アメリカンフットボールの国内最高峰リーグ「Xプレミア」第5節、8月29日のパナソニック インパルス対富士フイルム海老名ミネルヴァAFCの一戦は、パナソニックが完勝した。オフェンス・ディフェンス・キッキングのすべてで隙を見せなかったパナソニック。特に輝きを放ったのはQB #8 須田啓太だった。
パナソニック インパルス ○33-0● 富士フイルム海老名ミネルヴァAFC 8月29日@MKタクシーフィールド(大阪・吹田市)前半だけで3本のTDパス。須田は試合開始直後から落ち着いたプレーを見せ、最初の3つのTDドライブをすべて自らのパスで完結させた。試合を決めたのは須田の精密なコントロールのパスだったと言っても良い。

■ 1Q 5分52秒、#8 QB須田 → #83 WR山下宗馬 10ヤード TD
最初のドライブは、7プレー55ヤードを締めくくる正確なパスで先制TD。
山下のタイミングに合わせた鋭いスローで試合の流れを掴んだ。

■ 2Q 2分42秒 #8 QB須田 → #85 TEケイレブ・フィリップス 3ヤード TD
自身のランで作ったゴール前ショート。プレーアクションから短いパスをきっちりと投げ込んで、リードを広げた。

■ 2Q 6分27秒 #8 QB須田 → #83 WR山下 6ヤード TD
山下とのコンビネーションで再びスコア。ポケットの中でターゲットを見つけられないように見えたが、一瞬のスキをついてクイックスロー。正確なパスを突き刺した。

須田は、ランでも存在感を見せた。8回62ヤードは、チーム1位。立川、小泉誠実ら強力RBに持たせるか、自身がキープするか、的確な判断と逡巡のないプレーで富士フイルム海老名の守備陣を手玉に取った。特に、2本目のTDドライブ(9プレー80ヤード)では、12ヤード、13ヤード、7ヤードと3本のランでリズムを作ったのが光った。
充実するパナソニックのQBユニット須田のスタッツは、以下の通り。
パス:10/14、成功率71.4%、107ヤード 3TD・0INT、レーティング133.0(NFL方式)
ラン:8回 62ヤード(平均7.8ヤード)
須田は第4節の東京ガス戦(7月4日)で、QBとして今季初出場。パス獲得距離こそ182ヤードだったが、成功率は51.7%、TDとINTは1本ずつで、レーティングは68.5。ランは6回16ヤード。決して満足のいく数字ではなかった。
この日の対戦相手、富士フイルム海老名は決して弱くはない。エースQBの放出に伴うオフェンス力の低下はあったが、ディフェンスは今季、IBMビッグブルー、オリエンタルバイオシルバースターに、7点しか許さず、富士通も31点に抑えていた。
この相手に、須田は、大学時代の輝きを取り戻したのだった。須田は2023年、関西大学3年時には、学生年間最優秀選手賞のチャック・ミルズ杯を受賞。2024年1月には「ドリームジャパンボウル2024」の日本選抜チームに、QBでは大学生としてただ一人選出された。自他ともに認める学生No.1のQBだった。
しかし、パナソニックに加入後は、荒木優也、小林宏充という2人のQBの後塵を拝し、試合には出られない状況が続いていた。
須田がこの日のパフォーマンスを継続できるのであれば、パナソニックは今後も須田を起用する機会が増えることになりそうだ。荒木、小林、そして須田が横一線となる充実ぶり。パナソニックらしい「質と量のデプス」が、QBユニットにも生じつつある。
もらったチャンスを一発でパスユニットで仕留める
試合後のQB須田に話を聞いた。
ーーXリーグで初出場した7月4日の東京ガス戦は見られなかったのですが、高山(直也)ヘッドコーチの話でも、東京ガス戦に比べて、やりたいことができていたのではないかと感じますが。
須田:そうですね、チームで準備してきたことはある程度は出し切れたとは思います。でも、要所での富士フイルム海老名のブリッツへの対応とか、イレギュラーなことが突発的に起こった時に落ち着いて対処できれば、多分任されたオフェンスシリーズ全てで得点できたはずだったので、1個パントになってしまったシリーズが個人的には一番悔しいですね。そういうところをしっかり、動きすぎるんじゃなくて、パッてかわして、その後も投げられたらとか、走るにしても、もっと早いタイミングでうまく走れたらいいなとは思います。ーー立川選手や、ミッチェル選手ら、RBのランが良かったので、全体的にチームとしてランが出ていた。その中で須田選手自身もちゃんと動いて、パスも動いて投げるし、ランもかなり出せていたと思いますが。
須田:そうですね、やっぱりインパルスは良いRBがいて、良いOLがいて、それを軸にオフェンスを組み立てて、チームにもらったチャンスを一発でパスユニットで仕留めるっていうのが今のオフェンスの形、あるべき姿だと思います。与えられたチャンスが巡ってきた時に、それをしっかり掴みきるために、もっとパスユニットで精度を高めていけたらなと思います。

ーー今日は3TDパスでしたか。
3TDパスですね。ーーWR山下選手に決めた3本目のTD、クイックで小さな投球フォームの正確なパスでした。サイドラインで見ていた関係者が、みんな唸ったのですが、あれはどういうパスだったのですか。
須田:カバーを見て、最初のターゲットTEケイレブ(・フィリップス)は、ちょっときついなと。次のターゲットに移ろうとした時に、パスラッシュがかかってきたので、ちょっとまずいと思ったのです。けれど、奥に走り込むことができるスペースが見えたので、そこにきちんと投げ切れば、(WRの山下)宗馬さんが走り込んでくれるというのはいうのはわかっていたので、宗馬さんを信じて投げた感じですね。ーー今日は3TDとも、種類の違う良いパスでしたね。
須田:そうですね、はい。ゴール前で用意していたパスをしっかり決めきれたっていうのは、オフェンスでちゃんとTDを取り切るというところで、チームに勢いをもたらせたのかなと思います。QB須田「いつでも出るつもり満々です」ーー7月の東京ガス戦が、QBとしては大学以来の実戦。
須田:そうですね。ーー7月の試合は、アウェーの東京でした。今回は、久々に地元・大阪で、しっかり出番があった。そこはどういうふうに感じました?
須田:正直なところ、特別な意識はなくて、本当に、チームが勝つために今一番適してるのはお前だということで(先発として)選んでもらったと思うので、その与えられた役割をちゃんと遂行できるようにと思ってきました。ーー今更ですが、やはりパナソニック強いなと感じました。その強さに、あなたのクオーターバッキングが凄くマッチしていたなと、今日見ていて感じました。
須田:ホントですか。マッチしてるように見えました?ーーそう思いました。荒木(優也)さん、小林(宏充)さんは、QBとしてのそれぞれの良さがあるのですが、なんというのか、パナソニックオフェンスの尖った部分を生かせるのは、実は須田選手なのではないかと、今日見ていて強く感じました。今日はそういうオフェンスができていましたね。
須田:インパルスの勝ち方というのは、やっぱりこう、ディフェンスが伝統的に強くて、OLとRBにいい選手がいっぱいいるので、さっきも言いましたが、回ってきたチャンスで、最後パスユニットがちゃんと仕上げる、一発で仕上げる。そういう勝ち方が確立されているチャンピオンチームの中で、自分の良さをいかに発揮するかというのは、日頃から考えているところなので、それを今日は発揮できたかなと思います。

ーーこれだけ完成されてるチーム。もちろん今の関西学生もいくら強いとはいえ、ちょっとフットボールのスタンダードが違う。その中で、なかなか出番がない。でも今日はすごく良かったと思います。
須田:ありがとうございます。ーー走れるというか動けるという点では、やっぱり3人の中で須田選手が一番なのかなと思うのですが、そこはどうですか?
須田:まあでも、全然その身体能力的な部分では突出したところはないのです。ヨーイドンで走って、タイムがどうかというと、3人はあまり差はないです。フィジカルテストなどでは、多分自分が一番雑魚なので。その弱い部分を試合で相手にどうやって見せないかというのは、昔から工夫してやっているところです。それがうまく出たとは思うのですけど。ーーまだまだ出番ありそうですね。
須田:いや、自分はホンマに、いつでも出るつもり満々なんで、もう行けって言われたらちゃんと求められた結果を出せるように、最高の準備を常にしておくので、次の試合誰が出るかというのは、もう本当にその時々一番いい QB を使うと言われているので。その時々、常に一番良いQBが自分であり続けられるように、ちゃんと努力しようと心がけています。ーーとにかく今日は良かった。「こんなに良いQBなんだな」と、改めて思いました。
須田:はい、それは素直に嬉しいです。ありがとうございました。