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2019-03-17

相撲編集部が選ぶ春場所8日目の一番 彩(叩き込み)大成道

 今場所、自己最高位の東幕下筆頭に番付を上げた彩。勝ち越せば、入門から12年での新十両昇進が確実だ。最初の相撲は敗れたが、その後は3連勝で、8日目、十両の土俵で大成道との対戦が組まれた。

※写真上=大成道を叩き込み、悲願の十両昇進へ向け大きな1勝をものにした彩
月刊相撲

 立ち合いの踏み込みよく当たっていった彩だが、すぐに押し返され土俵に詰まる。そこから左に回り込みながら体勢を入れ替えると、再び前進してきた大成道をタイミングよく叩き込んだ。勝った瞬間、大きく息を吐いた彩。勝ち名乗りを受けるときには目が真っ赤になり、土俵を降りるときに涙を拭った。一生忘れられないうれしい白星だ。

「長い間、ずっと応援してくれた人の顔を思い浮かべ、初めてうれし泣きをしました」

 小学生から草加相撲練修会で相撲を始め、小5のときに3学年下の阿炎が入ってきた。阿炎を弟のようにかわいがり、阿炎は高卒後、彩を慕って錣山部屋に入門。体も大きく、素質に恵まれた阿炎は2年足らずで十両に昇進し、差をつけられてしまうが、腐らずに稽古を重ねてきた。

 阿炎が十両を4場所で陥落し、復帰できずにダラダラと過ごしていたときには一喝し、心を入れ替えた阿炎は幕内の人気力士となった。

「あいつが……」と言ったあと、彩は改めて「阿炎関がいなかったら、とっくにあきらめていたと思う。先に出世したのを見て、絶対に自分も関取になろうと思った。長かったです」と喜びをかみしめた。おそらく、彩以上に阿炎が喜んでいるはずだ。

文=山口亜土

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