
今場所一番の目玉は新大関の貴景勝。初日は相撲巧者の遠藤に何もさせず押し出して圧倒した。この日の相手は二所ノ関一門の兄弟子で元大関の琴奨菊。新大関戦を前に支度部屋では、一度仕上げた大銀杏が崩れるほど、気合の入った準備運動をしていた。
※写真上=落ち着いた攻めで琴奨菊をイナシから一気に突き出した、貴景勝
写真:月刊相撲
立ち合いの当たりは互角も、「モロ手突きで手が滑ってしまった」と貴景勝。それでも慌てることなく、左ノド輪でのけぞらせておいてのイナシで泳がせ、相手に体勢を立て直す余裕を与えず、一気に突き出した。
「手が滑ってしまったけど、もう一度攻め直す形がつくれた」と振り返る貴景勝。出番前の花道では初日に続いて鼻血が出るアクシデントがあったが、動ずることはなかった。新大関で優勝となれば、白鵬以来13年ぶりとなるが、「そういう雑念は捨てて、その日の相撲が終われば、明日のことに集中していく。その繰り返しです」。
一方、敗れた琴奨菊は、「休まずに前に出てこられた。落ち着いて攻めているね」と淡々と評していたが、支度部屋に戻ってきた直後の風呂場で、言葉にならない声で吠えて、悔しさを露わにしていた。
八角理事長(元横綱北勝海)は、現役時代の晩年、曙や貴花田に負けても、「悔しい気持ちはなく、『よく頑張っているな。強くなったな』と思うだけだった」そうだ。ひと回りも下の後輩に負けて悔しがる琴奨菊は、まだまだ現役を続けられそうだなと感じた。
文=山口亜土
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