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2026-07-28

【陸上】滋賀インターハイ 佐久長聖高が「悲願」の全国優勝へ「自分のやりたいことだけに集中してのびのびやってほしい」

北信越大会で女子総合優勝を果たした佐久長聖高。全国ではまずそれぞれが「自分のやりたいことだけに集中」する(写真/黒崎雅久)

陸上競技のインターハイが7月30日から7日間、滋賀・平和堂HATOスタジアムで開催。支部大会、都府県大会、全11地区大会を勝ち抜いた選手たちが集結し、17時以降のナイターで全41種目が行われる。佐久長聖高(長野)は女子総合優勝の候補にも挙がるが、「自分自身がやりたいこと、なりたい自分になることに集中」し、個人種目の全国優勝を一つでも勝ち取りたい。

15歩チャレンジの態勢が整った阪

阪真琴(佐久長聖高3年)が北信越大会400mHで出した59秒09は、今季高校最高記録だった(7月27日時点でも今季高校リスト1位)。それも雨の影響で、試したかった「3台目まで15歩」を封印した歩数で出したことで、全国優勝と58秒台の可能性が高まった。

「天候が良かったら3台目まで15歩にチャレンジしようと思っていましたが、雨が強くなってきたので、落ち着いて17歩で行くことに決めました。17歩でも前半は、長野県大会より飛ばす人が多いので、自分も少しリズムを速くして何秒が出るかな、という気持ちで臨みました」

早川恭平監督は「積極的なオール17歩だった」と評価する。昨年の北信越大会は60秒04。15歩への挑戦はできなかったが、同じ歩数でも1秒近くタイムを縮め、1年間の成長を証明して見せた。

阪は高校1年までは100mHがメイン種目で、今も400mHの練習はしていない。北信越大会の100mH決勝は、13秒20(+1.8)の高校新をマークした藤田紗季(敦賀高2年)に2連勝を阻まれたが、13秒41と自己記録を0秒22も更新。今季高校7位記録で、インターハイでは2年連続入賞の可能性を示した。

2種目を両立できる理由として、「移動にロスがなく、100mHも400mHもハードリングに差がない」ことを早川監督は指摘する。藤田のような力強い踏切りはできないが、滑るような動きでスムーズに進む。さらに持久力も、もともとの能力として持っていると推測する。

3台目までの15歩を試すことはできなかったが、300mHでは、3位(41秒44)に入った昨年の国スポ少年共通など3試合で経験済み。「インターハイはどんな結果になっても、15歩にチャレンジしてもらいたい」と早川監督。「58秒台の力は北信越でもあったと思います。もっともっと上に行ける」

昨年の実績、今季のタイム、歩数におけるのびしろ。阪は全国優勝に近い位置にいる。

宮澤が400mで1秒以上自己記録を更新

北信越大会では宮澤希(佐久長聖高3年)の成長がはっきりと表れた。400mに54秒59と、自己記録を1秒以上更新する今季高校3位のタイムで優勝し、0秒03差ではあったが鎌倉梨々華(佐久長聖高3年)に初めて勝利した。

佐久長聖高は昨年、下記のように4人の全国大会入賞選手を出した。

◆インターハイ(7月25~29日@広島県広島広域公園)
400m:鎌倉梨々華7位・54秒94
100mH:阪真琴8位・13秒64(+1.3)
400mH:阪真琴3位・59秒38
4×400mR:佐久長聖高(宮澤・阪・中村・鎌倉)4位・3分43秒52

◆U20日本選手権(9月27~28日@静岡県草薙)
200m:中村波南3位・24秒20(+1.6)、宮澤希8位・24秒52
400m:鎌倉梨々華2位・54秒51
100mH:阪真琴4位・13秒81(-0.3)

◆国民スポーツ大会(10月3~7日@滋賀県彦根)
少年A100m:中村波南4位・11秒80(+0.8)
少年A300m:鎌倉梨々華3位・38秒96
少年A300mH:阪真琴3位・41秒44=U18日本新
少年共通100mH:阪真琴5位・13秒68(+0.8)

◆U18陸上(10月17~19日@三重県伊勢)
100m:中村波南4位・12秒00(+0.1)
300m:鎌倉梨々華3位・38秒85
300mH:阪真琴2位・41秒47

昨年のインターハイでは中村と宮澤が入賞を逃したが、「できなかったことを改善して秋の全国大会では入賞し、形にできた手応えがありました」(早川監督)。そして今年の北信越予選では、全国大会の順位が一番下だった宮澤が好記録で優勝した。

「勝ち負けよりも、自分がやりたい動きをすること」(宮澤)を優先した結果だった。腕振りと接地のタイミングが、特に課題だった200~300mの局面で改善できたという。

メンタル面もプラスに働いた。「1週間前の日本選手権に鎌倉は出場できましたが、宮澤はウェイティングの状態から結局、出場することができませんでした。悔しかったのだと思います」(早川監督)

その意味では次のインターハイで、北信越で敗れた鎌倉の奮起が予想できるが、宮澤にもモチベーションが上がる理由がある。昨年のインターハイは直前の体調不良があり、個人種目への出場を回避し両リレーに専念したのだ。

宮澤はインターハイの目標を「梨々華とワンツーを取りたい」と設定している。7月13日時点の今季高校リストで54秒37の鎌倉が2位、54秒59の宮澤が3位につけている。「タイムは53秒台を出すことが今年の目標としてありますが、(タイムを意識するより)やるべきことをやって、どこまでタイムが出るかに挑戦したいと思っています」

大会2日目の400mで2人が上位入賞すれば、大量得点でチームが勢いづく。

自己記録以上の力がある100mの中村

キャプテンの中村波南(佐久長聖高3年)の走りが、総合優勝の行方を左右するかもしれない。北信越インターハイの100mは、自己記録(11秒80・+0.8)こそ更新できなかったが11秒84(+0.8)で、11秒73(+1.9)を持つ橋本蒼衣(金沢泉丘高2年・石川)に0秒09秒先着。「インターハイは絶対に優勝したい」と強い意欲を見せた。

昨年のインターハイは入賞できなかったが、9月以降の全国大会100mは2大会で4位に入った。「昨年は入賞する目標で出場しましたが、入賞しても満足できませんでした。今年はチームとしても日本一を目指しています。満足できる順位は1番しかありません」

中村の11秒80は昨年の高校リストで16位タイ。それでも4位に二度入賞したのは、大舞台で力を発揮する能力が高いからだろう。今季は自己記録更新ができていないが、「1回出したタイムは、(同じレベルの記録を)また出せる」(中村)ことが大舞台での強さになっている。

北信越大会はタイムより、「中盤の50~70mあたりでもう一度、自分の意思で加速できた」ことを自己評価している。その点は早川監督も「昨年の11秒80よりも北信越の11秒84は、自分の感覚で走っていました」と認め、「(タイムは)もっと行くと思います」と期待する。

総合優勝よりも個々の課題を意識した戦いを

地区大会終了時の今季高校リストの順位を、インターハイと同様に1位8点…8位1点で集計すると、佐久長聖高は28点で2位に位置している。1位の中京大中京高(愛知)は31点で3点差、3位の東海大相模高(神奈川)は27.5点で0.5点差だ(陸上競技マガジン8月号P114~より)。

記録に基づいての集計なので、実際にヨーイドンで走ったときの順位は違ってくる。中村は100mで今季高校リスト15位。中村が上位に食い込めば30点オーバーは可能になる。

両リレーも得点源だ。4×100mRは北信越大会の46秒17が今季高校8位、4×400mRは北信越大会最終日が強風のため記録が伸びず、長野県大会の3分42秒20が今季高校4位。昨年は北信越大会の46秒06と3分43秒22がシーズンベストになったが、「今年はインターハイにピークを持っていく上で、北信越大会が良い過程になっています」とキャプテンの中村は言う。

4×100mRも4×400mRもメンバーは中村、阪、宮澤、鎌倉の4人で昨年から戦ってきた。走順は変わるがオール3年生のメンバーでチームワークも良い。「(北信越の)4×100mRは去年より0秒11遅く、去年の自分たちを超えられませんでした。一人ひとりの走りやバトンパスも見直していきますが、4×400mRに比べて短時間で終わる種目なので、そこに思いをどう乗せるか、どういう形ならもっとできるかを考えて行きたい。そう4人で話し合っています」(中村)

昨年の総合得点は22点で2位。優勝した西武台高(埼玉)とは4点差だった。北信越大会の選手たちからは、総合優勝したい、という言葉が何度か出ていた。だが選手たちのコメントにもあるように、個々の課題への意識も強い。早川監督は「(総合優勝よりも)自分自身がやりたいこと、なりたい自分になることに集中させたい」と言う。

「県内の先生方からかけていただく言葉やメディアの記事で、総合優勝というワードは必ず出てきます。周りにそう言っていただけるのはありがたいことですが、私からは言わないようにしています。結果が出なくてもそれは私の責任なので、自分のやりたいことだけに集中してのびのびやってほしい、と伝えています」

長距離種目では何人もの全国大会優勝者を輩出してきた佐久長聖高だが、トラック&フィールド勢は早川監督が着任して9年間でまだ全国大会の優勝がない。早川監督自身も110 mHの選手時代に、2度の全国2位はあったが優勝することができなかった。

「何が足りなかったのかを、選手たちと一緒に探しています。実際のところ勝ってみないと分からないことかもしれませんが、選手自身が思い描く姿に1歩でも2歩でも近づいていくなかで、見えてくるものがあるかもしれません。こうやったら勝てるかもしれないと、あれこれ考えるのは楽しいことですね」

佐久長聖高にとっては個人の全国優勝が悲願になっているが、その過程を楽しむ気持ちも持てている。楽しんだ結果が、総合優勝につながる。そんな戦い方をインターハイでするつもりだ。

文/寺田辰朗 写真/黒崎雅久

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