLE-1チャンピオンシップ)をあっという間に獲ってしまった。あの時に強さを感じていたし、GLEATに来てからもGLEATの色には染まらず中嶋勝彦であり続けている。本当に、あの頃の光景をもう一度見ているような感覚なんですよね。今回も外敵としてGLEATのベルトを持っているわけじゃないですか。あの時は、最終的にカズ(ハヤシ)さんがベルトを獲り返して…直後にWRESTLE-1は活動休止したから、本当にギリギリだった。LIDET UWFのあり方に対し最終的な答えを出すための闘いという意味で、あの時のカズさんと今の僕は同じような立場にあるんですよね。
――外敵から奪還するという意味でも。
渡辺 そういう風景が根底にあるからこそ、こういう大口を叩くことで自分に覚悟を宿らせている部分もあります。自分を鼓舞するじゃないけど、あとに退けなくさせるのも手というか。自分が勝って、ベルトを手にした時に僕がどういう感情になっているかです。それこそ、そこで封印しようと思うかもしれないし、自分が獲ったからにはもっと広げていきたいってなるか。今の時点では僕自身もどうなるかわからないです。
――LIDET UWF単体としての興行ではなく、通常の大会の中で継続させる形もあります。
渡辺 うーん…でも、それだとやっぱりお客さんが見る上で難しいというか。それまでG PROWRESTLINGのルールで見ていたのに、急にLIDET UWFルールが入ると、初めて見るお客さんは入り込みづらいかもしれないんで。ビッグマッチは別として、僕はやるとしたらUWFはUWFの枠の中でやった方が伝わると思うんです。特に僕の場合は二刀流でやってきただけに、その難しさを痛感してきました。それでも続けてきたのは、やっぱり闘いを得られるからなんですよ。今のプロレスって昔と比べると闘いの部分が薄れてきているって思われがちじゃないですか。僕はそれをUWFスタイルによって体に刻むことができた。
――田村潔司に教わったんですよね。
渡辺 最初はやらされる意味もわからなかったです。これ、なんのためにやるの?って。格闘技経験もまるでなかった人間ですから、正直言ったらやりたくないという気持ちもありました。だけど大阪で池本誠知さんとUWFルールでやった(2022年3月13日)あたりから「自分に技術がなければやられる一方だ」ということを実感するようになって、強くならないといけないんだなって気づいたんです。それまでは、通常のプロレスであればある程度相手も受けるから成り立つけど、UWFルールではそんなことは通用しないなって。そこから田村さんとの練習も楽しくなってきて、自発的にキックボクシングのジムにも通うようになったんです。
――楽しさを感じられることで変わったんですね。
渡辺 初めて実験マッチに出た時は、U-FILE CAMP(田村のジム)に通っていたんですけど、グローブさえはめたことがない状態で。素人とそれほど変わらないレベルの自分がUWFをリアルに経験している長井満也さんとやるという。何もできるわけがないじゃないですか。ハードヒットとの初めての対抗戦でも、関根シュレック選手とやって見様見真似でやるしかなくて、とりあえずローキックを出したらまったく効かないんです。それでデッカい腕で放つハンマーパンチが飛んできて、逃げ出したくなりました。伊藤は空手というバックボーンも体もあるからある程度できたんですけど、僕は何も持ち得るものがなかったからただやられるだけで。でも、その時は「何なんだ、これは」だったのが、技術を身につけないことにはというところに気づけてよかったです。
――恐怖心があるからそれを克服せんとするわけですね。
渡辺 僕も恐怖心を知っている人間と知らない人間とでは気持ちの持ち方が全然違うと思います。その意味でも光留さんとの試合は大きな意義がありました。ハードヒットでいったら川村亮さん、あとは和田拓也さんも。そういう人たちとやって、恐怖心を味わったらちょっとやそっとのことでは怖くならないじゃないですか。だから、UWFスタイルを続けてきてよかったって思えるんです。ムダなことなんて1ミリもなかった。
――そこまでかけがえのないものになっていながら、封印することになるかもしれないというのも…。
渡辺 いや、だからこそなんですよ。そういう殺伐感を体験したことが自分にとって大切だからこそ、それがない中で続けるのは…って思ってしまうんです。でも、それは何も中嶋勝彦のせいだとは思っていなくて。ハードヒットとの対抗戦の時にあった殺伐感を、対抗戦のあとも出せなかったのは自分たちですからね。そこは僕らの責任です。だからこそ、責任ある者としてどう振る舞うか、答えを出す時が来ていると思っていて。中嶋選手は、僕とやって防衛したあと、その日のうちに挑戦者決定戦で勝った方とやるって言っているんですよね? それは、あの頃の殺伐感を知らないから言えることですよ。
これは大袈裟でなく、僕はUWFルールの試合へ臨むたびに「今日は本当に殺されるかもしれない」って思いつめながら闘っていました。今はコンプライアンス的に引っかかるかもしれないけど「自分が殺されないためには相手を殺すしかない」っていうところまで精神が追いつめられたんです。そんな状況にいたら、一日2試合なんて絶対に言えないですよ。でも、そういうリングにできていなかった僕たち所属選手に責任がある。LIDET UWFを続けるのであれば、自分たちでそのコンセプトを明確に打ち出し、それによって殺伐感をもう一度蘇らせる。所属の人間の中で、LIDET UWFをやる選手が少なくなってきているのも現状じゃないですか。そこは渡辺壮馬、伊藤、井土っていう名前が出るようにならないといけないし。
――では、3月8日のタイトルマッチに向けての決意をお願いします。
渡辺 いやあ、このインタビューでけっこうデカイことをいっぱい言いましたから、もうあとに退けなくなりました。今後、LIDET UWFをどうするかの答えに関しては、そもそも自分が勝たなければ言えないことなので、大前提として中嶋勝彦に勝ちます。そして、その時の僕の口から出る答えを受け止めてください。
――答えは、必ず出しますね?
渡辺 はい、その場で言います。