close

2026-03-06

“シャーマン”ではなくなった河上隆一が目指すのは「シュークリームのようなレスラー」!?

正気(?)に戻り、GLEATと再契約した河上隆一

全ての画像を見る
長きにわたりGLEATのリングで極悪の限りを尽くしてきた河上“シャーマン”隆一が、2・11後楽園ホールにおけるブラスナックルJUNの誤爆を機に元の河上隆一へと戻った。このオフ中に再契約を結び、晴れてGLEAT所属のプロレスラーとなったが、選手や関係者、さらにはファンの間でも疑念は拭いきれていない。そこで本人の言い分を聞いてみた。3週間前にシャーマンとして取材した時とは別人のような口調、そしてどこまでも穏やかな表情、澄んだ瞳…あとはこれを読んだ皆さんに判断していただきたい。(聞き手・鈴木健.txt)


河上 健さん、お久しぶりです! 大日本プロレスに所属していた時以来ですよね。

――……いえ、実は河上さん、3週間前にあなたをインタビューしました。

河上 えっ!?

――2・11後楽園ホール大会に向けての意気込みやフリーの労働組合として団体を改革するといった前向きな言葉に終始していました。文献として、GLEAT公式サイトにアップされているのが確かな証拠です。

河上 ……すいません、記憶にないです。記憶にあるのは後楽園ホールのマットで大の字に倒れているところからなので、それ以前の記憶がどうにも…何か、硬い物で頭を殴られたような鈍痛で目が覚めた感覚で、我に返ったら坊主頭(エル・リンダマン)の人がチャンピオンベルトを持っていた。過去の記憶として残っているのは、リンダマンが髪を伸ばしていた時だから最初はわからなかったんです。顔をよく見て「あれ? これリンダマンじゃん。なんで坊主にしてんの!?」ってなって。

――後楽園で痛みを感じる前の記憶はどこまで残っているんですか。

河上 口にするたび申し訳ない思いでいっぱいですが、鈴木裕之社長を爆破したところまでですね。そこから先が途切れていたり、あったとしても曖昧で時系列がグチャグチャになっていたり、断片的でしかなかったりで…うっ、昔を思い出そうとするとツツツッて頭に痛みが走るので、申し訳ないのですがあまり過去のことは…。あとは、なんだかすごく闘っていた感触が残っています。なんですかね…ある意味、世間と闘っていたのか。でも、間違ったことをやっている認識ではないんですよ。

――鈴木社長を爆破させたのも、悪いことという認識ではない?

河上 やった時はこれこそが正義だと思ってやったんだと思います。当時は僕なりに現状を打破しなければという強迫観念レベルのものにとらわれている状態で、言うなれば大仁田厚にそそのかされた部分があって。「俺らがここまでやっているのに、鈴木社長は傍観しているだけじゃないか。それでいいのか!?」って…それであの蛮行を働いてしまったんです。なので今回、再契約するにあたって最初に謝罪しました。「その節は大変申し訳ございませんでした」と言いながら、頭をつけました。

――そこまで丁寧に。

河上 もちろん。だって、刑事事件になってもおかしくないことをやってしまったわけですから、刑事告訴されずに済んだ幸運を噛み締めるんです。やってしまったことに対するペナルティーは与えるけれど、社会的信用が落ちるところまでは課さなかった。社長の方からも歩み寄ってくれたと言いますか、こちらからまたGLEATでお世話になりたいとの旨を伝えたところ、二つ返事で契約書を提示されたんです。それを見て、ああ…社長もこうなることを待っていたのかもしれないって思いました。

僕がシャーマンとして…いや、シャーマンと口にすると頭痛がするのでここは“シャーメン”としましょう。シャーメンと化してGLEATに上がっている間、カズ・ハヤシさんの引退をピークに観客動員が落ちてきて、CIMA選手らが退団したというのを、戻ってからYouTubeにアップされている動画で見たんですよ。GLEAT、今って全部過去の動画が無料で見られるんですね。いやあ、助かりました。それで再契約をする上で自分の記憶から抜けているところは確認しなければと思って見たんです。

それで思ったのは、やはりちょっと、盛り上がりに欠けているなと。それで社長は、現状を変える起爆剤として河上“シャーメン”隆一ではなく、河上隆一に期待をかけていただいたのではと受け取りました。あと、これも表には出していなかったんですけど、後楽園の試合後にリンダマンから「GLEATをハッピーにしてほしい」と言われまして。自分の想像以上に悪いことをやってきたと思われるのに、そんな人間に対しポジティブなことを言ってくれたのを聞いて「陰極まりて陽となる」という言葉が浮かんだんです。知ってますか? 月って太陽にもなれるんですよ。

――そうなんですね。

河上 逆もまた真なりで、太陽も月になれる。だから私も、太陽に戻れるんじゃないかってリンダマンの言葉に希望を持ったんです。それで鈴木社長の無言の契約書提示も、きっと希望を表現したんだなって。無言で差し出すというムーブがまた、男の中の男ですよね。彼もこの1年8ヵ月…苦しんで……きたと思うんですよね(感極まったのか、言葉に詰まる)。それは反GLE MONSTERSやシャーメンによる影響より、ほかの影響の方が大きかったと思うんです。だからこそ、彼のことを救いたい。GLEAT初期の頃のような、純真な笑顔でプロレスをやっていた頃のリンちゃんに戻ってほしい。

もちろん彼は今、G-REX王者としてとてつもないものを背負う立場にあり、その重責が子どものような笑顔を消しているのかもしれない。でも、GLEATのキャッチフレーズにあった「スタイリッシュで疾走感のあるプロレス」をもう一度掲げるには、エル・リンダマンが一番体現できる男だと思うんです。私はそこに、もう一つの要素を加えます。

――それはなんですか。

河上 華やかさです。まあこれは自身の境遇から来ると言いますか…先ほど申した通り暗く土臭い闇の中にいたので、それを心機一転させたいっていうのがあるんです。

――かつての河上隆一はどちらかというと無骨さを個性とするタイプだったので意外ですが。

河上 その昔、バルクオーケストラというユニットでけっこう華やかにやっていたつもりなんですが…今は、ないんでしたっけ? あとは…やんずファミリーという僕の好きなユニットが…。

――それもないです。

河上 そうでしたか。やはり時は流れているんですね。となると、また新しいユニットが生まれるかもしれないですが、自分がGLEATを変える前に自分自身が変わらなければならないと思うんです。なので、まずは3・12新宿FACEでそれをなんらかの形にして提示します。男らしく、イチから信頼という華を積み上げていくしかないと思っている次第です。一般社会もそうですけど、信頼を失うのって一瞬だし、たった一人でやった、たった一つのおこないによってすべてがダメになってしまう。だから社会と同様、他者の力になることで一つひとつ信頼を積み重ねていくしかないのだと思っています.

――問題はリング外での人間関係の修復です。

河上 伊藤くんが「菓子折りの一つでも持ってこい」と言っていましたよね。伊藤くんは食いしん坊だと思われるので、とらやの羊羹も喜ばれるし、お菓子のホームラン王のナボナとかもオススメでしょうけど、ここは定番のシュークリームにするつもりです。シュークリームって、すごいんですよ。だって、誰が食べても幸せになれるじゃないですか。僕は「シュークリームのようなプロレスラー」になりたいんですよ。見る者を幸せにさせて、コーヒーにも紅茶にもお茶にも合う万能タイプ。そういうプロレスラーが今のGLEATには求められているのではないでしょうか。

――自分を殴ったブラスナックルJUN選手に関してはどうするつもりですか。

河上 僕のことをザコ呼ばわりしたので…またサラサラヘアーの頓所隼に戻してあげようかと。ブラスナックルJUNにもシュークリームを食べて幸せになってほしい。もともと河上隆一という人間は、普段はボーッと生きているんですけど、リングに上がってスイッチが入っちゃうとガーッといっちゃうタイプなんです。だから、もしかすると激辛シュークリームになってしまうかもしれないけど、なんとか激甘のダブルホイップカスタードシュークリームでいけたらと思っています。

――先ほどYouTubeで記憶を失っていた頃の映像を見たと言われていましたが、シャーマンとしての自分の姿を見ていかがでしたか?

河上 あれ、自分がやっていたことなんですよね(深く溜息をつく)。2月の後楽園のいでたちなんて…某・大日本プロレスの“黒天使”沼澤邪鬼のようだったじゃないですか。でもあれは、自分であって自分じゃない。世に跋扈(ばっこ)する邪念、邪気の塊であるシャーメンが、自分の体に宿っていたのが映像を見てわかりました。あれを1年8ヵ月もの間やっていたのは、本当に申し訳なく思います。たぶん、私が映像で見たもの以外でも、非道の限りを尽くしてきたんでしょうね。

――ハッキリ言って非道の限りを尽くしてきました。観客のペットボトルのお茶を奪って、その人の頭からぶっかけたりとか。

河上 そんなことを…。所属の選手たちが「何を今さら」となるのも当然ですよ。だとしたら、選手たちが見ていないところでもちゃんと赤信号では停まり、靴は並べて、寝る時も電気を消して節約するようにします。普段の姿勢が出ますからね。そういうことをしっかりやった上で男一匹・河上隆一、一番下から「今日もよろしくお願いします!」と頭を下げて、リング設営から始めてキャンバスを雑巾で拭き、ターンバックルを磨きます。誰よりも早く会場入りして、誰よりも最後に帰ります。それぐらいのことをやらないとこの1年8ヵ月間は取り戻せないし、むしろそれが最短なのかもしれない。

――そこまでやっても、GLEATのファンの間では「河上隆一に戻ったと油断させて、どこかでまたシャーマンに戻るのでは」という見方も根強いです。

河上 わかりました。そこまで言うならば、3月12日以後、再びGLEATに反旗を翻すようなことをやったら即契約解除でいいです。口だけで言っても証明にならないので、再契約書の条項に文章としてその旨を付け加えてください。正式な文書って、難しく書くことで別の解釈をされる場合があるじゃないですか。だから「裏切ったらクビね」ぐらい簡潔な文言でいいです。

その昔、僕は山本小鉄さんの指導を受けたことがあったんです。そこで教わったのが「脚から鍛えなさい」でした。足腰ってプロレスに限らず運動の基本じゃないですか。にもかかわらず、それより先に技を出したくなったりカッコいい体を作りたくなったりする。でも小鉄さんは「プロレスラーはな、常人よりも重い体重を背負いながら素早く動かなくちゃならないんだ。だから、落ちているゴミも誰よりも素早く拾えるようになれ」と。

ダンベルを持って、延々とスクワットをやらされながら、「素早くゴミを拾うためにこんな辛い目に遭わされているのかよ!」ってその時は思いましたけど、今ならわかるんです。足腰を鍛えることがすべてに通じ、そして一番の近道なんだと。信頼を回復させるのも、それと同じですよね。ああ…今、昔の記憶を蘇らせたことでまたイチからプロレスに向き合いたい!って心から思うようになりました。山本小鉄さんに感謝です。

――これまでの話をまとめると、これまであまりリング上で出していなかった要素をこれからは出していくということですね。

河上 また自分を見つめ直した上で、プロレスに正面から向き合い、ド真ん中のプロレスを目指すということです。皆さん、気づいていなかったと思いますけど後楽園のラスト、リングのド真ん中に立っていたのは河上隆一でした。そして、そんな私を客席の皆さんはとても応援してくださいました。つまり、河上隆一がリングのド真ん中に立つ姿を求めているんだなと確信しました。あるべき場所に還ってこられたという嬉しさがありましたね。だからこそもう一度、プロレスと向き合いたい。

ブラスナックルJUNに対しても、闘いを通じた上で、ちゃんと言葉で伝えて、そして最後はハグする。シュークリームの生地のようにやさしく包み込みます。彼にも、もう一度プロレスに向き合ってほしい。頓所隼っていう男は、プロレスラーになりたいという純粋な思いが高じて、半年間の月謝を払ってまでしてプロレスラーになった男なんです。それが今では北斗の拳のザコキャラのような身なりになってしまっているじゃないですか。大金をはたいて成り果てたのがザコキャラなんて、そんな人生は哀しくないですか?

――自分をブラスナックルで思いっきりブン殴った相手に対し、そこまで慈悲深くなれるとは…。

河上 現代社会の抱える問題として、リアルに顔を合わせることなくネット上でのコミュニケーションばかりに走る結果、目の前では言えないような攻撃性の強い言葉を当たり前のように発信するようになっているじゃないですか。だからこそ私は、直接的に顔を合わせて言論を交わしたいんですよ。それも四角いリング…テーブルよりも円卓の方が気持ちも安らぐ。円卓に座ってシュークリームを食べるようなコミュニケーションをすれば、世の中はもっと平和になると思うんです。

昭和の一家団らん感が、GLEATの1年目はあったんですよ。CIMA選手が強いお母ちゃんで、お父ちゃんが鈴木社長。それを思うと今は一家離散状態なんですよね。そういう現状を建て直すのは、兄弟の中でも幸せオーラを持つ僕しかいない。日々の生活も充実して、トレーニングをしていてもすこぶる調子がいい。だから3・12新宿は、自分でもちょっと怖いぐらいの化け物になっているんじゃないかな。いい意味での化け物にね。

人間はね、変われるんですよ。あそこまでシャーメンによって支配されていた人間が今、太陽になろうとしている。それは僕だけのことじゃない。一人ひとり、みんなが目指せばやれることなんです。今はタイパ、コスパの時代でしょう。顧客は楽しいと思えないものに時間もお金も使わないですから。そういう価値観の変化が激しい時代においてコージーコーナーのシュークリームを見習い、圧倒的なパフォーマンスをGLEATは示していく。この5周年を迎えるタイミングで、宝船に乗ってプロレス界のド真ん中を進みます。

BBM

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事