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2018-12-30

【2018競泳界プレイバック】瀬戸大也 波の中で打ち込んだ確かな布石

※写真上=試行錯誤を繰り返しながら、二つの国際大会で3個の金メダルを手にした瀬戸
写真◎小山真司/スイミング・マガジン10月号P58より

 瀬戸大也(ANA)の2018年は、空模様なら「曇り時々晴れ」だったのか、それとも「曇りのち晴れ」だったのか。

 メイン種目の400m個人メドレーは、大会ごとの結果の波が激しかった。

 4月の日本選手権は自己ベスト(4分7秒99)から6秒以上遅い4分14秒01に終わるも5月のジャパンオープンは奮起して4分8秒98、8月上旬のパンパシフィック選手権は4分12秒60(3位)、その2週間後のアジア大会では4分8秒79(優勝)と、波が激しい記録の変遷に。「どの種目でもいいから長水路で日本記録更新」を今季の目標に掲げていた瀬戸にとって、記録面で納得のいく結果を導き出すことはできなかった。

 しかし、その中で東京五輪での金メダル獲得を見据え、瀬戸が一貫して取り組んでいたのは、前半200mのラップで「2分を切る」こと。個人メドレーは選手の得意種目によってラップが変わるため、一概に100m毎のラップだけで選手同士を比較することは難しいが、瀬戸が3種目めの平泳ぎでアドバンテージがあるとはいえ、ライバルのチェース・カリシュ(米国)、萩野公介(ブリヂストン)相手に戦うとき、前半200mを2分かかっていては勝負にならない、という考え方があったからだ。

 トータルタイムはさておき、5月のジャパンオープン、夏の2大国際大会ではその2分切りを実践。パンパシフィック選手権では後半失速したものの、ジャパンオープンとアジア大会では得意の平泳ぎ(3種目め)でも実力を発揮し、4分8秒台を出している。自己ベスト更新におよばなかったが、「その感覚(2分切り)はだいぶ身についている」と本人、また瀬戸を指導する梅原孝之コーチも手応えを感じとったことは何より収穫だったともいえる。

◎瀬戸大也の2018年主要大会結果
(200mバタフライ、200、400m個人メドレーの最終結果のみ)

■日本選手権
200mバタフライ[2位]1.55.37
200m個人メドレー[2位]1.56.85
400m個人メドレー[2位]4.14.01
■パンパシフィック選手権
200mバタフライ[1位]1.54.34
200m個人メドレー[4位]1.57.36
400m個人メドレー[3位]4.12.60
■アジア大会
200mバタフライ[1位]1.54.53
200m個人メドレー[4位]1.57.13
400m個人メドレー[1位]4.08.79

 一方、課題も見えている。前半200m2分切りに関連していえば、背泳ぎのスピードアップ、また、得意の平泳ぎもここ数年はウェイトトレーニングによる身体の変化に伴い、泳ぎのフォーム、感覚が以前と違うものになっていた。平泳ぎについては少しずつ活路を見いだしてきているものの、カリシュが平泳ぎを1分7秒台のベストラップを持つことを考えると(瀬戸は1分9秒台)、さらなるレベルアップが要求されてくる。

 もちろん、それは瀬戸自身が夏に感じとっていた点でもあり、新シーズン最初の高地合宿(11月/米国)では持久力強化含め、そうした課題を念頭に置いた練習を積んできた。その成果は12月の世界短水路選手権でも発揮され、初日の200mバタフライでは自身初となる短水路世界新、そして400m個人メドレーでは狙っていた短水路世界新はならなかったものの大会4連覇を飾り、年明けの練習に向けて良いステップを踏んだ。

 2019年以降、400m個人メドレーでさらに磨きをかけるために、どのようなアプローチをしていくのか。第2種目の200mバタフライと200m個人メドレーへの比重のかけ方含めて、春先までに方向性を導き出していくことになる。

 常にポジティブ・シンキング(前向き思考)で前へ、前へと向かっていくのは瀬戸の大きな武器。細かい部分を追求しながら、大きな目標に向かうその姿は、やはり見る者に期待を抱かせてくれるもの。はまったときの爆発力を再び、見せてもらいたい。

文◎牧野 豊(スイミング・マガジン)

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