自信に満ちあふれた表情と言葉。すべては充実した練習をこなしてきた証しなのだろう。
3月中旬、約3週間のメキシコでの高地合宿を終えて帰国した池江璃花子(ルネサンス亀戸/淑徳巣鴨高2年)は、日本選手権を“楽しみにしている”、というより、“待ち焦がれている”――そんな空気を漂わせている。
「メキシコでは、質、量ともにガッツリ取り組めました。例えば、メイン練習でバタフライの50m×2本Max(最大限の力で泳ぐ)があっても、その前のキックやプルの練習でも高い強度でやった上で臨んでいました。全体的にはいつもの高地トレーニングと同じように、50m、100mのスプリント系中心をメインにして、たまに200mを入れる形で、しっかり追い込むことができました。
今は本当にすぐにでも日本選手権で泳ぎたいですが、この冬期はずっと調子よく練習をこなせてきましたので、昨年12月の時点でも、早く日本選手権で泳ぎたい! と思っていたくらいです」
その言葉を裏付けたのは、2月のコナミオープン(写真)での驚異的な記録更新劇だった。メイン種目である100mバタフライ、同自由形のエントリーを見送ったものの、200m自由形で1分55秒04の日本新記録を樹立。この記録は昨年の世界選手権では2位相当に値する世界レベルのもの。もちろん、机上の比較ではあるが、冬場の大会での記録と考えれば、池江の地力が世界トップクラスにまで引き上げられたと言っていいだろう。ほか、50mバタフライでも日本新、400m自由形では高校新記録をマークしてみせた。
その上でさらにメキシコで追い込んだというのだから、本人はもとより見ている側の期待も膨らむばかりだ。
日本選手権のエントリーは50、100m自由形、50、100mバタフライの4種目。昨年は女子選手では初となる日本選手権5冠を達成したが、100mバタフライ決勝と同日に準決勝がある200m自由形へのエントリーを回避したのは、昨年、自己ベストを更新できなかった100mバタフライ、同自由形での記録を追求する決意の表れ。国内では敵なしの情勢だけに、自分自身との戦いに集中して、世界トップレベルを意識した記録を狙うことがテーマとなる。
競技日程に沿うと、以下の順で出場する予定だ。
4月3日(火)100mバタフライ予選・準決勝
4月4日(水)同決勝
4月5日(木)50m自由形予選・準決勝
4月6日(金)同決勝
4月7日(土)100m自由形予選・準決勝
4月8日(日)50mバタフライ予選、100m自由形決勝、50mバタフライ決勝
目標タイムを聞いてみた。池江は頭の中でしばし想像することを楽しんだ表情を見せた後、応えてくれた(カッコ内は現在の自己ベスト=すべて日本記録)。
「自由形は50mが24秒1~2(24秒33)、100mが53秒3(53秒68)、バタフライは50mが自己ベスト更新で25秒4(25秒44)くらい、100mは56秒3(56秒86)、です。今回は大幅に狙っていきます!」
それでもあえて、どの部分を見てほしいかと尋ねてみると、「全部、見てほしいです! なるべく。特に1バタは世界のトップに近い泳ぎもできると思うので楽しみにしてほしい。あと、準決勝から自己ベストを出すつもりです」と頼もしい答えが返ってきた。
まずは、大会初日の夜が最初の見どころか。
2年前のリオ五輪では100mバタフライで予選から決勝まですべて日本新で5位入賞。しかし直後の冬期は十分な練習を積めずに、昨夏の世界選手権では悔しい思いをした。その経験を糧にこの冬を充実したものにしてきた。
迎える2018年シーズン、池江は、着実に世界トップスイマーへの階段を上り始めようとしている。
文◎牧野 豊
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